神戸市長田区にある新長田勤労市民センターで、11月3日に開かれた「安倍政権の壊憲を許すな!」神戸憲法集会では、神戸大名誉教授の和田進氏が「アジアにおける憲法第9条」と題し、内容の濃いスピーチを展開した。
衆参のねじれ解消と高い支持率をバックに、安倍政権が「改憲」のアクセルを踏む今だからこそ、「世界平和」の立場で憲法を捉えなおさねばならない、との熱弁は、集まった約300人の市民から力強い拍手を集めた。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
神戸市長田区にある新長田勤労市民センターで、11月3日に開かれた「安倍政権の壊憲を許すな!」神戸憲法集会では、神戸大名誉教授の和田進氏が「アジアにおける憲法第9条」と題し、内容の濃いスピーチを展開した。
衆参のねじれ解消と高い支持率をバックに、安倍政権が「改憲」のアクセルを踏む今だからこそ、「世界平和」の立場で憲法を捉えなおさねばならない、との熱弁は、集まった約300人の市民から力強い拍手を集めた。
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集会は2部構成で、前半は兵庫の若手弁護士有志らが、寸劇「憲法ができるまで」を披露。その後、主催者から「平和主義の憲法研究者として、日本屈指の存在」と紹介され、和田氏が登壇した。
「今の日本で、憲法9条の意義を明らかにするには『アジアにおける憲法9条』という視点が不可欠」。和田氏は冒頭で力を込め、「今日は、通常の講演の3回分ぐらいの話をする」と宣言すると、安倍政権による「解釈改憲、立法改憲の暴走」に言及した。「今、日本では、軍事国家体制づくりが進められている。安倍政権の下で、強靭な機動的防衛力の構築に向けた動きが、急速に展開されているのだ」。
その具体例として和田氏は、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法の審議入りや、特定秘密保護法案の上程、さらには国家安全保障戦略の策定への動きなどを示し、それぞれについて詳しく説明した。その中で、「安倍政権は日本の軍事産業の育成・強化を図り、やがては原発に匹敵する輸出産業にまで高めようと目論んでいると思われる」との発言もあった。
集団的自衛権行使に関する憲法解釈の変更については、「安倍政権はすでに、全面的な発動を可能にする方向を目指している」とし、内部法制局の慣行的人事ルートを無視するかのように、この8月に、集団的自衛権容認派の小松一郎駐仏大使を同局長官に任命したことを指摘。憲法解釈変更の加速を意図するこの奇策について、和田氏は「『その手もあったか!』と言いたくなるやり方だった」と苦笑し、次のように語った。
「安倍政権はこれまで、日米同盟をタテにした『米国が受けた攻撃は、日本への攻撃と見なし、日本は米軍と共に敵国と戦う』という議論を前面に出してきたが、最近は中国の存在を意識しており、『中国がフィリピンまで南下したら、フィリピンを助けるために集団的自衛権を発動する』といった言葉も飛び出している」。
そして、仮に国民が集団的自衛権行使の容認につながる、憲法解釈の変更に同意したとしても、「それだけでは自衛隊を海外に派遣することは無理」と指摘した和田氏は、「集団的自衛権発動のための根拠になる法律が必要になる。今のところ、安倍政権は『国家安全保障基本法』の制定で、それを行おうとしており、来年の通常国会に法案が提出される」と説明。仮に同法案が成立すれば、「日本国憲法9条の内容の、9割超が打ち破られることなる」と警告を発し、「集団的自衛権の容認は『日米防衛協力指針』の改定につながる」ことにも触れた。
「安倍政権による、こうした『解釈改憲、立法改憲の暴走』に加え、日本周辺が非常にキナ臭くなっている」──。日本の現状をこう危惧した和田氏は、「今、日本国憲法の平和主義を、改めてどう捉え直すかが、非常に重要なテーマになっている」と訴えた。
「憲法9条の平和主義には、本来、日本国内の平和に限定したものではなく、世界平和をどう作り上げていくのかという展望があったはず。だが、1950年代~1970年代に行われた日本の平和運動では、9条は安保自衛隊体制の下での軍国主義の復活や、在日米軍基地や自衛隊基地による生活侵害の阻止といった、国内問題のために使われた」。
和田氏は、米ソ冷戦終焉後の1990年代初頭、湾岸危機から湾岸戦争への展開があった時期に、当時の海部内閣で、自民党の若き幹事長であった小沢一郎氏らが「日本だけが平和であれば、それでいいのか」と訴えたことに言及。「それを機に、日本の『一国平和主義』に修正の機運が高まった」とし、「その後の日本の平和運動では、憲法9条に基づく世界平和、ことに、東アジアの平和を作り上げていくことが目標に掲げられるようになった」と指摘した。
しかしながら、「今なお、その目標は達成されていない」とした和田氏は、「憲法9条には、日本からのアジアの安全保障(=天皇という制度は残ったが、侵略戦争は2度と行わないとの対外的なアピール)として登場した歴史的側面がある」と重ねて強調。その上で、日本が実践すべきこととして、1. アジア太平洋戦争での中国侵略への誠実な総括と謝罪、2. 尖閣諸島問題の話し合いによる解決、3. 中長期的な視点での東アジア秩序の構築──などを挙げた。
終盤で和田氏は、安倍政権による「解釈改憲、立法改憲の暴走」をどう阻止するかとの立場で、「政府自民党は、衆参のねじれ解消や高い支持率をバックに意気揚々と政策展開をしているように映るが、実は大きなジレンマを抱えている」とし、安倍政権が推進しようとしている政策と、国民の意思の間には、かなりズレがあることを指摘した。
世論調査の結果からは、「集団的自衛権行使や、特定秘密保護法に反対する国民が多い」というのである。また「安倍首相の、侵略戦争の有無を巡る歴史認識への不満などから、今の自民党政府は、米国からあまり良く思われていない」とも述べ、「安倍政権の高い支持率が、今後も続くとは思えない」との見通しを示した。「重要なのは、共闘の積み重ね。いわば、線から面への展開で『打倒・安倍政権』の運動を盛り上げていけばいい」。
今の若い人には護憲の理想の話じゃなくて、改憲してもいいように「アメリカに使われるだけ」とはっきり伝えないと無意味です。
何故ならほとんどの若い人達は各人の理想論や護憲・改憲のついての法の解釈、議論などには最初から全く興味が無いからです。でも自分達が米国にタダで利用されるのははっきりと「イヤ」だと思っています。日本の血税がアメリカのいいように使われるのもはっきりと「イヤ」だと思っています。
「アメリカに使われるだけ」という本質に斬り込めない限り、若者や多くの人に見向きもされないと思います。