ずさんな土壌汚染対策、欠陥だらけの施設設計、巨大なコスト――。
もはや移転中止も視野に入れざるを得なくなってきた、東京・築地市場の豊洲移転計画。しかしこれまでに、豊洲市場にはすでに6000億円もの都民の血税がつぎこまれてきたとされる。前に進むにしても、後ろに下がるにしても、小池都知事は苦しい決断を迫られるだろう。同時に、これほどまでにずさんなプロジェクトを推進してきた責任者は誰か、明らかにし、その責任を取らせなければならない。
東京ガスの工場があった汚染地に、生鮮食品の市場を持ってくるとしたそもそもの決断が、この問題をここまで大きく複雑なものにしてしまった最大の原因であることは間違いない。その「決断」を下した人物こそ、石原慎太郎元都知事だ。
▲石原慎太郎元都知事(写真は2012年9月7日の定例記者会見より。取材・IWJ)
昨年10月に都からの文書によるヒアリング調査に対し、石原元都知事は当時のことを「記憶にない」「担当職員の判断結果を信頼した」などと、ひたすらあいまいに答え、自らの責任を徹底的に回避し、実質的な交渉にあたってきた自らの側近(特別秘書)、のちに副知事へ抜擢した浜渦武生(はまうず たけお)氏に責任を押しつけた。
しかしその後、2年間の地下水モニタリングの最終結果から環境基準をはるかに上回る汚染が検出され、もはや石原元都知事が責任を回避し続けることは許されない状況になった。都議会の特別委員会はついに、石原元都知事と浜渦元副知事らを参考人招致すると決定した。
さらに、石原元都知事に責任を求める動きが、2012年から続いている。豊洲新市場用地取得に関する公金返還請求訴訟だ。都民40人が原告となり、東京都は豊洲の用地取得に要した約578億円を、石原元都知事に請求すべきだと求めている。
2017年2月9日、東京地裁で住民訴訟の口頭弁論が開かれた。東京都は従来、「石原氏に損害賠償責任はない」との姿勢を貫いてきたものの、1月20日の記者会見で小池都知事は、「石原氏に責任があるのか、明確にする」と明言した。
小池都知事の発言を受けたあとの口頭弁論では、裁判の場で東京都が従来の方針を変更すると明言するのかどうかに注目が集まった。
▲(左から)梓澤和幸弁護士、水谷和子氏、大城聡弁護士
なお、岩上安身は2月10日、住民訴訟の原告を務める一級建築士の水谷和子氏と、『築地移転の闇を開く』(大月書店)の共著者である、東京都中央卸売市場労働組合委員長の中澤誠氏、そして都知事選で「築地市場移転問題」を争点に押し上げた功労者の宇都宮弁護士にインタビューを行う。ぜひ、ご視聴いただきたい。
★岩上安身による宇都宮健弁護士、中澤誠氏(築地市場仲卸業者、東京中央市場労働組合執行委員長)、水谷和子氏(一級建築士)インタビュー
※【増補改訂版・岩上安身サイン入り】前夜 日本国憲法と自民党改憲案を読み解く [日時] 2017年2月10日(金)15:30~
[YouTube Live] https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?view=2&flow=grid
- 日時 2017年2月9日(木)16:00~
- 場所 司法記者クラブ(東京都千代田区)
「石原元都知事に責任があるとするかどうか」都が方針変更をするかどうかは4月27日まで明らかにされない!?
口頭弁論後に行われた記者会見で、訴訟を担う築地市場移転問題弁護団の大城聡弁護士は、東京都が方針変更について口頭弁論の場では明言せず、これから検討を進め4月27日に結果を説明するとしたことを明らかにした。
▲大城聡弁護士
都が方針変更を明言しなかった点について、大城弁護士は、「正直、意外だった。小池知事の会見(1月20日)から2週間以上も経っているからには、今回の口頭弁論で東京都が方針変更を明言するのではないかと考えていた」と明かした。
なお、この住民訴訟で原告側は、「汚染のある土地の価格は、汚染のない土地の価格から土壌汚染対策費用を差し引いたものであり、汚染を考慮しない価格で購入したことは知事の裁量を超えて違法である」として、土地購入を決断した石原元都知事の損害賠償責任を主張している。
一方で、都側は、平成14年の合意等の法的拘束力によって、土壌汚染のない土地の価額で購入する契約上の義務を負っていたと主張している。これに対し原告側は、平成14年の合意等には、「汚染のない土地の価額で購入する」などの文言が一切記載されていないことなどから、都の主張は不合理であると主張している。
「東京都と東京ガスは汚染を残してよいという密約を交わした!」――都のインチキで6000億円の都民の血税が無駄に!
