2022年4月25日、午後2時30分より、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて、「『福島(生業訴訟)』最高裁上告審弁論期日~国と東京電力に責任を認めさせよう! 最高裁統一行動」として、院内集会、記者会見、および報告集会が開催された。
福島原発事故をめぐり、最高裁は2022年3月2日付けで、避難住民らによる、東京電力への損害賠償集団訴訟で、東京電力による上告を退けた。
最高裁が判断を示したのは、全国で30件以上起こされている集団訴訟のうち、福島県、千葉県、群馬県の3件。これにより、東電の責任は確定した。
一方で国の責任については、この3件のうち、福島と千葉の訴訟ではそれぞれ仙台高裁、東京高裁が賠償を命じたものの、群馬の訴訟では東京高裁が請求を棄却し、判断がわかれている。
この日行われたのは、最高裁が国の責任について統一判断を示すため、国と住民側双方の意見を聞く上告審弁論。原告の住民側は、国の地震予測「長期評価」を軽視して津波対策を取らなかった東電に対し、規制権限を持つ国が「規制当局の役割を果たさなかった」として、責任があると訴えた。
対して国側は、「長期評価には信頼性が低く、対策を指示しても事故を防げなかった」として請求の棄却を求めた。
この日の弁論は、千葉訴訟、群馬訴訟に次ぐ3回目で、5月に愛媛訴訟の弁論が行われ、6月に統一判断が示される予定だ。
この日、飯舘村原発被害者訴訟弁護団は、午前中に官邸前と議員会館前でスタンディング集会を行ない、午後からは最高裁判所正門前で集会と入廷行進を行ったうえで、午後2時半から、最高裁第二小法廷での上告審弁論に臨んだ。
上告審弁論後、午後4時から行われた記者会見で、弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士は、この日の弁論のポイントについて、次のように述べた。
「本日の弁論を終えての総括ということになりますけれども、4事件、言うまでもありませんが、(福島『生業訴訟』と)、群馬訴訟、千葉訴訟、愛媛訴訟とともに、最高裁での、『国に事故に対する責任がある』ということを4事件が分担して、その責任を明らかにするということを、この間、行ってきました。
千葉、群馬に続いて、3件目ということになりますけれども、(中略)ひとつは、『長期評価の信頼性』。この点、つまり、警告が発せられていた。無視できない知見であったと。つまり、『国に責任がある』というところの根拠となる部分。
この点と、それから、長期評価が公表された後の、国と(原子力)保安院の対応、これがいかに不合理なものであったか。端的に言えば、何もしなかった。これも国の責任が問われなければならないことの根拠になる部分。
今回、国が権限を持っていて、その権限は、ひとたび事故があった時には、住民の命や健康にかかわるような被害をもたらす。それほど甚大な被害が起こり得ることから、万が一にもそのようなことがあってはならないと、そのために、国は、権限を持たされている。それを適切に行使しなかったという、その責任を今、問うています。
その中でも、『動かないといけないな』というきっかけに当たる状況下の部分と、結局それをわかった上で、『何もしなかった』という、具体的な責任の根拠になる部分について、今日、二人の弁護士が弁論をしたということになります。
そういう意味では、今回の、この『なぜ国の責任が問われねばならないのか?』という、仙台高裁判決が中心的にとらえていたポイントを、改めて、最高裁でも弁論した。そういった弁論でした」。
馬奈木弁護士はまた、この裁判の判決について、次のように予想した。
「この判決、恐らく、6月に出ることになりますけれども、先ほど申し上げたような『規制の怠り』の意味などを踏まえれば、原子力発電所という、取り扱っている物質の危険性に照らすと、どのような安全性の水準が確保されねばならないのか? あるいは、法令の趣旨、目的に照らして、規制の在り方というものがどのようなものであるべきなのか? そういった事に対して、歴史的な判決が示されることは間違いないと確信をしています。
この原発事故の被害救済の裁判においては、伊方原発の『設置許可の取り消し』のフレーズを度々引用しています。『万が一にも深刻な災害の起こることがないように』というフレーズです。
今回示される判決は、その伊方の最高裁判決と同じように、今後数十年、あるいは百年単位になるかもしれません。規制のあり方、何のために規制の権限を持っているのか? どんな人のどんな利益が保護される利益として、第一義に考えられないといけないのか? そういった歴史的な判決を6月に迎える。
その前提で、5月16日には、今度は、愛媛が続くことになりますし、私たちとしては、三番手としての役割を十分果たして、最後のアンカーの愛媛に託すことができたなと、今日の弁論を全体として評価している。そういうふうに考えています」。
上告審弁論後に行われた最高裁弁論(模擬裁判)、記者会見、および、報告集会の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。