【IWJブログ】9月23日(月曜日)がリミット!「原発事故・子ども被災者支援法」パブコメ提出期限迫る ~岩上安身緊急投稿+FoE Japan満田夏花氏による特別寄稿掲載 2013.9.22

記事公開日:2013.9.22 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文責・岩上安身)

■明日9月23日(月曜日)、パブコメ提出期限迫る

<パブリックコメントの提出先>

※書式等、意見の提出の仕方は、以下のHPを参照

【緊急投稿】
■「国会の良識」とまで言われた法律が、官僚によって骨抜きに

 「原発事故子ども・被災者支援法」のパブコメの締切が9月23日(月)に迫っています。当初、実施期間は2週間とされましたが、抗議の声が集中し、復興庁は10日間の延長を決定。延長されたのは評価できますが、骨抜きのまま閣議決定される恐れが指摘されています。

 「原発事故子ども・被災者支援法」(以下、子ども被災者支援法)とは何か。福島原発事故後、被曝の影響を心配し、政府が定めた避難区域外から自主的に避難する市民が後を絶たず、残る者、避難する者の間で対立が生まれ、コミュニティが分断される事態が起きました。

 そんな中、被災者支援を行ってきた市民団体や弁護士が中心となり、国会議員と協力して生まれたのが、「子ども被災者支援法」。同法は、2012年6月21日、全会派・全国会議員の賛成のもと、国会で採択された議員立法です。

 支援法の「目的」には、「放射線が人の健康に及ぼす危険については科学的に十分解明されていない」ことを前提に、被災者が自らの意思で「居住」「避難」「帰還」の選択ができるよう、国が支援を行うと明記されています。

 しかし、支援法は理念や枠組みのみが規定されている、いわゆる「プログラム法」であり、支援対象地域の範囲や支援の具体的計画などを含む「基本方針」を政府が定めなければ、この法律を運用することができません。

 基本方針を策定するにあたって国は、被災者の声を聞くための公聴会を開くことが義務づけられていますが、復興庁はヒアリングの場を一度も設けないまま、今年3月、一方的に「被災者支援施策パッケージ」を発表。その内容は、同法の主旨から逸れていると批判が相次ぎました。

 そして6月に起きたのが、復興庁元幹部による「ツィッター暴言問題」。基本方針の取りまとめに当っていた水野靖久元参事官が、市民団体が主催した集会での被災住民の声に対し、「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席」とツィート。復興庁が謝罪する事態に発展。

 そのほか、水野氏のツィート問題によって、復興庁を始めとする関係省庁は、支援対象範囲の線引きを参院選後まで先送りすることで合意していたことが発覚。政府が基本方針の策定を棚上げしてきたことが明るみとなりました。

 そして8月21日、1年以上も支援法に基づく基本方針を定めないことは違法であると、原発事故被災者19人が国を提訴。提訴後の記者会見には、部屋に入りきらないほどの報道陣がつめかけました。記者会見の記事はこちらをお読み下さい。↓

 直後の8月30日、復興庁は突然、これまで放置してきた「基本方針案」を発表。しかし、その中身は3月の「支援パッケージ」を踏襲したものがほとんどで、短いパブコメ期間についても市民らは猛反発。緊急記者会見が開かれました。

 被災者支援を続けてきたSAFLANの大城誠弁護士は記者会見の場で、「1年以上も放置した挙句、骨抜きの基本方針案を出してきた。歓迎のコメントを出せる心境ではない」と語り、「こんな基本方針ならない方がいい」と憤る自主避難者もいたほど。

 被災者や支援者、議員、弁護士らは、復興庁に対し強く抗議。全国各地での公聴会開催や基本方針案の抜本的見直し、パブコメ期間の延長を求めました。これに対し政府は、パブコメの締切を10日間延長しましたが、方針案の見直しには応じず「撤回はしない」と回答しています。

 復興庁が示した基本方針案の最大の問題は、被災者の声に耳を傾ける責任を放棄し、「放射線の影響については科学的に十分に解明されていない」という同法の理念を無視して、一方的に支援対象地域を福島県33市町村に限定したこと。

 基本方針案で示されている施策の中身も、全施策120のうち87の施策が「支援パッケージ」と全く同じもので、残りの26についても、大半は「子ども被災者支援法」が最も重要だと位置づけている「避難の権利」を保障するものではない、と批判の声が相次いでいます。

 9月23日にパブコメは締切られますが、「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針案をめぐる問題点について、FoE Japanの満田夏花氏に寄稿していただきました。以下、ぜひご覧いただければと思います。(岩上安身)

―――――――――――――――――――――――――

【特別寄稿】
被害者支援の第一歩だったはずなのに… ホネぬきにされる「原発事故子ども・被災者支援法」法の理念無視、被災者の声不在…復興庁の基本方針案

 「原発事故子ども・被災者支援法」――。

 原発事故被害者の救済と権利回復のための第一歩となるはずだったこの法律が、ホネぬきにされようとしています。

 8月30日、復興庁は、「原発事故子ども・被災者生活支援法」実施のための基本方針案を発表しました。当初、9月13日まで、わずか2週間のパブリック・コメント(一般からの意見聴取、以下パブコメ)にかけるとしていましたが、高まる抗議の声に10日間延長しました(締切9月23日)。

