2022年5月9日、午後6時30分より、東京都千代田区の衆議院第二議員会館にて、安保法政の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(以下、市民連合)の主催により、シンポジウム「立憲主義の理念を共有する野党の勝利で、いのちと暮らしを守る政治の実現を」が開催された。
登壇したのは、山口二郎・法政大学教授、立憲民主党・西村智奈美幹事長、日本共産党・小池晃書記局長、社民党・福島瑞穂党首、参院会派「沖縄の風」・伊波洋一参院議員、参院会派「碧水会」・嘉田由紀子参院議員、社会活動家の雨宮処凛氏の7名。
司会を務めた山口氏は、シンポジウムの目的を次のように説明した。
「参議院選挙に向け、特に一人区において、野党が極力候補者を一本化して戦っていくことが、野党全体の勢力の拡大にとって、絶対に必要なことだという認識で、6年前、3年前、候補者一本化の、いわば、仲立ちみたいなことを、私ども、市民連合がやって参りました。
今回も、そういう趣旨で、野党の皆さんに基本的な政策理念を共有して、共に、努力しようという呼びかけをするために、こういうシンポジウムを開催した次第です」。
市民連合が要求する政策は、(1)平和国家路線の堅持と発展、(2)暮らしと命を守るための政策の拡充、(3)気候変動対策とエネルギー転換の推進、(4)平等と人権保障の徹底、の4項目である。
山口氏は、「今回はいささかシンプルな形で共通政策を掲げて、これからの参議院選挙を、野党の側から『争点』を設定し、今までの、安倍、菅、そして岸田の歴代政権が進めてきた誤った政策ときっちり対決の構図を打ち出していくという形の選挙戦を作っていきたいと考えている」と述べた。
参加した野党各党の代表者は、政治の現状、各党の課題、市民連合からの要望の受けとめについて、それぞれの現状認識を語った。また、雨宮氏は、今、日本が抱えている様々な矛盾や問題点について、現状報告を行った。
立憲民主党の西村幹事長は、「この参議院選挙を通して、まずはこの政治の流れを変えていかなければならないと改めて決意している。衆議院にいますと、与党の議席がとても多く、質問時間もままならず、なかなか数の力では対峙できない状況です」と訴えた。
その上で西村幹事長は、参院選の目標について、次のように語った。
「参院選においては、野党による改選過半数を何としても獲得しなければなりません。そして、それを通して、今の岸田政権に対して、国民が、国民生活の中で何を考え、何を感じ、政治に何を期待しているのか、それをしっかりと伝え、訴えていきます。
そういう緊張感のある、国会の与野党の構図、これを作っていかなければならないと思っています。
(中略)昨年までの補正(予算)をみても、保育、介護などの職場で働く皆さんの『賃上げ』、これは、政府が関わることのできる分野ですので、大いに私は、賃上げの第一歩として、政府が『新しい資本主義』の姿勢を示さなければいけないと思っていたけれど、規模が大変小さかった。
つまり、『看板倒れ』であったということ。これはやはり、岸田政権の限界を見たなというふうに私は思います」。
また、西村幹事長は、岸田政権が「ウクライナの危機に乗じるような形で、色々なことをやろうとしている。国民に対する説明責任が余りにも軽視されている」と述べ、「参議院選挙のあとは、こわいことになっちゃうんじゃないかと、というふうに思って、心配です。本当に心配です」と懸念を表明した。
一方、参院選1人区での候補者一本化調整について、西村幹事長は、次のように語った。
「改憲はやらせてはいけないと、強く思っています。そのためにも、この参議院選挙はすごく大事だということです。
32ある1人区が、選挙の帰趨を握っていると思います。与党が一本化していますから、野党も出来る限り、1対1の構図を作る、それをできるだけ最大化していくということを目的にし、なおかつ、どれだけ1対1の構図で、今の政治を変えようという大きなうねりを、みなさんと一緒に作っていけるかどうか、ここが問われると思っています。
それぞれの地域事情はありますけど、最大限、全力をあげて取り組んでいきたい」。
しかし参院選での選挙協力にあたり、2021年の衆院選での閣外協力の合意の維持を求める共産党に対して、立憲民主党は、3月の協議入りから、参院選では合意は不要との立場を譲っていない。このため、共産党側が一本化に合意する選挙区は限られるとも報じられている。
共産党の小池書記局長は、西村幹事長が触れた憲法問題について、「改憲勢力3分の2を許さないということが非常に大事だ」と述べた上で、野党共闘の進め方については、立憲民主党を牽制するかのように、次のように語った。
「総選挙の教訓も踏まえて言うと、共闘の大義と魅力はどこにあるのか。やはり参加する野党が、力をあわせて、声をあわせて、肩を並べて訴えてこそ、国民の心に届くと思う。それが総選挙での、我々の闘いの大きな教訓だったのではないか。
政策合意は最低限の土台として進めていきたいが、共闘の進め方としては、参加する政党が、対等・平等、相互尊重と、この立場はきちんと持っていくということが、本当の意味で、自民党を打ち破り、補完勢力にも勝っていく力のある共闘になっていくと、肝に銘じてがんばりたい」。
シンポジウムの詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。