【フルテキスト掲載!】違法寄付受領罪および収支報告書虚偽記載罪で刑事告発!落選対象議員「第4号」自民党・野村哲郎参議院議員(鹿児島選挙区)の疑惑に迫る!~岩上安身によるインタビュー 第636回 ゲスト 神戸学院大学・上脇博之教授(その2) 2016.3.26

記事公開日:2016.4.12取材地: テキスト動画独自
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(前文・西原良太)

 2012年末、安倍晋三自民党総裁は「TPP断固反対」を掲げて総選挙に臨み、農協票を取り込んで294議席を獲得、当時の民主党(野田政権)から政権を奪還した。当時の野田総理の解散の決断は理解しがたく、政権の禅譲、大政奉還との疑いも生まれたが、それはおく。

 しかし、2013年3月15日、安倍総理は総選挙で掲げた公約を無視してTPPへの交渉参加を表明、2014年の総選挙を経た2015年10月5日、「聖域」を守ることなく「大筋合意」を発表。2016年2月4日に交渉に参加した12カ国で署名がおこなわれた。安倍総理は、JAそして農家の人々の期待を煽り、選挙に利用するだけ利用して公約を破棄し、手の平を返す裏切りをしたのである。

 この交渉の責任者だった甘利明TPP担当相(当時)は、署名直前の2016年1月28日、建設会社(薩摩興業)からの現金授受を認めて大臣を辞任。「睡眠障害」を理由に公の場から姿を消した。そして国会閉会直後の今月6日、医師も驚くほどのタイミングで「睡眠障害」が治ったと称して、政治活動を再開した。

 そんな都合のよい病気があるのか。そもそも「睡眠障害」は仕事に一切出られなくなるような病気ではない。詐病、仮病ではないかという疑いがより一層色濃くなった。

▲大臣を辞任した甘利明氏

▲大臣を辞任した甘利明氏

 安倍政権はTPPをアベノミクスの「成長戦略の切り札」と位置づけ、農業の大規模化、株式会社化を推進している。しかし大規模化に対応できない多くの小規模農家は、農地を手放し、廃業するか、農業法人の従業者、すなわち農地解放以前の「小作人」になるしかない。

 IWJではこれまでTPPについて、99%の富を吸い上げて1%を肥えさせ、日本経済を破滅に導く政策であるとして強く批判してきた。

 JAは全国に1000万人近い組合員を擁する自民党「最大の支持組織」と言われている。2012年の総選挙では、「TPP断固反対」を掲げた自民党を支援し、政権交代の一因となった。2014年の総選挙では、すでにTPPへの交渉参加を表明していた自民党を、裏切られてもなお消極的ながらも支援した。その結果、自民党が大勝し、「TPP大筋合意」へとつながったのである。

 JAはいつまで自民党に騙され、利用され続けるのか。自民党が掲げる公約に反対していながら、なぜ自民党への「消極的支援」をおこなうのか。その背景には自民党農水族議員との癒着があった。

 2016年2月26日、野村哲郎・自民党参議院議員が違法寄付受領罪および収支報告書虚偽記載罪で刑事告発された。野村議員は7月の参院選に鹿児島県選挙区から立候補する見込みである。

 岩上安身は2016年3月27日、野村議員をはじめとする15人の自民党議員を告発した「落選運動を支援する会」の呼びかけ人の一人である上脇博之教授(神戸学院大学)にインタビューをおこなった。上脇教授はこの中で、JA鹿児島県中央会による野村議員への違法迂回献金の仕組みを解説、「JA鹿児島県中央会」から主に自民党議員を支援する政治団体「鹿児島県農民政治連盟」へ毎年950万円、計6650万円もの寄付が行われ、さらにその一部が野々村議員へ違法に寄付されていることを明らかにした。

 以下、インタビューの全編動画と全文文字起こしを、公共性を鑑みIWJ会員以外にも特別に全公開する。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル 岩上安身による神戸学院大学・上脇博之教授インタビュー
  • 日時 2016年3月26日(土)13:30〜17:00
  • 場所 神戸学院大学ポートアイランドキャンパス(神戸市中央区)

落選運動第4号・自民党の野村哲郎議員は違法寄附受領罪と収支報告書虚偽記載罪で刑事告発された農水族議員!JA鹿児島が政治団体を介して違法迂回献金!

