「大学における貧困の拡大 ─ 学費の値上げ・奨学金返済の負担・非常勤講師の困窮 ─」と題したシンポジウムが6月27日、首都圏大学非常勤講師組合の主催により早稲田大学講堂で開催された。
シンポジウムでは、多額の奨学金返済の困難さに関する問題と、低水準な労働報酬と不安定な身分という問題を抱える非常勤講師の2つをテーマに、パネラーによる発言、国会議員によるメッセージ、学生団体からの発言などが行なわれた。
「大学における貧困の拡大 ─ 学費の値上げ・奨学金返済の負担・非常勤講師の困窮 ─」と題したシンポジウムが6月27日、首都圏大学非常勤講師組合の主催により早稲田大学講堂で開催された。
シンポジウムでは、多額の奨学金返済の困難さに関する問題と、低水準な労働報酬と不安定な身分という問題を抱える非常勤講師の2つをテーマに、パネラーによる発言、国会議員によるメッセージ、学生団体からの発言などが行なわれた。
記事目次
■ハイライト
登壇した中央大学国際教養学部教授の大内裕和氏は、近年の大学授業料の高騰と、それに伴う奨学金制度の問題について報告した。
授業料が月千円だったひと昔前とは異なり、現在ではその何倍もの授業料を収めなければならない。世代ごとに感覚のギャップが生じている「世代間の断層」の存在が、問題の解決をより難しくしていると大内氏は指摘。このままの状態が続けば、大学において「研究の存続自体が難しくなる」と強い懸念を示した。
早稲田大学政経学部教授の岡山茂氏は、現在、早稲田大学教員のトップである学長と、法人の経営者としての役割を担う理事長という立場が、一人の総長によって兼務されていることの問題性を指摘した。
岡山氏によれば、早稲田大学は約1千億円の内部留保があるにも関わらず、日本の私学に許される会計操作により、儲けを少なく見せ掛けることができるという。そのため、教員の給与引下げや研究費削減にしわ寄せがおよんでいると訴えた。
他方、日本の教育政策では、一般的な研究への出費は惜しまないものの、大学助成に代表される教育費を削減していることから、バランスのとれていない文科省の対応を批判した。
日弁連前会長の宇都宮健児弁護士は、弁護士の修習生に対する国費による給与負担が2010年に廃止されたことや、多い人では1000万円を超える借金を抱えてしまう若い弁護士達を例に挙げ、「国が国費で育成すべき」だと訴えた。
非正規雇用の問題に関しては、低所得者層を中心に貧困化が進む一方で、高額所得者が増えていることを指摘。安倍政権の雇用政策は、格差をさらに拡大させる政策であることから、「働く人にとって地獄の国づくり」だと厳しく糾弾し、新自由主義的な政策を批判するとともに、正規と非正規に分断された労働者が連帯していく必要性を訴えた。
『ブラック大学早稲田』(2014.02 同時代社)の著者でフリージャーナリストの林克明氏は、自身が大学の問題に関わったきっかけを明かした。林氏は、早稲田大学で2013年3月に行われた、非常勤講師の就業規定変更に伴う過半数代表者選挙が偽装だったという報告に衝撃を受け、この問題に取り組むようになったという。
この規定変更では、当初、①5年での雇い止めと、②週4コマまでの授業担当の2つの規定が追加されてしまう予定だった。しかし、早稲田ユニオンの闘いにより、2013年3月以前に在籍していた人には5年の雇い止めを適用しないことと、週4コマを8コマとするよう変更させることができたという。
一方で、貧困により問題意識のある人々から「抵抗する力をそぐ」のが狙いであると、林氏は指摘し、危機感をあらわにした。
(…会員ページにつづく)
<今日の大学のあり方を鋭く告発した迫力のあるシンポ。大学問題に関心のある方は是非ご視聴を!>