「親の意識の差で、子どもの将来に差があってはいけない」ーー。
保養先の長野県松本市から記者会見にかけつけた原告の女性は、このように語った。
22日、原告19名と弁護団は、「子ども・被災者支援法」の早期策定を求め、東京地裁に訴状を提出。その後、司法記者クラブで開かれた記者会見には、部屋に入りきらないほどの報道陣がつめかけた。
(IWJ・ぎぎまき)
「親の意識の差で、子どもの将来に差があってはいけない」ーー。
保養先の長野県松本市から記者会見にかけつけた原告の女性は、このように語った。
22日、原告19名と弁護団は、「子ども・被災者支援法」の早期策定を求め、東京地裁に訴状を提出。その後、司法記者クラブで開かれた記者会見には、部屋に入りきらないほどの報道陣がつめかけた。
■ハイライト
支援法は昨年6月に、衆参両院全会派一致で可決されたが、支援対象者を決める「基本方針」が定まらず、事実上棚上げされた状態で一年以上が過ぎた。支援法具体化訴訟弁護団の代表、福田健治弁護士は、「政府が、国会で制定された法律を1年以上も実施していないのは異常だ」と批判し、訴訟の概要を説明した。請求の内容は、政府が支援法に基づく基本方針を定めないことが違法であることを確認し、支援を受けられないことによる損害賠償として一人あたり1円を支払うことを求めるものだ。
原告の中には、栃木県北部在住の男性もいた。この男性は、事故から半年後の2011年9月、自宅の放射線量を測定した。すると、子ども部屋で毎時0.49マイクロシーベルト、庭の地表で毎時5マイクロシーベルト、軒下においては、毎時21マイクロシーベルトもあったという。男性は、「これは福島県内と同等程度の数値です。放射能は線で区切ることはできません」と語った。
現在この男性は、県内の低線量エリアにアパートを借り、そこから子どもたちを学校に通わせている。母親は自宅とアパートを行き来する二重生活を強いられており、家族の精神的、経済的な負担は大きい。福島県にとどまらない支援対象地域の設定を訴えた。
一方、原告の女性は「地元郡山市では、『保養』という言葉さえ使われなくなった。大丈夫だと言われ、心配しない親が増えてきた。親の意識の差で、子どもの将来に差があってはいけない。将来、子どもたちが健康に過ごせるよう、支援対象地域の基準は、年間1ミリシーベルト以上は認めて欲しくない」と訴え、涙ぐんだ。
記者から、提訴に至ったきっかけを問われた福田弁護士は、復興庁の元参事官のツィート問題をあげ、「これまで、担当者は集会に来てメモを取っていた。被災者の意見を聞いてくれていたと思っていたが、そうではなかった。基本方針の策定を先送りしていたことが明らかになった。復興庁のそうした姿勢が正しいのか、もはや、裁判の場ではっきりさせる必要があると思い、提訴に踏み切った」と回答。
また、賠償請求金額を「1円」にした理由については、「この訴訟は19名の原告の個人的な利益を求める裁判ではなく、被災者みんなにとっての支援策の実現を訴えるもの。それを象徴する数です」とその意図を語った。