一大スキャンダルなのに日本では調査されない!?民進党「パナマ文書調査チーム」による関係省庁へのヒアリングで、国税庁から驚きの発言 2016.5.10

記事公開日:2016.5.11取材地: テキスト動画
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(取材:佐々木隼也、文:宇佐見俊、記事構成:岩上安身)

※5月29日テキストを追加しました!

 パナマの法律事務所である「モサック・フォンセカ」によって作成された機密文書、いわゆる「パナマ文書」のデータベースが、2016年5月10日に公開された。それを受けて、同日、民進党は「パナマ文書調査チーム」を立ち上げ、「パナマ文書」について分析を行い、公平・公正な課税のための政策的な調査、提言を行うため、関係省庁へのヒアリングを行った。

 会議冒頭、山井和則国対委員長代理が、「本日発表されたパナマ文書には、日本に関係する多くの個人や法人があるといわれている。合法的な脱税があるのではないか。人間だれしも税金は支払いたくはないが、社会、国家を形成するために一般庶民は税金を払っている。よりによって超大金持ちの一部の方々が裏技で脱法的なことをするのをしっかり取り締まっていかなければ、納税者は納得しない」と、チーム設立の意義を話した。

■ハイライト

  • 議題 パナマ文書について
  • 財務省、国税庁、金融庁、警察庁よりヒアリング
  • 日時 2016年5月10日(火)14:00~
  • 場所 衆議院本館(東京都千代田区)

「タックスヘイブン税制」に対する国際的な取り組み〜「BEPS」と「自動的情報交換」とは

 まず、「タックスヘイブン税制」に対して、「課税当局として国際的な枠組みの中でどのように対応をしているのか」という議員からの質問に対し、財務省の主税局は4月12日から14日にワシントンで開かれたG20で「租税回避行動を抑えるため」に「『BEPS(税源の侵食と利益移転(注1)対応』、『自動的情報交換(注2)』をより多くの国が着実に実施することの重要性を確認」したと答えた。

 「BEPS」については、「2012年、13年のころから、G20、OECDで『税源の侵食と利益移転』プロジェクトをサミットで対応する」に取り組んでいるという。その背景として「一部の多国籍企業の実効税率」が「1%台」という企業が多数見つかった」ことが挙げられた。

 特に欧州を中心に、多国籍企業だからこういった節税ができるのはおかしいと、該当する企業を聴聞するという動きがある。租税回避行為にどのように対応するかをG20とOECDを中心に議論していくことが決まったと、これまでの経緯を説明した。

注1:
BEPS Base Erosion and Profit Shifting各国の税収減少と財政赤字が拡大する中、多国籍企業の国境を越えた過度の節税策が注目を集めるようになった。この状況を受け、OECD(経済協力開発機構)が現在の国際課税原則や各国国内税法は、多国籍企業のグローバル・ビジネスを税務面から捕捉する上で有効に機能しているのかが議論され、その問題解決に向けた行動計画が策定されている。

 OECDの租税委員会では浅川雅嗣議長の下で、この「BEPS」プロジェクトの議論が進められたという。その中には「外国子会社合算税制(=タックスヘイブン税制)の強化」や「人為的なPE(注3)認定の回避」、「タックスプランニングの義務的開示」など、「租税回避行動をとにかく抑えていく」ことへの対応を協議しているという。

 また「多国籍企業の情報の報告制度の義務化」では、多国的展開をしている企業の親会社が各国の財務状況をすべて集約して、親会社がある国の国税庁に国別報告書の提出義務化を議論し、これから各国が法制化、租税条約の改定をしていく段階にあると説明した。

 2008年、リーマンショック直前のアメリカで「パナマ文書」による騒動と同様の大企業による租税回避問題がクローズアップされていた。アメリカの富裕層が「欧米の某銀行のプライベートバンキングに」預金していたことが「アメリカ当局からすると租税回避行為、脱税」と認定され、IRS(注4)がこのプライベートバンキングに対して警告を発し、「アメリカ国民が海外でもっている金融機関の預金等の残高をIRSに報告させる」ことを義務付ける国内法を制定した。

 これはアメリカだけの問題ではなく、全世界で取り組む問題であるとし、自国の人が他国に持つ金融資産の情報を交換すれば、どの人がどの国に財産を持っているかが把握できるので、「自動的情報交換制度」を全世界で共有することをOECDが中心となって行ってきたと説明。その後2013年、G20首脳は「海外の金融機関を利用した国際的な脱税・租税回避に対応するため、税務当局間で非居住者にかかる金融口座情報の自動的情報交換を実施することを合意」した。

注2:
税の自動的情報交換に関する宣言(概要)
注3:
PE private equity 未公開株
注4:
IRS Internal Revenue Service アメリカ合衆国内国歳入庁

 「日本の外国人居住者の場合、日本の金融機関に預けているお金は、金融機関が国税庁に報告し、国税庁はその人の口座がある各国の当局に情報を提出。海外在住の日本人の場合は在住国の当局から日本の国税庁に情報がもたらされる」――これが自動的情報交換の制度であると、主税局の担当官は説明した。自動的情報交換制度は2018年から実施される予定という。

