8月15日、16日、17日と3連続インタビューとなった3日目、「統一教会との出会い、合同結婚式、23年間の信徒生活から『脱会』まで『なぜ人々が統一教会に騙されるか』その理由を考える 岩上安身による 元・統一教会信者、『となりのカルト』著者 榊あまね氏インタビュー 第3弾」を、IWJ事務所から生配信した。
インタビュー冒頭、榊氏は、現役2世信者が最近、YouTubeで統一教会を擁護する動画を出し始めたと報告した。榊氏が紹介したYouTubeアカウントは「ウリ2世」という。まだ、3週間前にできたばかりのアカウントのようである。
サイトにアップされた動画「(1)二世が教会に通う本当の理由。ぶっちゃけます」を開いてみると、若い男性信者が2名出ており、今は統一教会に関する間違った情報が出ているので、正しい情報を伝えたい、「なぜ自分たちが統一教会に通い続けるのか、自分たちの意思で選択したことだから」などと主張している。
- (1)二世が教会に通う本当の理由。ぶっちゃけます(ウリ二世、2022年7月24日)
8月13日にアップされた動画「現統一教会二世が献金の実態を全て話します」を開くと、若い男性信者が一人で、献金の実態について語っている。
「10代20代は礼拝の時に100円、200円献金するだけ。家には壺・本がたくさんあり、親は高額献金した。献金で家は貧乏でも、親が愛してくれるから、めちゃくちゃ幸せ」、「自分のオカンは世界平和のためにお金を使っていると思い、親をリスペクトしている」、「献金は無理強い、洗脳ではなく、信者が自分の意思で行っている」などと述べている。
- 現統一教会二世が献金の実態を全て話します(ウリ二世、2022年8月13日)
榊氏は、こうした教団擁護とも言える発信が、自主的に行われているのか、強制されたり指示を受けたりして行われているのかわからないけれども、とにかく第一印象は「痛々しい」印象だったと述べた。
岩上「それを自分の意志の選択だというふうに今、(ウリ2世の出演者は)言ってらっしゃるんですが、ちょっと俯瞰するとね、痛々しいんですけど。(統一教会について)間違った情報が出ているからといって、(現役2世信者である)本人が間違った情報を撒き散らすというのは本当に、第三者にとっては困ったことです。どうですか、これ、御覧になって」
榊氏「本当に、岩上さんのおっしゃる通り、痛々しいな、というのが第一印象でした。
彼らの年代では、何十年も統一教会を見続けてきた人たちがリアリティをもって感じていることを、肌感覚で知らない世代なので。彼らも(統一教会の)中にいながら、本当に一部分しか見えていない。その一部分だけとらえて、『統一教会は全然悪いところではない』と言っているのが。
本当に、こういう彼らの発信が、統一協会の問題を全体的に俯瞰してみることを、妨げてしまうような、そういう発信になってしまうのではないかと」。
岩上は、若い2世信者がまったく知らないであろう、統一教会の最暗部をレポートした、IWJ号外(17日)を紹介した。統一教会の信者やその家族、あるいは統一教会に支援されている自民党議員や支援者らにも、よく読んでもらいたい。詳細は、本日の日刊IWJガイド掲載の記事紹介、または、IWJサイトでお読みいただきたい。
統一教会の暗部を知らない若い世代が発信するメッセージが、2次被害を招くことはないのだろうか。
榊氏「この二世の方々が自主的にやってらっしゃるのか、言われてやっているのか分かりませんけれども、本当に統一教会の歴史の一部分しか肌で感じてこなかった彼らが言えること、知っていることは、本当にわずかです。
そんな彼らを、矢面に立たせて、自分たちは奥に引っ込んで悪事を繰り返している、幹部、中枢の人間たちの本当に卑怯なやり口に、私はものすごく怒りを覚えました。
『若い人たち、まだ何も知らない人たちに何をやらせてるんだ』って。恥を知らない人達なんだな、と。恥を知らない人たちにいいように使われるのは、もう本当にやめてほしい。その思いでいっぱいですね」。
続いて、前回の、第2回インタビューでおうかがいした、統一教会の合同結婚式と韓国での新婚生活について振り返った。統一教会の教義では、恋愛は禁止、「不倫」は絶対悪とされている。文鮮明氏のマッチングによる結婚(祝福)が「人類唯一の救い」であり、結ばれた男女が真の家庭を築くということになっているからだ。
しかし、その合同結婚式は男尊女卑的で違和感の残るものであり、実際の結婚生活も期待していたものとはかけ離れた苦しい生活であったと、榊氏は振り返った。
第3回となるインタビューでは、長女を出産したことを契機に、日本に帰国したところからお話をうかがった。榊氏は帰国したからといって、すぐに統一教会を離れることはできなかったという。
すでに韓国にいた時から、うつ病になりかけており、長男の出産費用を稼ぐために日本に一時帰国した時に、統一教会の在家信者の知人から紹介された、カウンセラーに相談を始めたそうである。振り返ってみると、すでにそのころから、少しずつ統一教会のあり方に疑問を感じはじめていたと、榊氏は述べた。
榊氏「教団の中ではこれが正しいという風に言われていることが、私の腹の底では、『いやそれは違うんじゃないかな』というものが色々あったんですけれども、周りはみんな信じこんでますから、本音を言うことができない。
