「国は、被災者の希望の光である、原発事故子ども・被災者生活支援法を塩漬けにしようとしている」──。
2013年9月9日(月)、京都市にある下京いきいき市民活動センターで、「9・9緊急集会『原発事故子ども・被災者生活支援法』復興庁の基本方針案は法を骨抜きに」が行われた。満田夏花氏は、2012年に制定されてから現在に至るまでの同法を巡る動きと、その問題点について解説した。また、原発事故の後、京都に避難した母親たちが、それぞれの体験から支援のあり方について意見を述べた。
(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)
「国は、被災者の希望の光である、原発事故子ども・被災者生活支援法を塩漬けにしようとしている」──。
2013年9月9日(月)、京都市にある下京いきいき市民活動センターで、「9・9緊急集会『原発事故子ども・被災者生活支援法』復興庁の基本方針案は法を骨抜きに」が行われた。満田夏花氏は、2012年に制定されてから現在に至るまでの同法を巡る動きと、その問題点について解説した。また、原発事故の後、京都に避難した母親たちが、それぞれの体験から支援のあり方について意見を述べた。
■ハイライト
はじめに主催者を代表して、グリーン・アクションのアイリーン・美緒子・スミス氏が挨拶した。かつて、写真家のユージン・スミス氏とともに、水俣病の悲劇を世界に告発したアイリーン氏は、「水俣病の事件では、法律はあったが活用されなかった。そのため、市民の被害は膨大になった。私たちは、この事例から学ぶべきだ。(同じ道を辿るかどうかの)今、分岐路にあるのではないか」と話した。
次に満田夏花氏が、昨年6月に制定された、原発事故子ども・被災者生活支援法の目的を、次のように解説した。「この法律は、支援対象地域を国の避難指示区域よりも広範囲に規定し、放射線による健康被害の未然防止を掲げている。人々の健康に及ぼす危険について、科学的に十分な解明がされていない前提に立ち、被災者一人ひとりが、支援対象地域における居住、他の地域への避難などの選択を、個々人の意志によって行えるようにするための法律である」。その上で、「全会派の国会議員の賛成の下に成立したにもかかわらず、その後、復興庁は1年2ヵ月にわたって、この法律の基本方針を定めようとしなかった」と批判した。
満田氏は「いつまでも支援法が運用されないため、2013年8月22日、19人の避難者や被災者が、国を相手に提訴した。それを端緒に、8月30日、急遽、国から基本方針案が提出された」と、現在までの動きを語った。そして、「国の社会的責任を明記した上で、被災者の権利を尊重し、健康被害の未然防止を掲げていた支援法が、この基本方針案によって骨抜きにされる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
また、27の市民団体による声明を紹介。今回の基本方針案が、被災者の声を反映していないこと、対象地域を福島県内33市町村という非常に狭い地域に限定していること、外部被曝状況を個人線量計の数値のみで把握しようとしていることなどを挙げて、国の姿勢を問題視した。「この基本方針案は、既存の施策の貼り合わせに過ぎない」と指摘する満田氏は、「問題は、被災者に対する具体的な施策がないことである。基本方針案が被災者のニーズに沿っているのかを、厳しくチェックする必要がある」と語った。
続いて、3.11以降、福島や関東から京都に避難している母親たちが自身の想いを語った。齋藤夕香氏は、自主避難者が公的な支援を受ける難しさを、実例を挙げて説明。「自分たちで健康相談会を開くなどの活動をしているが、この状態がいつまで続くのだろう。時間が経てば経つほど、私たちは忘れられていく気がする」と話した。
千葉県柏市から避難している山田由美子氏は、「日本政府は、なぜ、チェルノブイリに学ばないのか」と疑問を投げかけ、「航空機モニタリングだけではなく、空間線量と土壌汚染の両方を実測して、東日本の放射能汚染の実態を明らかにすべき」と主張した。
中村純氏は「東京都内で、水も食糧も西日本から取り寄せて暮らしていたが、子どもの尿からセシウムが出て、京都に移住した。空間線量の数値だけ見るのでは、東日本の子どもたちは切り捨てられてしまう」と懸念を示し、次のように訴えた。「避難している人が何を望んでいるか、耳を傾けてほしい。私たちが自ら立ち上がろうとする意志を、尊重してもらいたい」。
「原発事故以来、緊急避難を含めて4回引っ越しをした」という宇野さえこ氏は、「合理的でも科学的でもない基準によって、支援対象地域を決められると、さらに被災者の分断が進んでしまう」と危惧した。宇野氏は「分断は、それぞれの権利が侵害されているからこそ起こっている。被災者個々人の選択が否定されている。私は、少しでもこの法案を良い方向に動かしていくために、活動していきたい」と語った。