 自動的情報交換制度に協力的ではない地域については、どういう地域が協力的ではないとされるのかという客観的基準を作って、改善が見られない場合は「ディフェンス・メジャー」(=防御的措置)も検討する。これら「パナマ文書」に端を発した問題について、G20ではもう一度政策的対応を整理し、実行に移すことが確認されたと、強調した。

 「BEPSプロジェクトに関する法制」の日本の対応として、「15の報告」のうち「国内的な法律で対応が必要なもの」については27年度改正より「順次法令改正を」している。また、「自動的情報交換」についても「27年度の税制改正で手当て」をして、「2018年からの情報交換開始を念頭において」体制を整備している。また5月18日のG7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議と26日からのG7伊勢志摩サミットにおいても、国際課税等について、今後の公正な整備について議論を続けると述べた。

 仮に各国で情報が交換され、多国籍企業が、どこの国でいくら資金をもっているか、どこで、どれだけの生産や販売を行なったのか、という経済活動の実態が明らかになったとしても、その後に、その収益に課税し、税として納めさせる権利はどこの国にあるのか、という問題が生じる。

 各国政府の間でも徴税権や、その取り分をめぐって対立が生じうるのではないか。そうした疑問を抱かずにはいられなかったが、質疑はそうした問題にまで深く踏み込まなかった。まだまだ議論を尽くす余地のあるテーマであると、改めて実感させられた。

国税庁は「パナマ文書」を調査しないのか?

 続いて、国税庁川島課税部長から「パナマ文書」を受けての動きについての説明がなされた。「OECDおける税務長官会議メンバーのネットワーク」であるJITSICの特別会合が、4月13日パリで行われ、国税庁からは課長級が参加した。そこでは「パナマ文書」を受けて、「データの入手」、「各国間の協力」、「情報共有の可能性」が議論されたことを明らかにした。しかし、具体的な情報や議論の中身については機密事項であると公表されなかった。

 山井議員は「パナマ文書」について、調査しているのかどうか尋ねるが、国税庁は「パナマ文書」には「関心を持っている」が、具体的な「企業名、個人名が出てくる」ので、税務当局としてどうするのかということは言えないと、曖昧な答えに終始した。そして、一般論として、申告情報などいろいろな情報を収集する中で、「問題があれば是正を図っていく」とあたりさわりのない一般論を繰り返した。

 それに対して、山井議員は、この「パナマ文書」を政府が調査しないということになれば国民の不満感につながるのだから、一歩踏み込んだ回答をすべきではないかと指摘した。

 海外への資金の流れを把握するための方法として、主税局に制度的手当てを依頼しており、100万円以上の送金は「国外送金調書」で金融機関から報告されている。また、5000万円以上の国外財産がある場合は「国外財産調書」が平成24年の税制改正により創設されている。国税庁の資料情報のひとつとして「パナマ文書」を含めていることを示唆し、課税上問題があれば適正に対処すると述べた。

マネーロンダリングやテロ資金対策上重要な「金融の透明性」

 金融庁は「金融の透明性」についても、マネーロンダリングやテロ資金対策上非常に重要であると、G20で議論されたとコメントした。また警察庁はマネーロンダリング対策として策定された国際的基準が存在し、それはFATF(金融活動作業部会 注5)を通じて勧告という形で各国に共通して示されているという。この国際的基準に従い、日本においても「法制度が整備されて」いる。

 マネーロンダリング防止という観点からは、犯罪収益移転防止法が定められている。この法制では金融機関や一定の事業者が一定の取引を行う場合は本人確認を行うとともに、取引により収支した財産が犯罪による収益であるという疑いがある場合は、「疑わしい取引の届け出」として警察庁に届け出るという制度になっている。届け出の情報は警察、検察、証券取引監視委員会などに提供し、それぞれの捜査機関が活用する枠組みになっている、と解説した。

注5:
FATF Financial Action Task Force on Money Laundering マネーロンダリングに関する金融活動作業部会

国際的な枠組みや日本の取り組みは機能しているのか

 民進党の玉木雄一郎議員が、国際的な枠組みや日本の取り組みが機能しているかどうかの認識を尋ねたところ、主税局は「パナマを拠点とする法律事務所、モサック・フォンセカから出た文書で」、「南ドイツ新聞の記者を通じ」、「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、その内容の一部を公表した」ものが4月3日に発表されたパナマ文書」である。報道によると「1970年代から2015年末までの40年間の顧客との電子メール等1150万点以上の文書」のことであると、パナマ文書についての認識を述べた。

 ただし、「法律文書がパナマにあった」とはいうものの、「顧客リストが実際、どこで金融機関を利用」していたかといえば、「英領バージン諸島」「パナマ」「バハマ」「オフショア金融センター」などが多く、「パナマに所在する金融機関」だけを利用していたというわけではない。これはパナマだけの問題ではなく「広域的であるということ」が論点のひとつであると付け加えた。

(…会員ページにつづく)

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