 「子ども・被災者支援法」は、2012年6月22日、全国会議員の賛成のもとに制定されて以来、1年2か月もの間、「塩漬け」状態になっていました。背景には、避難を阻み、帰還を進めたい福島県と国の思惑があります。今年、8月22日には、原発事故被害者19人が国を相手取って、同法の実施を求め、提訴を行いました。そのわずか8日後、復興庁は、度重なる被災者や市民団体からの要請に一切答えることなく、基本方針案を公表。被災者・市民の意見が実質的に反映されていないこと、法の理念とは程遠いこと、既存の施策の貼り合わせであることなど、問題の多いものとなっています。形だけのパブコメを行い、このまま閣議決定することを許してはなりません。

「原発事故子ども・被災者支援法」とは

 20mSv撤回運動、自主的避難の賠償問題、避難区域設定…。福島原発事故後、被ばくの影響を過小評価し、住民を福島に縛り付けようとする政府と市民の攻防は一進一退を続けました。いかに市民が声をあげようと住民が切実な被ばくの問題を訴えようと、政府は動きませんでした。そんな中、心ある国会議員と市民、弁護士グループの力で、原発被害者のいのちと暮らしを守るための立法が進められました。これが「原発事故子ども・被災者支援法」です。

 2012年6月21日、全会派・全国会議員の賛成のもと、国会で採択されました。第一条の「目的」に「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分解明されていない」と明記。これに鑑みて、「居住」「避難」「帰還」の選択を被災者が自らの意思で行うことができるよう、国が支援を行うことになっています。具体的には、医療の支援、移動の支援、移動先における住宅の確保、学習等の支援、就業の支援、保養などです(第五条)。

 また、特に子ども(胎児含む)の健康影響の未然防止、健康診断および医療費減免などが盛り込まれています(第十三条)。

「基本方針」で実施を担保/鍵にぎる「支援対象地域」

 「子ども・被災者支援法」は、いわゆる「プログラム法」であり、理念や枠組みのみを規定したものです。

 政府は、支援対象地域の範囲や被災者生活支援計画などを含む「基本方針」を定め、その過程で、被災者の声を反映していくと規定されています(第五条)。支援の範囲は、いままでの政府指示の避難区域よりも広い地域を「支援対象地域」として指定し(第八条第一項参照)、そこで生活する被災者、そこから避難した被災者の双方に対する支援を規定しています。いままで、市民団体や弁護士グループ、心ある専門家は、国際基準や国内法令が、公衆の被ばく限度を年1mSvを基準としていることを踏まえ、少なくとも追加被ばく量年1mSv以上の場所を支援対象地域に含めるべきだと要請してきました。

法の理念を無視した復興庁の基本方針案

 ところが復興庁の基本方針案は、このような法の理念を無視しています。

 基本方針案の「I.基本的方向」には、「放射線による健康不安を感じている被災者や、それに伴い生活上の負担が生じている被災者に対し、本基本方針に基づく、支援を着実に推進し、被災者が安心して生活することができるようにする」としていますが、放射線被ばくの影響は「不安」だけで片付けられるものではありません。子ども被災者支援法を特徴づける下記の目的や理念は無視されてしまっています。

・放出された放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと(第一条)
・健康被害を未然に防止する観点から放射線量の低減及び健康管理に万全を期すること(第二条)

「線量基準」を放棄/「支援対象地域」は狭すぎる上に、支援内容ほとんどなし

 「支援対象地域」は福島県内33市町村としています。子ども・被災者支援法の規定を無視して、線量を基準にしていません。あまりに狭すぎる上、これに対応した具体的施策はほとんどなく(※1)、意味がありません。

※1-復興庁は、支援対象地域向けの施策として、1)子ども元気復活交付金(原発事故の影響により人口が流出している地域において、全天候型運動施設等の整備や、プレイリーダーの養成などのソフト事業の実施を支援)、2)公営住宅の入居の円滑化、3)高速道路の無料化――としています。しかし、2)に関しては、家賃補助もなければ、優先入居もなく、既存の公営住宅法の適用のみです。3)は、すでに今年の3月に打ち出された施策です。福島県の中通り、浜通りプラス宮城県の丸森からの母子避難者が対象と限定的です。さらに、「準支援対象地域」が設定されていますが、これは既存の政策それぞれの適用地域を呼び換えただけのものです。

 施策の中身を見ると、全施策120のうち87の施策が、今年3月15日に公表された被災者支援パッケージと全く同じで、既存の施策の寄せ集めになっています。また支援パッケージには入っていなかった施策でも、少なくとも7施策が以前からある施策。残りの26施策も、大半は除染と健康不安の解消に関わるもので、最も重要な「避難の権利」を保障する避難者支援策は全くありません。

 福島県県民健康管理調査の問題点については手つかずです。多くの専門家や市民は、甲状腺癌や生活習慣病のみをターゲットとした現在の福島県県民健康管理調査の見直しを求めてきました。ニーズが高かった県外における健康対応については、「有識者会合を設置して検討」とするにとどまっています。

