「国民にものを言わせない体制を作ろうとしている。許してはいけない」 〜「秘密保護法ってなに?」清水雅彦氏講演会 2013.10.27

記事公開日:2013.10.27取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「自民党政権は、過去に何度も同様の法案を出そうとしてきた」──。

 2013年10月27日、福島市市民会館で清水雅彦氏(日本体育大学准教授)講演会「とんでもない!こんな危険な法律いらないよ!秘密保護法ってなに?」が行われた。清水氏は「秘密保護法の危険な中身を多くの人が知って、反対の声を上げることで廃案にすることができる」と述べた。

■全編動画
※配信状況により、録画に欠けた部分が多くなっております。何とぞご了承ください。
・1/4(13:36~ 56分間)

・2/4(15:06~ 4分間)

・3/4(15:23~ 3分間)

・4/4(15:42~ 34分間)

  • 講師 清水雅彦氏(日本体育大学准教授・憲法学)
  • 日時 2013年10月27日(日)
  • 場所 福島市市民会館(福島県福島市)
  • 主催 秘密保護法を考える福島の会

危険な法案が具体化するまで反対運動が大きくならない日本

 清水氏は特定秘密保護法に反対する活動に関して、「2012年から、弁護士、ジャーナリスト、法律家などで『Stop! 秘密保全法共同行動』という団体を作って、院内集会や街宣活動をやってきた。しかし、この法律の危険性が広まっていかず、一部の人間だけが反対の声を上げているという状況が続いてきた」と経緯を語った。

 続けて「だが、法案が具体化する中で『これは問題である』と、全国的に盛り上がってきた。率直に言えば、これが日本のいろんな運動の弱点だ。法案が具体化しないと反対の声を上げる人が少ないということだから。しかし、これだけ大きな問題になったからには、今後も多くの場所で反対の声を上げ続ければ、廃案にすることができる」と述べた。

自民党の論理は、人権よりも国家の利益が優先

 自民党の改憲案に触れた清水氏は、「日本国憲法には『公共の福祉』という言葉があるが、これは人権と人権がぶつかった場合の調整原理である。たとえば、表現の自由はあるが、表現する内容がプライバシーの侵害、名誉棄損である場合には、表現の自由が規制される、ということである。これが自民党の改憲案では『公益及び公の秩序』と言葉を変え、意味するところは『国家安全と社会秩序』となる。すなわち、国家の論理で人権を規制するというのが、自民党の考え方だ。国家の利益のためなら、表現の自由も、知る権利も規制する。まさに、秘密保護法を肯定する論理である」と、その危険性を指摘した。

秘密の定義が曖昧。誰もが犯罪者となる可能性

 秘密保護法につながる流れについて、清水氏は「戦前は、軍機保護法その他によって、国民の知る権利はなかったため、それを反省して戦後の憲法ができた。しかし、1970年代になると日米ガイドラインが結ばれ、情報の保全責任が謳われ、日本とアメリカの軍事活動の一体化が進んだ。そんな中、スパイ防止法制定促進国民会議という組織が、1979年に誕生する。実働部隊は統一教会、国際勝共連合などで、『日本にはスパイがたくさんいるから、スパイ防止法が必要だ』という運動を展開していく。そして、1980年代に入ると、いよいよ自民党から動きが出てくる。1985年、国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案(通称:スパイ防止法案)を作成し、議員立法で国会に提出したものの、野党や国会外の反対の声が強く、廃案になっている」と説明した。

 スパイ防止法案の内容に関して、「1条に、スパイ行為等を防止すると書いてあるが、『等』がついていることから当然範囲は広く、スパイ行為だけを取り締まるものではない。実際には、マスコミの取材活動にも適応される構図になっている。そして2条には、国家秘密とは何かという定義があるが、非常に曖昧だ。防衛、外交に関しても表現が抽象的で何でも含まれてしまう」と指摘した。

手を替え、品を替え、甦るスパイ防止法案

 「この法案がすごいのは、4条の秘密を漏らした場合の規定。死刑又は無期懲役なのである。そして、14条に『この法律の運用にあたっては、これを拡張して解釈して国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない』という規定があり、この法律が危険であることを、自ら認めているわけである」。

 こう語った清水氏は、「当時の中曽根総理は、なんとしてもスパイ防止法案を通したいと、批判を受けた部分を少しずつ変えて、1986年に修正案を作った。その中で、国家秘密を防衛秘密と変えたり、4条の罰則規定も最高刑の死刑を外して無期懲役にした。しかし、骨幹部分は変わらなかったので、マスコミを含めて反対の声が上がり、結局、この修正案も国会には出せなかった。その後も、自民党政権は同様の法案を出そうとしたが、反対の声が強くうやむやになった」と振り返った。

秘密保護法案への流れは着実に進んできている

 1990年代から2000年代の動きとして、「80年代は法律ができなかったが、 90年代に入ると日本がアメリカの戦争に協力を表明したり、実際に自衛隊を海外に出すことになった。さらに、アーミテージ報告など、『秘密情報を保護する法律を作れ』というアメリカの要求が出てくる。そして、9.11テロ事件のどさくさに紛れて自衛隊法を改正し、96条の2に防衛秘密の規定を挿入することになる。防衛秘密となる事項は『自衛隊法運用又はこれに関する見積もしくは計画もしくは研究』というように非常に抽象的で、自衛隊のことは何でも入ってしまう」と説明した。

 続けて、「スパイ防止法案は、防衛秘密と外交秘密を国家秘密にしようとしているが、2001年の自衛隊法によって、防衛秘密は秘密指定できるようになった。つまり、この法案改正は、部分的なスパイ防止法の実現と捉えられる」とし、「2007年に入ると『秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本とアメリカの協定』が結ばれた。内容は、秘密軍事情報の同意のない第三者への漏洩禁止、日本に対してアメリカと同等の秘密軍事情報の保護措置をとることを求めるものである。これが、秘密保護法制の領域になる」と述べて、現在の秘密保護法への流れが着実に進んできたことを示した。

政府やアメリカだけでなく、官僚にも都合がよい秘密保護法

 質疑応答で、「秘密保護法は、警察や公安が望んでいることなのか」と問われた清水氏は、「警察組織も一枚岩ではなく、警備公安部門と生活安全部門の勢力争いがある。今回の秘密保護法は、警備公安部門がリストラされないためのアピールのひとつ、とも位置づけられる」と答えた。

 さらに、「防衛省、外務省、警察庁の優秀な官僚たちが、『馬鹿な国民に情報を与えると政治がうまくいかなくなるから、情報を出さないように。自分たちに情報を集約して、自分たちが国家を運営すればうまくいく。そういう体制を作っていこう』とするものでもある」と指摘。

 「エリート官僚が、国民にものを言わせない体制を作ろうとしていることに、国民は怒らなければならない。これは、本来の民主主義国家ではない。許してはいけない。軍事と治安を担当する国家組織が肥大化し、国家運営をする体制が良いのかどうか、考えてほしい」と力説した。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です