一部の大企業や富裕層が課税を逃れ、その穴埋めを市民が負うという不公正な税制が問題となっている。2016年5月に公開されたパナマ文書は、そうした不公正な租税回避の実態の、ほんの氷山の一角であるにせよ、世界の元首や大企業などがタックス・ヘイブンを利用し、税逃れを行っている実態が暴露された。
この問題について、最先端の情報を収集し活動している国際組織、タックス・ジャスティス・ネットワークの代表者であるジョン・クリステンセン氏と、シニア・アドバイザーのクリシェン・メータ氏がイギリスから来日し、2016年10月29日東京・田町で講演を行なった。
▲シニア・アドバイザーのクリシェン・メータ氏
- ミニ講演 雨宮処凜氏 (作家、社会運動家、公正な税制を求める市民連絡会共同代表)「タックス・ヘイブンを追及する市民運動が、なぜ今必要か?」
- 基調講演 ジョン・クリステンセン (John Christensen) 氏(タックス・ジャスティス・ネットワーク〔Tax Justice Network, TJN〕代表)「税の公正(タックス・ジャスティス)とは」
- 報告 ジョン・クリステンセン氏、クリシェン・メータ (Krishen Mehta) 氏(TJNシニア・アドバイザー)「タックス・ヘイブン対策の課題と提言」
- 総括 合田寛氏(政治経済研究所理事)
- ミニ講演 宇都宮健児氏(弁護士、元日弁連会長、公正な税制を求める市民連絡会共同代表)「市民運動と国際連帯の必要性」
- タイトル 「財源がない」は本当なのか?―3,000兆円も眠るタックス・ヘイブンから格差社会、税制を考える― 登壇「タックス・ジャスティス・ネットワーク」ジョン・クリステンセン氏、クリシェン・メータ氏ほか
- 日時 2016年10月29日(土)13:00〜16:30
- 場所 田町交通ビル(東京都港区)
- 主催 公正な税制を求める市民連絡会(詳細)
メータ氏は、「税の公正は、私たち社会的にとって重要な問題。なぜなら、税の公正がなければ、社会的正義を守ることが非常に難しくなる。社会的正義が守られなければ、人権も守られなくなるからだ」と、「税の公正」の重要性を強調した。
クリステンセン氏は、タックス・ヘイブン問題を解決するために、日本への提案として、「多国籍企業による国別報告書を完全に開示させること」「企業の実質的所有者を完全に開示し、(国民に対して)公示させること」などについて解説した。
▲タックス・ジャスティス・ネットワーク代表・ジョン・クリステンセン氏
二人の話を受けて、弁護士で「公正な税制を求める市民連絡会」共同代表である宇都宮健児氏が壇上に立った。宇都宮氏は「タックス・ヘイブンの問題は、それを利用する富裕層や大企業などの税逃れ、所得隠しの問題だが、それが各国政府の政権中枢にある人とつながっている可能性がある。市民が黙って手をこまねいていては、政府がタックス・ヘイブン対策を実施していくことは期待できない。市民が声を上げる必要があると思う」と述べ、市民運動の必要性を訴えた。