第10回「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール 中塚明氏講演 2013.6.30

記事公開日:2013.6.30取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2013年6月30日(日)13時から、東京都渋谷区の女性センター・アイリスで「第10回『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナール」が開かれた。今回は、中塚明氏(奈良女子大学名誉教授)の講演が中心となり、題目は「歴史を踏まえずして未来を語れるか ―江華島事件から『慰安婦』問題へ、そしていまの日本―」であった。

■ハイライト

 講演に先立ち、ゼミナール副代表を務める大森典子氏が、橋下徹大阪市長(日本維新の会)による慰安婦発言について意見を述べた。大森氏は「『慰安婦制度が必要だったことは誰でもわかる』という、5月13日の橋下発言は、その歴史認識の部分で、それまでの安倍晋三首相の主張と根が同じ」と指摘。「安倍氏も『強制連行した証拠がない』との立場だった。だが、橋下発言に世間が嫌悪感を示すと、安倍氏は国会答弁で『自分の考えとも自民党の考えとも違う』と表明した。本人にとっては自己保身、橋下氏にとってはトカゲの尻尾切りだ」と話した。

 そして、安倍首相のみならず、稲田朋美内閣府特命担当大臣(自民党)の豹変ぶりに対しても、「自分たちの本音を隠して参院選を乗り切り、憲法改正へと突き進もうとしているのではないか」と批判し、次のように強調した。「今般の慰安婦発言の問題は、橋下氏固有のものではない。安倍政権全体の問題であると、ぜひ認識してほしい」。

 さらに、大森氏は「慰安婦発言に抗議が殺到すると、橋下氏は論点をすり替えて、一般受けするように言い回しを変えている。だが、核心部分にあるのは、相変わらず『強制連行した証拠がない』との歴史認識に根ざした『日本政府に責任はない』との考え方だ」と語り、「5月13日の発言や米軍司令官への風俗活用の進言は、海外にも波紋を広げた点で注目されやすいが、慰安婦問題を考える上で重視してほしいのは、第3の発言とも言える『強制連行した証拠がない』だ」と力を込めた。

 続いて登壇した中塚明氏は、まず、「橋下氏が訪米できなかったのが、今回の騒動を象徴している。安倍氏もそうだが、彼らの主張は国外では通用しない」と話し、外交が困難との理由で、「安倍・橋下の両氏に未来はないと思っている」と明言した。その上で、「しかしながら、2人の主張が、日本国内では支持を集めてしまうのも事実。今日は、なぜ、そうなのか、という視点で議論しようと思う」と述べて、講演をスタートした。

 「植民地支配下では、弱者に有無を言わせない強制力が、制度として存在する」。こう切り出した中塚氏は、1975年、「戦時の強制労働」をテーマに東北地方を調査した際の話を紹介した。「細倉鉱山(宮城県・1987年閉山)で労働を強いられた、数人の在日朝鮮人に会うことができた。そのうちの1人が『自分は喪家の狗(そうかのいぬ=喪中の家で世話をされず、やせ衰えた犬。転じて、ひどくやつれて元気のない人の意味)だった』と吐露した。日本に強制連行された朝鮮人は、いかなる仕打ちを受けようとも訴える先がなかった、ということだ」。

 その上で中塚氏は「私がこういう話をすると、『そんなことは、どの国もやっている』と切り返す人たちが必ずいる。では彼らが、こうした歴史について知っているのかといえば、何も知らない。『どの国もやっている』という便利なひと言で済ませているだけだ」と、静かに怒りを表明すると、朝鮮問題の起点ともいえる「江華島事件」へと話を移した。

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