2024年3月29日、午後2時より、東京都千代田区の連合会館にて、「『あきたこまちR』問題を考える実行委員会」の主催により、「『あきたこまち』をどう守る? 東京集会 ~重イオンビーム放射線育種『あきたこまちR』への2025年全量転換に対して」が開催された。
集会は2部構成で進められ、第1部では、問題提起として、「重イオンビーム放射線育種米が登場した背景」、「重イオンビーム育種照射による品種改良 何が問題か」、「『あきたこまちR』の食品表示問題とは?」、そして「『あきたこまちR』って何?~食の市民自治~」のテーマで識者等が登壇し、講演を行った。
第2部では、登壇した識者たちによる議論、および参加者との質疑・討論が行われ、その後、行動提起として「東京集会アピール」が読み上げられた。
「重イオンビーム放射線育種米が登場した背景」として、OKシードプロジェクト(※)事務局長の印鑰智哉氏は次のように説明した。
※「OKシードプロジェクト」は、ゲノム編集された種苗・食品に対する懸念から市民が立ち上げた共同プロジェクト。農家、消費者など、さまざまな立場から、遺伝子操作されていない食を守るために活動している。また、ゲノム編集されていない作物を判別可能とする「OKシードマーク」の普及を通じて、日本の食品の安全に貢献することをめざしている。
「この『重イオンビーム育種』、これがどういう経緯で出てきたのかってことなんですけども、これはですね。実はカドミウム汚染に関わっているんですね。カドミウム汚染。カドミウムって何なんだ。
これは自然の元素。自然の中にあるんだけども、体内に入ると腎臓を痛めてしまって、『イタイイタイ病』の原因になると。実は、日本は残念なことに世界有数のカドミウム汚染国なんですよね。
なんで汚染国になってしまったのか。端的に言えば、無茶な鉱山開発をしたからなんですよね。無茶な鉱山開発、いつやったのか。これは、戦争時に、戦争の前後ですね。そこで非常に行われました。(中略)
1970年、お米のカドミウム汚染というものが大問題になっているときに、政府はその『基準を超えたお米は全部買い取ります」っていうふうに言ったんですね。でも、これ、年々年々、足を引き(発言まま)始めていて、2011年にはもう買い取りやめてしまったんですね。
それ以降どうなっているかというと、地方自治体が負担することになっています。もちろん、地方自治体のその費用っていうものは、政府からもね、政府地方交付金として出てるとは言えるんですけども、これは、負担が地方自治体に行ってしまっている。
この日本の、政府のね、この対応に関しては、大きな問題があった。今の福島原発の事故、これにも、まあ映されるって言うかな、非常に似た対応がこのカドミウム問題でもなされているっていうことを気をつけなきゃいけないと思うんですよね。
この『カドミウムと土とコメ』という、いい本がありますけども、これの中で、(著者の)浅見さんていうのは『政府のやり方は虚構の上に成り立っていると言っても過言ではあるまい』というふうに言っています。(中略)
- カドミウムと土とコメ(浅見輝男著/アグネ技術センター)
本当に、隠蔽を続けてきた。このようなところで、実は、この『あきたこまちR』というのが出てくるんですね。『あきたこまちR』がどんなおコメなのかについては、詳しくは、川田(昌東)先生から今日、説明がありますので、それはまず省きますが、『重イオンビーム』という放射線を使って、遺伝子を壊して、カドミウムを吸えなくしたお米ということですね。
(中略)
『あきたこまちR』があれば、あるいは、『コシヒカリ環1号』があれば、このカドミウム問題っていうのは解決するんでしょうか。これ、何でこの問題が起きるのっていうのは、まず汚染源があるわけですよね。
汚染源から農地が汚染される。農地が汚染されると、農作物が汚染されるわけですよね。だから、これは汚染源をまず止める。そして農地の汚染も止める。こうしなければいけない。汚染された農地はどうすればいいかっていうと、このですね、隔離する。植物によって、いっぱい吸ってもらう。そういうものがあるんですよね。
そういう形で、どんどん隔離していく。そうやって農地をきれいにしていく必要があるわけです。それを変えていかなきゃいけないんですけども、残念ながらこちらの取り組みっていうものは今もう止まっちゃった感じなんですよね。
(中略)
今やらなきゃならないのは、米だけカドミウムが引ければいいのかってことなんです。実は、日本の、この1970年にできた素晴らしい法律ではあるんだけども、これもう古いんですよ。
アップデートしなきゃいけない。『農用地土壌汚染防止法』。
これがあるんですけども、これが対象にするのは、カドミウム、ヒ素、それから銅でしかないんです。PFASも入ってないんですよ。これじゃ対応できない。しかも、その時、お米しか問題にしなかったから、お米しか対象になってないんです。
お米以外のものっていうのは、何の対象にもなってないんですよね。こうじゃなくて、まず汚染させない。下水汚泥肥料なんかを使って、汚染されるさせないようにしていかなきゃいけない。そういう総合的なものを作っていかなければいけないと思います。(後略)」。
この「あきたこまちR」の問題は、放射線による遺伝子操作での品種改良という技術そのもの、食品表示、そして、市民自治など、極めて多面的な問題を含んでいる。
そして、農水省は、この問題含みの「あきたこまちR」を、2025年までに3割の都道府県(14県に相当)へ導入することを目標にかかげて、全国で進めようとしている。
集会の最後には、行動提起として「東京集会アピール」が読み上げられ、満場の拍手により採択された。
詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。