23日、「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針案に係るパブリックコメントの受付が締め切られた。市民らが主催した院内集会で30日、復興庁の阿部直樹政策調査官は、「寄せられた4900件のうち、最も多かった意見は放射線の影響による健康調査、支援対象地域、就労、住宅、パブコメ等の手続きについてだった」と報告した。
(IWJ・ぎぎまき)
23日、「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針案に係るパブリックコメントの受付が締め切られた。市民らが主催した院内集会で30日、復興庁の阿部直樹政策調査官は、「寄せられた4900件のうち、最も多かった意見は放射線の影響による健康調査、支援対象地域、就労、住宅、パブコメ等の手続きについてだった」と報告した。
■ハイライト
集約したパブコメは従来、関係省庁が回答を添えて公開するのが一般的だ。しかし市民らは、「法律に書かれた通りに対応して下さい」と、通常の手続きで済ませず、被災当事者を加えた形で検討過程を公開するよう要請した。その理由は、同支援法の第14条には「内容を定める過程を被災者にとって透明性の高いものにするために必要な措置を講ずる」と書かれているからだ。
しかし、阿部政策調査官は難色を示した。これに対し静岡県に自主避難をしている長谷川克己氏は、「被災当事者に対し説明をしないという姿勢は、全く理解できない。投げた意見に対し、キャッチボールができないのは遺憾。一方的に情報を流すのは正義のない行為だ」と批判した。
今回、パブコメを提出したのは個人だけではない。千葉県、茨城県、宮城県など、汚染対処特措法で重点調査地域に指定されてる自治体の多くが、復興庁の基本方針案に対し意見書を提出している。
汚染状況重点調査地域とは、放射線量が1時間当たり0.23マイクロシーベルト(年間1ミリシーベルト)以上あり、環境省が重点的に汚染状況を調査測定する必要があるとして配慮した地域を指すが、中には基本方針案の中で支援対象地域に指定された福島県内の33市町村よりも線量が高いホットスポットもある。これらの地域が支援対象になっていない理由を聞かれた阿部政策調査官は合理的な回答を示せず、「今後、見直しをしていくプロセスの中で検討する」と補足するに留まった。
重点調査地域に指定されている千葉県流山市の阿部はるまさ市議会議員は、「普段、中央省庁の指示を実行する自治体が、国に対し厳しい意見書をあげるのはよほどのこと。基本方針案がこのまま閣議決定されれば、今後大変なことになるのでは」と、矛盾だらけの基本方針案のまま閣議決定しないよう釘を刺した。
その他、住宅や健康支援についても、厚生労働省や環境省に対し疑問が投げかけられたが、各省庁の担当者は「いただいた意見は持ち帰ります」という回答に終始。これに対し、「権力を利用して逃げ切ろうとしているのではないか」という厳しい声も上がった。基本方針案の策定を一年以上も放置し、支援を怠ってきた政府に対する被災当事者の本音だ。
「早ければ10月の中旬に閣議決定をするのでは」、という懸念の声があがる中、法律に準じた手続きを踏まず拙速な判断を下そうとする政府に対し、市民らは怒りをあらわにするとともに、深いため息を漏らした。