「中・高教育の場に世界中の立憲主義の歴史を」 幅広い憲法の理解が必要と多数の指摘 ~「立憲フォーラム」第5回 96条先行改憲に反対する連続講演会 2013.6.12

記事公開日:2013.6.12取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

特集 憲法改正
※全文文字起こしを会員ページに掲載しました(6月17日)

 「教育がこれからのキーになる。世界各地の立憲主義の歴史を、中学・高校の授業でどれだけ教えるかが、正念場になるのではないか」。自民党の改憲案に反対し、先月立ち上がった「96条の会」の千葉眞氏は、2013年6月12日(水)、東京都千代田区の参議院議員会館で開かれた「立憲フォーラム」第5回でこのように述べ、「今の教育行政は『逆』を行こうとしている」と指摘した。

■ハイライト

  • [講師]
  • 96条の会 長谷部恭男氏(東京大学教授(憲法学))、千葉眞氏(国際基督教大教授(西欧政治思想史))
  • 日弁連 憲法委員会副委員長 福山洋子氏(弁護士)
  • 明日の自由を守る若手弁護士の会 事務局長 早田由布子氏(弁護士)
  • 自由人権協会(JCLU)理事 井桁大介氏(弁護士)

 立憲主義を守る超党派の議員連盟「立憲フォーラム」の勉強会は、この日で5回目となる。早田由布子氏、井桁大介氏、福山洋子氏、長谷部恭男氏、千葉眞氏の5名がスピーチを行い、それぞれが所属する団体の活動状況や、自民党の改憲案、96条先行改正案に対する見解を述べた。

 明日の自由を守る若手弁護士の会は、今年1月に発足した。事務局長の早田氏は「昨年末の政権交代で、自民党の憲法改正案が現実のものとなることに危機感を抱いたのが、結成のきっかけ」と述べた。メンバーは弁護士になって2〜3年目の若手を中心に構成され、結成当初は26名だったが、今では250名の弁護士が参加している。早田氏の元に、「そもそも、憲法と法律とは何が違うのか。立憲主義がわからない。中学・高校で習っていない。言葉すら聞いたことがない」という声が多く寄せられたことから、憲法をテーマとした紙芝居(王様をしばる法 ~憲法のはじまり~)を作るなどして、憲法に対する理解を広めている。

 自由人権協会は、1947年、自由と人権の確立を目的として設立され、弁護士、大学関係者、市民など477名の会員で構成されている。自民党改憲草案について、「自由、人権に対する脅威となりうる」と判断した同会は、HP上で「憲法Q&A」のコーナーを開設。改憲案の危険性を個別具体的に解説することで、警鐘を鳴らしている。「立派な法律は、だいたい全会一致で成立している」と話すのは、同協会の井桁氏。「それを、すっ飛ばして96条を改正しようとするのは、議論としてどこかおかしい」。

 自民党は96条改正の目的について、「国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまう(日本国憲法改正草案 Q&A )」と説明している。これに対し井桁氏は「国民の意見をなるべく組み上げようとするなら、発議要件は『国会議員の4分の1』や『国民の一定数の署名』などもありうる。そういった選択肢を除いて、『与党だけで発議できる数』を変えようというのは、『国民の意思を反映する』という目的からもおかしい」と批判した。

 日弁連の憲法委員会は、国会に憲法調査会ができたことを契機に、2001年に設置された。2005年に鳥取で開いた人権大会では、「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」を採択し、2008年には富山で「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」を採択。また、日弁連は今年3月、「憲法第96条の発議要件緩和に反対する意見書」を衆参両議院の議長と各政党代表者に提出している。

 福山氏は「自民党が憲法改正を言い出してから、逆に、立憲主義という言葉が国民に浸透した。改憲草案がおかしいと理解されるようになったのは、いいことだ。今の憲法が、何から何を守っているのかを、伝えるのが法律家の役割だ」と、改憲問題に取り組む弁護士としての姿勢を明確にした。

 5月に立ち上がったばかりの96条の会。千葉氏は「立憲主義は、歴史的生成物として、古代から世界各地に存在したが、特に重要なのはヘンリー・ブラクトンが『自由の構成』と称した『マグナ・カルタ(英国大憲章)』だ」と主張した。マグナ・カルタ以降、近代に至るまで、立憲主義は『自由のさらなる拡張と進化』といった一定の方向性を持って、『自由の構成』がさらに進んでいくという意味合いをもっている」と述べた。

 「憲法や人権はさらに増大し、進化し、広がっていく。例えば、アメリカ憲法は修正条項が入っているが、各時代の要求に応じて、人権や自由、平等権がさらに拡大し、進化することを想定している。また、戦後に制定されたドイツの『ボン基本法』は、二度とファシズムを許さないという決意をもとに、『戦う民主制』の理念が保持された。『自由な民主的基本秩序』にコミットしたものだ。ドイツの憲法改正は、この大原則に対しては、いささかの変更も許していない」。こうした観点から、千葉氏は「自民党の改憲案は『自由のさらなる拡張と進化』という立憲主義の方向性に逆行したものだ」と批判した。

 質疑応答では、参加者から「日本国民の憲法のとらえ方は、あまりに明治憲法の影響が強すぎ、戦後になってからも治っていないのではないか。これを改善するためには、教育内容まで変えていく動きがなければならないのではないか」と問題提起があった。

 これに続いて、立憲フォーラムの立ち上げ人のひとりである、民主党の辻元清美衆議院議員も、教育分野に対する懸念を示し、次のように語った。

 「いきなり憲法に手をつけようとすると、危機感の強い人たちの輪も広がる。じりじりと、見えないところで進行しているのは、官邸、文科省主導の『学校教育における教科書検定のあり方』の変更。われわれは、立憲主義を教育に盛り込みたい側だが、政権を取っていない。自民党の憲法改正案に理解を示すような、または染まりやすい子どもを作るような、外堀を埋める動きは着々と進められている」。

 こうした発言を受けた千葉氏は、「教育がこれからのキーになる」と認め、「中学・高校で、どうやって立憲主義を教えるかが、正念場になるのではないか。世界各地の立憲主義の歴史を、授業で教えなければならない。教育が重要な役割を担っているのに、今の教育行政は逆を行こうとしている」と述べ、教育分野における憲法授業の重要性を説くと共に、それに逆行する現状に対して懸念の意を示した。

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