2023年7月6日(木)午後6時より、福島県会津若松市の会津若松市生涯学習総合センター(会津稽古堂 多目的ホール)にて、「ALPS処理水」の海洋放出に関する会津地方住民説明意見交換会が開催された。
ALPS処理水、および海洋放出に関する説明に招かれたのは、経済産業省エネルギー庁参事官・木野正登(まさと)氏、東京電力リスクコミュニケーター・木元崇宏(たかひろ)氏。
始めに実行委員会・千葉親子(ちかこ)氏より、この意見交換会開催に至った経緯が述べられた。
「岸田総理は、IAEA・グロッシ事務局長と面談し、福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐる評価報告を受け取った。
面談後の会談で、岸田総理は国際社会の責任あるリーダーとして、日本や世界の人々の健康や環境に悪影響のある放出を認めることはないと述べていた。
グロッシ事務局長は、今回の報告について科学的で中立的なものだと強調し、さらに日本が次のステージに進む決断を下すのに必要な要件が全て含まれていると説明したと報道されている。
私たちは実際、処理水と言われている汚染水について、安全安心の繰り返される報道のキャンペーンの中で、実際には何も知らされていなかったのではないか、
どのようなデータを使って安全安心と言っているのかさえも公表されていない中、本当にいいんですか? みんな納得しているんですか? の思いが集って、今日の回となった」
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続いて、経産省・木野氏、東京電力・木元氏より各15分づつ、ALPS処理水と海洋放出についての概要説明があった。
「原子力建屋で燃料デブリに触れた冷却水に地下水が入り込むことによって、汚染水として増えている。今でも1日約90トンずつこの地下水が入り込むことによって汚染水と変わり、その汚染水が増え続けているという状況。
これをALPS(多核種除去設備)という装置を使って、規制基準を下回るまで浄化処理した水がALPS処理水というもので、タンクの水はしっかり分析する。東京電力のみならず、国とそして民間の第三者機関の3つの機関が分析をする。
先月、タンクの水の分析結果が出た。規制値というのも満足しているということを、3つの機関が確認した」
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「機械/浄化装置を使って、国の基準被害を満足する形まで浄化をするというのが、前提となっているのがALPS処理水。
その汚染に対する安全確保の方策だが、十分な海水の量を使って浄化ができないトリチウムにこれを希釈をして、安全であることを確認した上で放出するというもの。あとはその放出した後、回帰問題(日本近海に戻ってくる)による運用・モニタリングも行い、わかりやすい形で排出するいうのが大前提」
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続いて5人の質問者からの質疑応答、会場参加者からの質疑応答があった後、実行委員会・片岡輝美氏からの意見・訴えがあった。(2:13:16~)
「IAEAの報告書は本当にお墨付きなのかということ。太平洋諸島フォーラムの依頼を受けて東電からのデータを受け、5名の科学者が評価分析を行い、昨年の8月に覚書を出した(※)。
結論の一つとして、タンク内の特定の方向の放射性核種に関する東電の知識は、深刻なほど不十分である。東電の測定方法は、統計的に偏っていると評価した。
そしてもちろん代替案も出している。この書簡では、IAEAに対して東電の放出計画を中止させようというもの。
IAEAは、安全と放射線防護に関する要求事項や、ガイダンスなどの基本的な情報を定めているけれども、この海洋放出計画はこれらのいくつかに違反していると言っている。
安全ではない、だからやめるべきだ。そのように言うべきで、さもないとIAEAの国際的な信頼は失墜すると言っている」
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最後の訴え(聞き取りのまま)(2:22:17~)
「まず廃炉の行き先を国会で審議し法律化を進めることが、汚染水の海洋投棄よりも先に行うべきことです。
廃炉作業員の被曝方法を確保し、国内外の市民や子どもたちをご無用の被曝にさらさない。科学的な倫理的な観点からの廃炉計画の効率化を求めます。
最後です。私たちは被害者です。ところが、この汚染水を投棄することによって加害者になってしまいます。
私たちは、この国の人々または諸外国の人々、そして未来世代の放射能被曝を恐れる人々に対する加害者にはなりたくはありません。
この訴えを、確実に国に伝えてください。私たちに説明して、納得してもらったというようなアドバイス取りに私たちを使わないでください。
最後です。私たちは、放射能汚染水の海洋放出計画の即刻の中止を強く求めます。以上です」
- 処理水海洋放出 本当に他の方法ないの?福島・会津若松で住民説明会 「勝手に決めるな」怒り噴出(2923.7.8、東京新聞)
- (※)覚書:福島原発事故により放射能汚染された冷却水の計画的放出に関する科学的状況について、会合で収集された情報・データの概要と専門家パネルの見解(2022.8.11、専門家パネル)(PDF)