原告を務める一級建築士の水谷和子氏は、「都はこれまで、汚染地の除染をしていないのにしたかのような演出をしてきた。東京都と東京ガスが汚染を残してよいという密約を交わしてきた事実は、すでに報道されている」と述べ、次のように続けた。
「残念なのは、(豊洲移転計画を)色んな機会に止めることはできたはずなのに、6000億円もの支出をしてしまったこと。ただ、このまま移転になればさらに被害者は増えるだろう。これは無理な計画。ぜひ止めてほしい。これほどの出費をしてしまった失敗に学んで、公共事業のあり方を考え直してほしい」
▲水谷和子氏
水谷氏はこれまで、都の土壌汚染対策のインチキを暴き続けてきた。岩上安身やIWJがこれまでたびたび取材をしてきているので、ぜひ、以下の記事もあわせてご一読いただきたい。
また、土壌汚染については、岩上安身が日本環境学会の坂巻幸雄氏に詳しくお聞きしている。ぜひ、下記もご視聴いただきたい。
岩上安身は、築地市場移転問題がマスコミで盛んに報道されるよりはるか前の2010年より、水谷氏や坂巻氏、他にも多くの専門家や市場関係者の方々にインタビューをし、現在問題にされている土壌汚染や施設設計の問題などを明らかにしてきた。
これらのインタビューは、DVD「ドキュメント築地市場移転」の動画を単体販売している。ぜひ、ご購入のうえ、ご視聴いただきたい。
「石原元都知事は、偽証罪の処罰の責任をかけて、真実を明らかにすべきである!」~梓澤和幸弁護士が訴え!
この住民訴訟は、6000億円もの「無駄」な出費を重ねる原因を作った、石原元都知事の法的責任の存否を争う、重要な裁判だ。原告側は、石原元都知事への証人尋問は必須だと主張している。
訴訟の弁護団を務める梓澤和幸弁護士は、記者会見で語気を強めて次のように述べた。
「『石原元都知事に裁判所に出てきてもらう』と都に言ってほしい。石原元都知事は、偽証罪の処罰の責任をかけて、真実を明らかにすべきである!」
▲梓澤和幸弁護士
石原元都知事が本当に真実を明らかにして都民への責任を示す気概を持っているならば、住民訴訟の証人尋問にも堂々と出てくるはずだ。
なお、梓澤弁護士には、岩上安身が自民党改憲草案の問題点を暴くべく、澤藤統一郎弁護士とともに数度にわたって鼎談を行った。ぜひ、こちらの鼎談の様子もあわせてご視聴いただきたい。
※鼎談の第1回~第12回は、以下のページからお読みいただける。
http://iwj.co.jp/wj/open/%E5%89%8D%E5%A4%9C
また、鼎談は『前夜 増補改訂版』(現代書館、2015)に収められている。「IWJ書店」からご購入いただけるので、ぜひ、お手にとってお読みいただきたい。
※【増補改訂版・岩上安身サイン入り】前夜 日本国憲法と自民党改憲案を読み解く
https://iwj.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=171
なお、「IWJ書店」のサイン入り本は、IWJ会員限定でご利用いただける。この機会にぜひ、IWJの会員にご登録いただきたい。
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勇気を持って完全撤退と云う英断をすれば小池都知事は日本の歴史に名前が残るだろう。このまま進めば玉砕した全滅作戦の二の舞になる。人気先行した石原都元知事は、晩節に汚点を残さず過ちや管理不行き届きは清く認め、男を上げていただきたい。石原都元知事は三宅島の噴火に際する対応では島民の評価が高いので、市場問題での汚点は素直に過ちを認めていただきたい。