中国での2021年の新車販売台数が、4年ぶりに増加に転じ、2600万台規模になる見通しが報じられた。米国の約1.7倍である。しかもEVを中心に新エネルギー車が支持を広げている。
現在、世界の自動車メーカーの、開発と販売の「主戦場」は中国である。
日本のホンダは現在、中国で新型「アコード」が爆売れしているが、その中国を含む先進国でのEV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)販売比率を、2040年に100%にすると宣言した。さらに、中国では2030年から新車をすべて電動車にするという。あと8年後である。それまでに全メーカーが電動車の開発を終わらし、この中国を「主戦場」とするレースに参加できなくてはならない。そうでなくては、未来の世界から取り残されてしまう。
日本では、電動車のための売電スタンドがまだ未だ圧倒的に足りない。このインフラ整備は、政府がやるべきことだ。
ホンダは2021年12月13日のF1最終戦で30年ぶりに優勝したが、その前日、日経新聞にF1からの撤退広告を掲載していた。それは「エンジンのホンダ」自身による、F1とエンジンへの決別を意味していた。
将来、ガソリン車やハイブリッド車を販売禁止すると表明している国は現在35か国に上っている。世界の潮流はEVにある。
その中で、ひときわ目につくのが、トヨタの頑なな姿勢だ。
トヨタはEV化に慎重な態度を崩さない。トヨタの主張「EVシフト=CO2削減ではない、製造過程で多大なCO2が輩出される」は、「正論」ではある。しかし現実の世界では「正論」ばかりが通るわけではない。すでにEVの充電スタンドがインフラとして世界各国で国費を投じて作られているのが現状であり、水素の優位性を説いたところで、世界のどの国のユーザーも買わないだろう。エネルギーを充填するインフラがそろってないからである。エンジン(内燃機関)の発明は第1次産業革命に属するが、第4次産業革命ではモーターに変わり、AIとともに自動運転に結びつく。インフラを制したものがデファクト・スタンダードを制する。
トヨタの主張である「EVシフトで雇用が失われる」との反論は理屈にもならない。国内は少子化で需要減、海外はEV以外禁止なのだから、ガソリンエンジンを作り続けては売れない車が山積みとなって、会社も傾き、従業員も、大量解雇を免れない。
トヨタがいくら意地を張っても、水素車もハイブリッドもEV車には対抗できず、結局はEVの勢いの圧勝で終わるだろう。
EVシフトに向け、日本メーカーの「成功体験の記憶」は横に置く必要がある。それはあくまで、「第2次産業革命」の時代、特にその後において一時期、日本メーカーがイニシャティブを取ったというだけのことに過ぎない。
典型的な事例は、「ウォークマン」である。カセットテープ再生機とイアホンを組み合わせたこの発明は、一世を風靡した。しかし第3次産業革命の特徴であるインターネットの登場と普及、ipodの登場と、続くiphoneによって「ウォークマン」は「前正規の遺物」に追いやられてしまった。
テスラのイーロン・マスク氏が言う、「脱炭素」持続可能な社会実現の手段として、日本社会もEVに舵を切るとして、日本が、官もメーカーも、ユーザーも向き合うべき課題が少なくない。