豊洲への移転ストップの「決定打」ともいえるデータが明らかにされた。
東京・築地市場の移転先とされる豊洲市場の土壌汚染について、2017年1月14日、地下水モニタリング調査の最終結果が都の「専門家会議」によって発表された。それによると、調査を行った201地点のうち、環境基準の79倍もの有害物質のベンゼンが72地点で検出されたほか、ヒ素が基準値の3.8倍、検出されてはいけないシアン化合物(青酸カリ)が30地点で検出された。
豊洲市場の地下水モニタリングは、2014年11月18日から2年間の予定で開始された。小池知事は2016年11月7日に予定されていた築地市場の移転について、「食の安全ということについては、生活者の目線、そして、まさしく都民ファーストの感覚ということを大切にしなければいけない」として、地下水モニタリングの最終結果が出る前の移転を延期すると、昨年8月31日に発表していた。
第1回から第3回までの専門家会議の様子は、以下の記事に掲載しているので、ご視聴いただきたい。
- 検討事項 空気・水質等の調査・観測結果など
- 委員 平田健正氏(座長、放送大学和歌山学習センター所長)/駒井武氏(東北大学大学院環境科学研究科教授)/内山巖雄氏(京都大学名誉教授)/オブザーバー 小島敏郎氏(東京都専門委員、市場問題プロジェクトチーム座長)/事務局 中島誠氏(国際航業株式会社フェロー)
- タイトル 東京都 第4回 豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議
- 日時 2017年1月14日(土)12:30〜
- 場所 築地市場講堂(東京都中央区)
- 告知 東京都中央卸売市場サイト
「一回汚染されたら土壌は絶対にきれいにならない」「汚染が残置されているという証拠」――数値の急激な上昇に首を傾げる座長に傍聴していた専門家たちから次々と厳しい指摘
環境省の定める土壌環境基準におけるベンゼンの基準は、1Lあたり0.01mg以下とされる。昨年9月に発表された前回調査でも、5街区の1地点において、0.014mg(基準値の1.4倍)のベンゼンが検出されているが、今回は環境基準の79倍もの数値が検出された。
「専門家会議」の平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は、「普通は少しずつ減っていくはずだが、なぜ急激に濃度が上がったのか、濃度の高いところ、低いところを選んで検証をしていく。少しお時間をいただきたい。対策は今後明確にしていく」と述べ、今回、有害物質の濃度が基準値を大幅に上回ったことに驚きを示した。
▲平田健正座長
会議を傍聴していた、日本環境学会元会長の畑明郎氏は、「もともと前の専門家会議が2本柱として提案したのが、盛り土と、地下水を2m以下、平常時は1.8m以下に保つということ。この2つともが破られた。地下水はまだまだ2m以下にはなっていない。それに対する専門家会議の評価をやるべきですよ。東京都への批判をすべきです」と厳しく批判した。
「一回汚染されたら土壌は絶対にきれいになりません。汚染は残っているということです。自然汚染など他の理由を追及するのではなく、土壌汚染を追及してほしい」
▲畑明郎氏
同じく傍聴者として参加していた一級建築士の水谷和子氏は、「2年間モニタリングというのは、土壌汚染対策法上、汚染の除去の完了の確認のためにあるわけです。汚染が環境基準を超えて出たということは、汚染が残置されているという証拠なわけですね」と指摘し、「今の段階でこの大量に出た段階で、操業由来の汚染が大量にあるということが分かったわけですから、除去すると宣言していただきたい」と釘を刺した。
さらに水谷氏は、「これだけの変化があったというのは、環境省から見れば、立入検査の状況ではないか。認可取り消しになるかもしれないくらいの状況だと思います」と述べた。
▲水谷和子氏
畑氏には、「盛り土」のされていなかった地下空間で汚染が検出された際に、岩上安身やIWJスタッフが取材をしている。ぜひ、こちらもあわせてご一読いただきたい。
「合理的な説明ができないなら不正があったと考えざるを得ない」――数値の急激な上昇の原因は東京都による「データ改ざん」!?
会議終了後、IWJは水谷氏と、東京中央市場労働組合執行委員長の中澤誠氏に取材を行った。
「データ改ざんがあったということですよ」
中澤氏は、今回急に数値が上がった原因について、きっぱりと断言し、東京都の不正の可能性を指摘した。
どうしても、豊洲に何か造りたいんだったら、「カジノ」でも造れば・・・?