「東電は全電源喪失を予想できた」検察審査会が勝俣恒久元会長ら元東電幹部3人に「起訴相当」議決 ~福島原発告訴団が福島市で緊急記者会見 2014.7.31

記事公開日:2014.8.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

 「安全対策費用軽減のための、根回し、時間稼ぎなどを行なっていた東電は、今回の全電源喪失による炉心損壊を予想できた」——。

 2014年7月31日(木)、東京第5検察審査会は、福島第一原発事故をめぐり、勝俣恒久元会長(第12回 国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会 2012.5.14)、武藤栄元副社長(第6回国会事故調査委員会(参考人:武藤栄 元東電副社長) 2012.3.14)、武黒一郎元副社長(第8回国会事故調査委員会 2012.3.28)の3人の元経営陣を、業務上過失致死傷罪で「起訴相当」と議決した。同原発事故をめぐっては、東京地検は昨年9月、東電元幹部ら42人を全員「不起訴処分」としていた。

 今後、東京地検は再度捜査を行い、起訴するかどうかを改めて判断する。

 今回の議決を受け、同日17時より、福島県庁内県政記者室にて記者会見を開いた「福島原発告訴団」の武藤類子団長は、「福島検察審査会に申し立てたかったが、東京の審査会に回されてしまったので危惧をしていたが、納得できる結果にはなった。検察は速やかに捜査に移って欲しい。一日も早く、事故の責任をとり、被害の救済に努めてほしい」と見解を述べた。

 原告団副団長でいわき市議会議員の佐藤和良氏は、検察審査会が起訴相当と判断した根拠を説明した。検察審査会は、平成18年に出された、東電、保安院、原子力安全機構の溢水勉強会の資料に着目。津波による浸水が全電力喪失を引き起こす可能性を認識しながら、安全対策にかかる費用を軽減するために、審査関係者への根回し、時間稼ぎなどを行なっていることが、今回の起訴相当の判断理由になっているという。

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元会長の勝俣恒久氏ら6人のうち3人が起訴相当

 会見ではまず、武藤類子氏が「私たちは2012年6月、福島地検に、国と東電を相手取り1万4716人(第1次告訴1324人)で告訴をした。2013年9月、東京地検は不起訴処分とする。それを受けて10月、検察審査会に申し立てた結果が本日、下された」と、経緯を説明した。

 続いて武藤氏は、弁護団の海渡雄一弁護士からのコメントを読み上げた。

 「今回の決定は、福島原発被害者の思いを理解してもらった画期的な判断である。東京電力の役員には、高度な注意義務があることを認めた。検察はこの決定に基づき、再捜査を進めてもらいたい。再び不起訴にしても、強制起訴の流れは変わらないだろう」。

重要な判断「事業者には高度な注意義務がある」

 続いて佐藤和良氏が、杉山徳明検察官検事の記した検審議決書の要旨を説明した。まず、「事業者には高度な注意義務がある」と検察審査会が判断したことは重要な点だと述べ、「チェルノブイリ事故を前例とし、伊方訴訟での最高裁判決の安全審査は、災害が万が一でも起こらないようにするとしている」と述べた。

 そして、「原子力規制委員会の再稼働審査での、『安全だとは確認できない』との(川内原発に対しての)発言は、法律的におかしいことを暗にほのめかしているのではないか。議決書は、自然災害は確実に予測はできないとしても、根拠のあることには常に謙虚に対応すべきであるとし、想定外の事実も対策はすべきだ、との見解を示している」と続けた。

 さらに、「武藤栄元副社長が、耐震バックチェックや津波への対応を事前に知っていたと記し、15.7メートルの津波への対策の必要性を理解しながらも、土木学会の基準に差し戻して検討させ、時間稼ぎや、津波評価部会や保安院への根回しも指示していることなど、そのやり口を審査会は理解していることが、今回の起訴相当の判断理由になっている」と述べ、「新しい見解も含んでいる」と一連の議決内容を評価した。

「不起訴」とした検察の根拠を真っ向から否定

 さらに佐藤氏は、検審が起訴相当とした根拠を詳細に説明した。議決書は、「10メートル以上の津波の可能性は10万年に一度だとしても、その対策をするべきだ」と記しており、また、「安全対策にかかる費用を軽減するために、審査関係者への根回し、時間稼ぎなどを行なっていること」に言及し、検察審査会は、「今回の全電源喪失による炉心損壊は、東電は予想できた」と判断したという。

