2023年10月7日に「ハマスによる奇襲攻撃」を契機として始まった、イスラエル国防軍による、パレスチナ自治領ガザ地区でのジェノサイドが、9ヶ月目に入ろうとしている。国際社会の強い非難にもかかわらず、イスラエルはジェノサイドをやめていない。
日本でも少しずつ、イスラエルとの防衛協力をしている企業への抗議活動が行われ、パレスチナを支援する声が上がっているが、まだ社会全体の関心が十分に高まっているとは言えない。
そうした日本にあって、パレスチナの文化・芸術を紹介し、パレスチナの人々が置かれている状況や、パレスチナの人々が抱えている問題についての理解を深めようとする活動が行われている。
2024年6月19日(水)から23日(日)まで、横浜市中区のギャラリー清水で、中東・パレスチナ絵画展プロジェクトが主催する、「絵画展『パレスチナの物語り~Story & Tale~』in 横浜」が開催された。
会期中の6月22日(土)には、中東ジャーナリストで元朝日新聞記者の川上泰徳氏による講演会「私が出会ったパレスチナ人」が開催され、先着35名の会場が講演会を聞くために集まった人々で満杯となった。
IWJは、22日の川上泰徳氏による講演会及び、絵画展の主催である中東・パレスチナ絵画展プロジェクトの代表、長沢美抄子氏による絵画展解説を取材した。
- 日時 2024年6月22日(土)14:00~16:00
- 場所 Gallery Shimizu(ギャラリー清水)(神奈川県横浜市)
- 主催 中東・パレスチナ絵画展プロジェクト 詳細
元朝日新聞 中東アフリカ総局長・川上泰徳氏講演「私が出会ったパレスチナ人」
▲川上泰徳氏(IWJ撮影)
川上泰徳氏は1956年、長崎県生まれ。大阪外語大学のアラビア語学科を卒業後、1981年に朝日新聞社に入社した。朝日新聞では、中東アフリカ総局長も務めた経歴がある。2015年1月に朝日新聞を退社した後、フリーランスのジャーナリストとして精力的に活動している。
川上氏の近年の主著は以下の通りである。
『戦争・革命・テロの連鎖;中東危機を読む』(彩流社、2022年)
『シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店、2019年)
「『アラブの春』は中東危機を解決したのか?」『21世紀、大転換期の国際社会 いま何が起こっているのか?』(共著、羽場久美子編、法律文化社、2019年)
『「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想』(集英社、2016年)
『中東の現場を歩く: 激動20年の取材のディテール』(合同出版、2015年)
川上氏は、朝日新聞時代の中東情勢を振り返りつつ、1994年に中東特派員になってからは、エジプトのカイロに拠点をおいて、ガザには毎月のように通い、「ガザにはどれだけ行ったかわからない」くらい行っているが、今のガザの状況については「ほとんど7割ぐらいが破壊されて」おり、非常に心を痛めている、と述べた。
川上氏は、「ガザは地中海に開かれており、大昔から、アレクサンダー大王がエジプトからアジアに向けて通ったり、ナポレオンがエジプトからシリアに行く時に通ったり」してきた歴史的に重要な通路であった地域であり、ガザの人々は大変開放的だ、と説明した。