岩上安身(以下、岩上)「皆さん、こんにちは。ジャーナリストの岩上安身です。『刑事告発された資金の正体』シリーズ。本日は第4号、自民党の野村哲郎参議院議員を取り上げて、お話をうかがいたいと思います。

 お話しくださるのは、本当におなじみになりました、神戸学院大学教授・上脇博之先生です。先生、よろしくお願いします」

上脇博之氏(以下、上脇・敬称略)「よろしくお願いします」

岩上「この野村哲郎さんは、鹿児島選挙区です。先生も鹿児島出身ですね」

上脇「そうです」

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岩上「この方は、旧隼人町、霧島市の出身です」

上脇「私も隼人です」

岩上「あ、そうですか。薩摩隼人ですね」

上脇「いやいや、どうかなあ」

岩上「この方は、ラ・サール高校を卒業しているんですね。その後、鹿児島県の農協中央会に入会しました。今でいうJAですね。

 そして、参議院議員に当選。これまでの主な役職としては、農林水産大臣の政務官、参議院農林水産委員長、自民党水産部会長。それから自民党畜産・酪農対策小委員会委員長と、とにかく農水関連の農水族というような方ですね。がっちりとした風貌の方です。

 JAでは常務理事になられているという方ですけれども、そのJA鹿児島から迂回献金を受けているということなんですね。2月26日に、違法寄付受領罪および収支報告書虚偽記載罪で刑事告発されましたが、これは先生方がされたものですね」

上脇「そうですね」

岩上「内容を教えていただけますか」

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上脇「まずJAの鹿児島県中央会。簡単にJA鹿児島と言います。ここが鹿児島県農民政治連盟というところに献金したかったんだと思うのですが、お金を一定程度渡しているんですね。毎年950万円かな。『農政事務を委託する』という名目になっているんですね。

 農協が政治団体に事務委託をするということは、常識ではちょっと考えられない。実は、農協が政治団体に寄付することは禁止されているんです」

岩上「農政連と呼ばれる農民政治連盟は、全国にありますよね。鹿児島だけの話じゃないです。同じ仕組みです。

 JAがあって、各県に中央会もあります。そして必ずセットで、その地方の農政連があります。これは本当にぴったりくっついた関係で、必ず自民党を応援するという仕組みになっていますけれども、JAが直接政治に携わるということは避けていて、農政連という政治団体が寄付や実際の選挙運動の支援を行うと聞いております。JAと農政連は二人三脚の関係であったはずなのに、JAから農政連への政治献金は禁じられている。これはどういうことですか」

上脇「政治資金規正法によると、例えば企業の政治献金は、政党にはできるけれども、政治団体にはできないんですよ。企業が献金しようとすると、政党にするか、例えば自民党でいうと国民政治協会のように、政党のためにお金を集める政治資金団体にしかできないんですよ」

岩上「なるほど。自民党の場合は、国民政治協会というところ」

上脇「そういうところにしか献金ができないんです。それ以外の政治団体には寄付ができないんですね。そういう法律で寄付が禁じられているからだと思うんですけれども、どうも業務委託とか事務委託とか、そういう名目でお金を渡しているんです。

 業務委託をしているのなら、あるいは事務委託をしているのなら、それに見合う支出があるはずなんです。そもそも農協が事務委託をする必要もないのだけれども、仮に事務委託する必要があったとしても、事務委託をするための支出が見られないんですよ。つまりこれは寄付だと思われる」

岩上「なるほど」

上脇「ここで話が終わるのではなくて、農協から受け取っている農民政治連盟は、さらにこれを野村さんの後援会に、お金を流しているんです」

岩上「さらに、『JA鹿児島県中央会が野村哲郎後援会彩耀会に鹿児島県農民政治連盟を通じて、毎年360万円を業務委託料など偽りの名目で寄付している』ということですが」