市民にできること

 この大問題の基本方針案は、「一定の線量以上」の地域を支援対象地域に指定するという第八条から逸脱しています。政府は、「一定の線量」を決める際には、年1mSvにすべきという世論の圧力をかわすため、「一定の基準」を定めず、うやむやにするという腹です。

 また、被災者の声が実質的には何一つ反映されていません。このこと自体、被災者の意見を反映するとした法の規定に違反します(第十四条)。わずか24日間のパブコメ期間中、説明会は福島県で1回、東京で1回。全国に避難している原発被害者は、このこと自体知ることができない人がほとんどでしょう。できればお住まいの自治体に、わが県(または市)で、基本方針に関する「公聴会」を実施してほしいという要請を国に挙げもらいましょう。

 また、ぜひパブコメを出しましょう!まわりの人にも広めてください。

基本方針をめぐるQ&A(パブコメ提出情報も入っています)

原発事故子ども・被災者支援法をめぐるアクションや最新情報、パブコメ情報は、随時「避難の権利」ブログで紹介していますので、ご参照ください。(満田夏花/FoE Japan)

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「【IWJブログ】9月23日(月曜日)がリミット!「原発事故・子ども被災者支援法」パブコメ提出期限迫る ~岩上安身緊急投稿+FoE Japan満田夏花氏による特別寄稿掲載」への1件のフィードバック

  1. 安東民衛 より:

    わたくしは、反原発官邸前集会に毎回参加しているものです。本日(9/23)、「原発被災者支援法」に対するわたくしの意見を復興庁にメール送付しました。そのコピーを以下に添付します。ご批判等をいただければ幸いです。

    (1ページ目、「I. 基本的方向」全文)
    (意見)
    この基本方針の作成目的として以下の5点を明記すること。
    1. 「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(平成二十四年六月二十七日法律第四十八号)、以下“原発被災者支援法”という。」に基づくものであり、
    2. その第二条で規定する基本理念に則り、
    3. 第三条で規定する国の責務として、
    4. 第四条に規定する法制上または財政上等の措置を講じるために、
    5. 第五条に規定する基本方針をより具体化することを目的とする。
    (理由)
    案文では基本方針の作成目的が不明確である。上記5点は基本方針作成のよって立つべき原点である。

    (1-2ページ目、「II.支援対象地域」全文)
    (意見)
    2011年3月11日以降の1年間の追加的被ばく量が1ミリシーベルト以上と推定される全ての地域を無条件に支援対象地域に指定すること。
    (理由)
    放射線障害防止法は一般人の被ばく限度を1ミリシーベルト/年と規定している。提示されている案文では、対象地域指定の根拠が明確に示されていない。その一方で、あたかも年間積算線量20ミリシーベルトが危険限度であるような印象を与える記述がなされている。原子力規制委員会が7月24日にパブリック・コメントにかけた「核燃料施設等に係る新規制基準骨子案」では、一般公衆及び放射線業務従業者に「過度の放射線被ばくを及ぼすことのないようにせよ」との規定で、「過度の放射線被ばく」とは5ミリシーベルト超と書かれている(再処理施設設計基準)。この5ミリシーベルトという数値は多くの心ある人々から厳しく批判された。その数値の4倍にあたる20ミリシーベルトを本案に記載するとは、復興庁法制班はいったい何を考えているのかといいたい。

    (2-12ページ目、「III.被災者生活支援等施策」一部)
    (意見)
    以下の点を明記すること。
    1. この基本方針は、支援対象地域および住民を対象にするものであって、この方針に基づき講じられる財政上の措置をこの対象以外の事業に流用してはならない。
    2. 支援対象地域の在住者および避難者双方に対して、避難・保養・検診のための移動、および原発事故による二重生活に伴う移動に必要な費用を無条件に全額支援する。
    3. 希望者に対して、民間・公営賃貸住宅の斡旋を支援し、その賃貸費用を生涯にわたり全額支援する。
    4. 放射線障害による疾病の予防と早期発見を目的とする国の常設専門医療機関を設立し、甲状腺がん以外の疾病も想定した検査・診療・治療、および長期間にわたる疫学調査・研究を実施すること。また、支援対象地域の住民の負担する検査・診療・治療費用は生涯にわたり全額無料とすること。
    (理由)
    ・上記第1項は、法の適用範囲に関する原発被災者支援法の大原則である。しかし、提示されている案には原発被災者支援法の対象外とすべき項目が含まれていて、「復興」を名目とした国費の流用が懸念される。例えば、「3.被災者への支援 (1)医療の確保、4ページ」地域医療支援センター運営経費により、全国30道府県に設置された本センターを支援; 全国において健康診査や健康相談の機会を通じた生活習慣病対策を推進、等である。
    ・第2項および第3項は、原発被災者支援法第二条第1項の基本理念および第九条に規定する「援対象地域以外の地域で生活する被災者への支援」に対応した規定である。
    ・第4項は、原発被災者支援法第二条第1項の基本理念に基づく規定である。

    以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です