「暮らし方を意識すれば未来は変わる」 ~ 今日と未来を繋ぐお金とエネルギーの話 講師 田中優氏ほか 2014.2.8

記事公開日:2014.2.8取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ 花山/奥松)

 「未来を、自分たちで作るのか。それとも傍観して、『だめだな、この国は』と言って終わるのか。それによって、未来の子どもたちの暮らし方が変わる」──。

 2014年2月8日、京都市のキャンパスプラザ京都において、メイン・スピーカーに田中優氏を招いて、トークセッション「キョウトミライ・今日と未来を繋ぐお金とエネルギーの話」が行われた。田中氏は「お金とエネルギーの使い方で、未来が変わる」と語った。

■全編動画

  • 講演 田中優氏(未来バンク事業組合 理事長)「エネルギーとお金の流れを変える意味」
  • トークセッション
    田中優氏/田浦健朗氏(市民エネルギー京都 理事長)/松橋英祐氏/増田比呂氏(京都未来まちづくり100人委員会 チーム4)
    コーディネーター 谷内口友寛氏(京都未来まちづくり100人委員会 チーム4)
  • 質問・意見交換

この世のすべての環境破壊は、郵貯が原資

 田中優氏は、国民の預貯金の流れを示した上で、「アメリカは貿易赤字で、なおかつ財政赤字。自分では戦争をやれるだけのお金がない。それを支えたのは、日本国民の預貯金である。貸出先があまりない銀行は、国債を買い取ることになる。政府は、それでお金を集めて、アメリカ国債を買っていく。このおかげで、(アメリカは)イラクの人を100万人くらい殺すことができたし、このお金のおかげで、イラクの人たちにミサイル(爆撃)をプレゼントできた」と皮肉を込めて述べ、イラク戦争に私たちのお金が流用されたことを説明した。

 さらに、郵便貯金・簡易保険・年金に触れて、「これらは従来、財政投融資というところに集められ、いろいろなものに使われた。ダム、河口堰、原発、核再処理工場、空港、高速道路、リゾート開発など、この世のすべての環境破壊は、郵便貯金が行ってきた。だから、お金の流れを変えるには、そういうところに貯金しないことが重要。それを、いいことだと勘違いしているところに、まず、大きな問題がある」とし、お金の流れを考える必要性を示した。

お金の流れに無頓着では未来を変えられない

 田中氏は、お金の流れにひとつの定義を生み出せるとして、「私たちが、祈ったり、口で言ったりする未来は、絶対に訪れない。私たちの未来は、私たちがお金をどこに貯金したか、どう使ったか、そして、どう稼いだかによって決まる」と説明した。

 続けて、私たちが考えるべきことについて、「お金について無頓着でありながら、いいことをしようとか、貧困をなくそうと思っても、間違いなく未来は逆の形になる。現在81人の大金持ちが、世界人口の半分、30億人の資産と同じ金額を持っている。そのお金は、タックスヘイブン(租税回避地)に流れて、課税を逃れていく。これらが課税されると、お金に困ることは起こらない。そういう構造があるのに、その構造を問題にせず、国民のライフスタイルを改めても、絶対に解決しない。未来は、お金によって作られるのだから」と指摘した。

電力消費ピーク時の料金を大幅値上げせよ。原発は不要になる

 次のテーマである『脱原発して大丈夫か』に関して、田中氏は、電力消費に触れて、「足りなくなる時は決まっている。電力消費のピークが出るのは、夏場の日中、午後1時から3時にかけて、気温が最高気温を記録する場合だけである。その時以外は問題ない。しかも、ピークの時間がどれぐらいかを調べると、1年間8760時間のうち、東京電力で5900万キロワット毎時(以下kWh)を上回ったのは、5時間だけである。このために、新たな発電所を作り、原発を再稼働する必要はない」と言明した。

 田中氏は、ピーク時の消費量を抑制する方法として、事業系の電気料金を高くする方法を紹介した。「これは現実に、新日鉄が電気を供給している、北九州市の八幡東区で作った仕組みである。通常は15円/kWhの電気料金を、5段階で上げていき、もっとも消費する時には160円/kWhと10倍高くした。その結果、ピーク時の消費量は16%下がった。これは、デマンドレスポンスと呼ばれる仕組みで、日本以外でも、欧米の先進国で行われている」と説明した。

 その上で、原発をやめてどうするかに関して、「その議論は必要ない。その対策は、節電で十分である。節電すると得になる料金体系をつくれば、電力消費を減らせる。そうすれば、原発はいらない。それから自然エネルギーを徐々に伸ばしていけば、解決する。ロジックにごまかされてはいけない」と述べ、節電について、きちんと考えることの重要性を示した。

エネルギーの流れを変えて、お金に困らない社会に

 「わが家では、電力会社のメーターがなくなった。太陽光発電にバッテリーを導入して、自給できる仕組みを作った。今は、電力会社の電気とは繋がっていない」と、自宅の電気に関する取組みを語った田中氏は、「たかが電気に命をかけるのは、馬鹿げている。原発に頼らなくても、やっていける時代が来た」と力を込め、電気の自給自足が可能であるとした。

 さらに、「未来は、家庭の電気製品を省エネ製品にして、そこに太陽光発電で電気を入れる。余った電気はバッテリーにプールし、さらに余ったら電気自動車にプールし、自給していくのが当たり前になる」と、将来の電気のあり方に言及した。

 世界で貧富の格差が広がることについて、田中氏は「お金を稼ごうという競争に入るより、お金に頼らない部分を広げていくことが大事。再生可能エネルギーで電気料金も無料、やがてはガソリン代もなくして、お金に頼らない部分を広げていくことが、セキュリティにつながる」と話す。

 「ブラック企業に勤める若者の平均年収が168万円と言われるが、彼らはお金のために奴隷にならざるを得ない。この状況を変えるには、私たちが『お金がなくても困らない社会』を作っていくこと。お金とエネルギーの使い方を変えてしまうことができれば、未来は変わる」。

 そして、私たちが何をすべきかについて、田中氏は「未来を、自分たちの側から作るのか。それとも傍観して、評論家になって、『だめだな、この国は』と言って終わるのか。それによって、未来の子どもたちの暮らし方が変わる」と述べて、国民が暮らし方を意識していくことで、未来は変えられると主張した。

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