教団に入る前も、自分の本音を言い出すことができない生活をしてたんですけれども、信仰が同じ人たちの中でだったら、本音を出しながら生きていけるのかと思ったら、ここでもまた、本音を隠さなければいけないという状態が続いていました。
その本音の部分をカウンセラーさんにお話しして、世界平和といいながら、世界平和を実現するのであれば、そこに携わる一人一人が本当に幸せであるはずなのに、私の周りにはどっちを見ても不幸な人しかいないんです」
岩上「一番言いたいと思って、言いたくても言えなかったことが、それだったんですね」
榊氏「それですね。それに対して、私にそう見えているということは、実際そうなんだろう、ということを肯定していただけたので、『やっぱりそう思っていいんだ』という自信になりました。受け入れてくれる人がいて、肯定してくれる人がいて」
岩上「『あなたは間違ってないですよ』って、受け止めてくれるってことが大事なんですね」
榊氏「教祖を、絶対唯一の存在として崇めているんですけれども、こういうところが違うんじゃないかっていう部分がいろいろあったんですけれども。
今思い出すのは、文鮮明の次男が17歳で他界したんですけれども、交通事故で。文鮮明はその次男に一番目をかけていたんですね」。
文鮮明氏の長男である孝進(ヒョージン)氏は、父である文鮮明氏に対して反抗的であり、鮮明氏は次男である興進(フンジン)氏に、後継者として目をかけていたという。
孝進氏は、元妻である洪蘭淑(ホン・ナンスク)氏の告白手記によって、重度のアルコール依存症で、覚醒剤常用者で、妻にしばしば暴力を振るっていたという実態が暴かれている。榊氏は、孝進氏の死因は曖昧なままだが、飛行機で移動中に心不全を起こしたとされている、と回想した。
孝進氏は、両親に対して非常に反抗的で、「お前らなんか親じゃない」と悪態をついて部屋を飛び出したことがあり、その時、文鮮明氏は「まだ、興進がいる」と述べたと言います。
「真のご家庭」を実現しているはずの文鮮明氏が、長男から反抗されるという矛盾について、信者たちは「(反抗的な長男に苦しめられて)お父様(鮮明氏)はかわいそう」という見方をしていた、と榊氏は述べた。教会内でも、「真のご家庭なのに」といった疑問を持たせるのではなく、信者たちが至らないが故に、文鮮明氏の一家が苦しみを背負っている、という「解釈」にされてしまったそうである。
榊氏は、カウンセラーのおかげでようやく統一教会のおかしな部分について話せるようになったけれども、「一方で、教会から出たら私はどこに行けばいいんだろう」という不安を抱えていたと述べた。
榊氏「2世、親が合同結婚式に参加して生まれた2世たちは生まれた時から、まわりの環境が統一教会ですから、そこしか知らず、そこが基盤になって育っているので、そこから出たら、どういう生き方をしたらいいのかまったくわからないと思うんですね。
私自身も統一教会に入る前から、この世界に自分がいてもいいという気がしない、という精神状態でしたから、本当にゼロから自分の生き方、自分の居場所を構築しなきゃいけない。当時は、本当に、途方もない話のように感じてましたね」。
岩上は、榊氏が教会を離れることができた理由と、2世信者の問題について尋ねた。
岩上「カウンセラーにも頼って、本音を言って、肯定してもらって、『やっぱりおかしいんだな』って。そうなった時に、それでも頑張れたのは、ひとつはお子さんたちがいたからですね?
さっきの少年たちのような親ではなくて。どうしても、『子どものために自分は真人間にならなきゃ』と。
誰か、本当に愛してくれる人とか、本当に自分が守らなくてはいけない相手とか、本当に自分が愛してる相手とかがあれば、苦しい中でも踏ん張って、自分がまともな人間として世の中に歩み出さないといけないんだという決意を支え持っていくということができるかもしれないし。
榊さんは、たぶんそうだったんじゃないかなと」
榊氏「そうですね」
岩上「先程の2世信者の若者たち、どうなってしまうんでしょうか。どういうふうに心配されていますか? どうしたらいいと思いますか?」
榊氏「私が考えているのが、統一教会になり、さまざまなカルト宗教にいて、『出たらどこ行ったらいいんだろう』という、過去の私のような思いを抱いてる方々もたくさんいらっしゃると思うので、安心して帰ってこれる社会を作っていかなきゃいけないなって思ってるんですね。
カルト宗教しかり、社会の中にもメディアの洗脳なんて言われますけれども。学校教育なんかも、一種の洗脳だと思いますし、いろんな洗脳の手法、通底している手法は、社会の中のいろんなところにあって。
だけど、そこに引っかからずに、引っかかっても自分で洗脳を解いて、自分の意思で人生を構築していく、生み出していくっていうことをできる大人が増えていくことが一番大事なんじゃないかって思ってます」。
この後インタビューでは、米本和弘氏の「火の粉ブログ」との出会い、2012年の文鮮明氏の死去と文一家のスキャンダルなどを経て、ついに統一教会をやめる決心をするまでのお話をうかがった。詳しくはぜひ、全編動画で御覧いただきたい。
第1回、第2回インタビューは以下である。