「戦時中、慰安婦制度は、悲しいことではあるけれども、合法であったということは事実だと思う」――先日、橋下徹大阪市長の慰安婦をめぐる一連の発言に関して「慰安婦制度は女性に対する重大な人権侵害だ」と述べた稲田朋美行政改革担当大臣は、この日の定例会見で、戦時中、従軍慰安婦制度は合法だったとの見方を示した。
稲田大臣は「合法だという言い方をすると、人権侵害ではないと受け止められるかもしれない。しかし、今であろうと戦時中であろうと、(慰安婦制度が)女性に対する人権侵害であることに変わりはない」と語り、慰安婦制度は合法でありつつも女性の人権を犯すものであるとの見解を示した。
- 日時 2013年5月24日(金)
- 場所 内閣府(東京都千代田区)
以下、IWJと稲田大臣との質疑応答書き起し
IWJ平山「インターネットメディアIWJの平山と申します。初めて会見に参加させていただきます。よろしくお願いいたします。これまで再三話にでているようで恐縮なんですけれども、橋下市長の慰安婦に関する一連の発言について大臣のご見解を改めて確認させていただきたいと思います。
大臣は以前の定例会見で『慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害だと思っております』と発言されていらっしゃいますが、他方で、大臣は昨年8月の産経新聞で、『慰安婦を強制連行した事実はなく、当時は慰安婦業は合法だった』、という旨の論説文を寄稿してもいらっしゃいます。
現在の大臣のご見解として、戦時中に慰安婦の強制連行はやはりなかったというご認識に現在もたっていらっしゃるのかということをまず確認させてください。
それから、先日の会見での『慰安婦制度は女性の人権に対する大変な侵害だ』というご発言は、慰安婦の強制連行はやはりなかったという認識に基づいたうえでのご発言だったのか、あわせて大臣のご見解をおうかがいしたいと思います。よろしくお願いいたします」
稲田大臣「河野談話に関する慰安婦の問題に関しては、官房長官のもとで検討されておりますので、私が所管外のことについて発言することは差し控えたいと思います。
ただ、前回私が申し上げた、『慰安婦制度が女性に対する重大な人権侵害である』ということは、現在であれ、たとえ戦時中であれ、同じだと思います。ただ、戦時中は、慰安婦制度が、悲しいことではあるけれども合法であったということも、また事実であると思います」
IWJ平山「つまり、今も、慰安婦制度は合法であったというご認識だということなのでしょうか」
稲田大臣「合法であったという言い方をすると、人権侵害ではないと誤解されると思うので、今であろうとも、戦時中であろうとも、女性の人権に対する重大な侵害であることに変わりはないと私は思います」
稲田大臣が合法だと言っているのは1946年に廃止された公娼制度のことでしょうけれども、日本軍慰安婦はこの公娼の範疇には入りません。当時の公娼制度は娼妓取締規則(朝鮮では貸座敷娼妓取締規則)に基づいておこなわれており、娼妓になろうとする場合、自ら警察に出向いて届出をしなければならず、かつ官庁が許可した場所以外での売春は禁止されていました。日本軍慰安婦は警察に届出もしていなければ、慰安所は「官庁の許可したる貸座敷」でもありませんでした。したがって「戦時中の慰安婦制度」は違法でした。
ただし、韓国人慰安婦への補償は韓国政府がおこなうべき問題でした(実際おこなっていますが)。1963年にベトナムで死亡した韓国人元慰安婦の遺産相続問題で韓国政府は慰安婦について認識しており、かつ、日韓基本条約の交渉の過程で日本からの経済協力金を韓国政府が一括して受け取り個人補償をおこなうことで合意していましたから。