「もう一人のマララ」米軍ドローンの誤爆被害にあったナビラさん父子が語る、戦争被害の実態「米国は戦争ではなく教育にお金を」 2015.11.16

記事公開日:2016.2.4取材地: テキスト動画
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(取材:高橋敬明、文:IWJテキストスタッフ・富田充、記事構成:ぎぎまき)

※2月4日テキストを追加しました!

 加害者が、過激派組織と米国であるのとでは、被害者側のその後に「大きな差」が生じる。

 パキスタンの反政府勢力、タリバンの支配下に生きる人々の惨状を告白し「勇気ある少女」として世界的に知られるようになった、マララ・ユスフザイさんは2012年10月、下校途中に武装勢力に狙い撃ちされ、頭部と首に銃弾を受ける重傷を負った。15歳の少女に対する残虐行為に世界中から激しい非難の声が上がり、女優でUNHCR特使でもあるアンジェリーナ・ジョリー氏がパキスタン、アフガニスタンの少女のために約400万円を寄付するなど、マララさんの存在は広く知れ渡ることとなった。

 マララさんは2014年に、17歳という史上最年少でノーベル平和賞を受賞した。

 そして、「もう1人のマララ」と呼ばれるパキスタンの少女がいる。2012年10月に同国北西部の故郷で、米国ドローン(無人機)攻撃の誤爆被害に遭い、目の前で祖母を亡くし、自身も負傷を負ったナビラ・レフマンさんだ。

 ナビラさんは、ドローン攻撃の恐怖に日々対峙しなければならない、パキスタンの子どもたちの窮状を訴えるため、2015年11月に来日。同月16日、都内で行った記者会見で、「日本は平和でいい。なぜ、戦争に巨額のお金を使うのか」と米国を静かに批判した。

 マララさんも、ナビラさんと同様に、米国のドローン攻撃による民間人被害を批判している。2013年10月にオバマ米大統領と面会した際には、ドローンによるテロ掃討作戦をやめるよう求めている。同じような境遇で、同じように平和を訴えているにも関わらず、マララさんだけが国際社会の脚光を浴び、ナビラさんの存在が黙殺されるのは、ナビラさんが、「米軍ドローン被害者」という、米国にとって「都合の悪い」存在であるからだ。

 「イスラム国」に代表される過激派テロ組織に対するせん滅作戦を展開する米軍は、オバマ政権になってから、ドローンによるミサイル攻撃を主要な攻撃手段の1つに位置づけてきた。「民間人の巻き添えを最小限に抑えるピンポイント攻撃が可能」というのが米軍側の言い分だが、実際は「誤爆」による住民被害が多発している。その生き証人が、ナビラさんなのである。

 集団的自衛権の行使容認、安保法制の採決強行によって、「米国の戦争」に参加することが可能となった日本。しかし安倍政権は、米国が主張する「民間人の巻き添えはごく少数」という主張を丸のみし、検証しようとはしない。

 ナビラさんらを日本に招へいした現代イスラム研究センターの宮田律理事長は、「暴力を暴力で制するとの発想では、いつまで経っても一般市民が巻き添えになる『負の連鎖』は止まない」と語った。

記事目次

■ハイライト

  • 日時 2015年11月16日(月)19:00~20:30
  • 場所 都市センターホテル5階「オリオン」(東京都千代田区平河町)
  • 主催 現代イスラム研究センター(Center for Contemporary Islamic Studies in Japan: CCISJ)

「もう1人のマララ」に違和感

 「ナビラさん一家は、2013年に米議会の聴聞会でドローン攻撃の問題点についてスピーチしたが、集まった議員の数はわずか5人。ほとんどニュースにもならなかった」──。宮田氏による、この発言で集会はスタートした。

 ナビラさんは同じパキスタン人の、2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんと、ことあるごとに比較され、「もう1人のマララ」とも呼ばれているが、宮田氏は、これは表面的な見方にすぎないと釘を刺す。

 「パキスタンで女子教育の大切さを訴えたことで、イスラム原理組織・タリバンに襲撃されたマララさんは、英国の病院で先端治療を受け、そのまま英国で教育を受けている。だがナビラさんは、やはりパキスタンで米軍ドローンの攻撃で祖母を亡くし、父親も自身も負傷したが、現在は、パキスタン軍が昨年6月に故郷(同国北西部)で(イスラム過激派による)パキスタン・タリバン運動への掃討作戦を開始したのを受け、(ドローン攻撃による被害でパキスタン政府から何の保障も受けられないまま)国内避難民としての暮らしを余儀なくされている」。

 加害者が、過激派組織と米国であるのとでは、被害者側のその後に「大きな差」が生じるとの趣旨である。冒頭の発言にある「わずか5人」は、「世界の警察」の異名をとる米国の、ドローン攻撃が現地住民に犠牲者を生んできたことを顧みない姿勢を象徴しているのかもしれない。

オバマ大統領に「巨額資金を教育に回せ」と要求

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