 そして検察審査会が、東電、保安院、原子力安全機構の溢水勉強会の資料に着目し、「武藤栄副社長が、平成18年の段階ですでに、浸水の可能性による全電力喪失が免れないことをわかっていた」と判断したことをあげ、「検察の不起訴の理由の、安全対策をとることに時間的猶予がなかったことを、それによって、真っ向から否定した」と述べた。

 さらに佐藤氏は、「安全対策の責任は、規制当局の指摘がないから、他の事業所がやっていないから、は理由にならない。中央防災会議も、その目的が違う。よって、今回の検察審査会の議決は、東京地検の判決を完膚無きまでに論破した。もしこれで、東京地検が起訴に持ち込めなかったら、検察の恥になる」と付け加えた。

検察に強制捜査を望む

 質疑応答では、検察に何を求めるかというNHK記者の質問に対し、武藤団長は「強制捜査を何度も申し入れている。今回の再捜査では強制捜査をしてほしい」と答えた。

 「議決を聞いたときの第一印象は?」との共同通信記者の質問に対しては、「決定に楽観視はしていなかったので、よかった」と回答。佐藤副団長も、「いまだ14万人余りが避難を強いられている。汚染水問題、放射性物質の汚染は終わらない。しかし、まったくそれらの責任が問われないことは異常な国だ。これで少しは、それを糾すことになるのではないか。画期的だ」と喜びをにじませた。

 「この議決は、再稼働へどういう風に影響するか?」と聞かれると、武藤団長は「この議決は、再稼働の危険性を検証する必要性を指摘している」と答えた。佐藤副団長は「規制委員会の審査書で進めることは問題だということを、議決書からは察することができる。福島原発事故の検証をきちんとし、安全対策の確立の必要性を訴えていることは、大飯原発再稼働判決も踏まえた、第2弾としての、今回の議決になっている」と答えた。

いまだに変わっていない東電の「安全より経済効率」の体質

 毎日新聞記者が「議決は、市民による判断か?」と問うと、武藤団長は「検察審査会の議決は、大多数の国民の思いだ。この原発事故の責任が問われないのはおかしい、という疑問をきちんと調査し、検証している。検察は、これをちゃんと踏まえて捜査をしてほしい」と答えた。

 さらに東京の検察審査会になって、地域性やその影響について訊かれると、「東京の人たちがどこまで理解してくれるか、心配はしていた。東京での広報活動、集会などを通して、いろいろ努力はしたが、それ以前に、東京都民も原発事故には共通した意識を持っていたと思う」と述べた。

 続いて安全対策が時間やお金でおろそかにされていた点について、佐藤氏は「東電の、安全より経済効率という体質は、いまだに変わっていない。汚染水対策も、2011年6月の時点で実施していれば、こんなことにならなかった。元をたどれば、事故も経済効率重視だから起こった」と指摘した。

 最後に、「8月4日、東京地裁で抗議行動をする予定を、東京地検に場所を変え、速やかな捜査を訴える」と次回アクションを告知し、記者会見は終了した。

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「「東電は全電源喪失を予想できた」検察審査会が勝俣恒久元会長ら元東電幹部3人に「起訴相当」議決 ~福島原発告訴団が福島市で緊急記者会見」への4件のフィードバック

  1. @achira49さん(ツイッターのご意見より) より:

    あの福井地裁以後、司法の世界で状況が変わりつつあるのか。原発事故の責任追及が始まる。

  2. @penko0900さん(ツイッターのご意見より) より:

    被害者がなぜここまで苦労しなければならないのだ?

  3. @hamaji_umさん(ツイッターのご意見より) より:

    津波じゃなく地震、人災でしょ。ガス抜きっぽい。。

  4. 小宮山強 より:

    今日のNHニュースでは津波が予見できなかった。よって不起訴といった内容を見分しました。ちょっと不可解ですので
    投稿しました。あの事故の検証について私の記憶ではNHKの報道や事故報告などから判断すると、果たして津波だけの原因ですか非常に疑問があります。
    ①原発に外部から供給する送電線・配電線・給電線及び電力設備機器の耐震設計はなされていなかた。
    ②原子炉の様々な安全装置の機械的配管が耐震設計されていなかった。
    ③非常時に注水するには原子炉の圧力を下げなければならない。このための弁が設計ミスにより開かなかった。
     これらのことから津波の判断だけでよいのでしょうか。
     認識されておられるかも知れませんが気になりました。今後の原発運営における改善点にも係わりますから

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