上脇「要するに、農協から農民政治連盟に950万円が流れて、たぶんその一部だろうと思うんですけれども、360万円が野村哲郎後援会に行っているんです。業務委託とか事務委託とか、そういう名目でね。これは、『農協から行っているんですよ』というメッセージが伝わるようになっているんですね。

 そして、野村哲郎後援会がJAから寄付を受けることもできません。野村後援会は政党支部ではなく政治団体なので、寄付を受けられないんですね。そのため、業務委託や事務委託の名目でお金を流して、迂回献金を野村哲郎後援会が受け取っているのではないかと思われます」

岩上「なるほど」

上脇「これが政治資金規正法違反」

岩上「JA鹿児島中央会だけではなく、各地のJAは、候補者に業務委託料などの名目で寄付、迂回献金を行ってはいけない。偽りはだめですよね。

 でも、よく聞く話ですけれども、例えばJAの団体が、OBの候補者を支援したりすることがある。そこにダイレクトに寄付してはいけないんですか」

JA鹿児島は補助金を受けていた可能性も?わざわざ業務委託を名目として金を流した謎~そもそもJAが政治団体に寄付するのは違法!

上脇「実はもう一つ論点があるのですが、今はそれを置いておきます。もしJAが野村さんの支部に寄付していれば、これは必ずしも違法とは言えなかったんです。

 ここは憶測ですが、JAには補助金が入っている可能性があって、もしJA鹿児島が野村さんの支部に献金すると、マスコミに叩かれる可能性があるんです。わかりやすいですからね」

岩上「税金で補助金を受けているところが寄附をしてはいけない話ですよね。これは、このシリーズ1回目の島尻さんの時にも出た話ですね。島尻さんの旦那さんが経営しているところが補助金を受け取って、そこから奥さんのところに行くという。これはもう本当に、身内で回しているから露骨ですけれども。補助金を受けているところから金が出てはいけない」

上脇「いけないんですね。ただ、内部のことは僕もわからないので、補助金が出ていると断定はできません。

 ただ、なぜこんなにややこしいことをしたかと考えると、やはり補助金を受けている農協、つまりJA鹿児島が、支部に寄付できないので、そうしたのではないかと思うんです。迂回献金のやり方としては、支部から野村後援会に寄付をまた回すと、皆さん、だいたいこういうやり方をするんですね。これをしていないのは、補助金を受けているからではないかと。

 そこで、あまり注目を浴びない農民政治連盟に事務委託名目でお金を流して、さらにそこが業務委託名目で後援会にお金を流したのではないかと。これは本来受け取れないはずの政治献金を受け取ったということで、政治資金規正法違反です」

岩上「なるほど。業務委託料というのは偽り名目である可能性が極めて高い。その偽りの名目で事実上の寄付をするということも、違法行為ですよね」

上脇「そうです。虚偽記載ということになります」

岩上「先生、政治資金規正法第21条1項違反というのは虚偽記載についてのことですか」

上脇「違法な寄付を受け取ったことが、21条1項違反に該当します」

岩上「補助金を受けているところは出してはいけないということですか」

上脇「このケースの問題点は、補助金を受け取ったかどうかということは置いておいても、本来受け取れないはずの寄付を受け取っているということなんです。先ほど言ったように、会社は政党支部には寄付できるけれども、政治団体にはできない。農協も寄付できない。

 補助金がJA鹿児島に出ているかどうかは、僕らもだいぶ調べたんですけれども、本体というか、上の方は……」

岩上「JA全中(全国農業協同組合中央会)ですか」

上脇「あそこにはどうも出ているそうですが、それがJA鹿児島に行っているかどうかの確認ができなかったんですよ」

岩上「ここは一つ、JAには早々に明らかにしてほしいところです」

上脇「それもあるんですけれどもね。その問題を抜きにしても、このケースは、違法な寄付を受け取っている。それも寄付と書くわけにいかないから業務委託と嘘の記載をした、ということで、僕らは告発したんですよ」

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