「私たちにとっての力は『市民の参加』です」――イタリアで注目を集める、草の根インターネット運動であり市民政党でもある、五つ星運動のリーダーの一人、リカルド・フラカーロ氏は、多くの市民に五つ星運動が支持される理由をこのように語った。
2017年11月26日(日)13時より、東京都練馬区内にて「五つ星運動のリーダー リカルド・フラカーロさんと語り合う Eデモクラシーとコミュニティの未来」と題する対話集会が開催された。
▲初来日した五つ星運動のリーダーの一人であるリカルド・フラカーロ下院議員
集会ではイタリア下院議員でもあるフラカーロ氏が、五つ星運動の歴史や理念、戦略について、日本の聴衆に向けて語った。その他、元農林水産大臣の山田正彦氏らも登壇。作家で元長野県知事の田中康夫氏、ミュージシャンの三宅洋平氏らも参加した。
- 登壇 山田正彦氏(元農林水産大臣、元衆議院議員)/リカルド・フラカーロ (Riccardo Fraccaro) 氏(イタリア下院議員、五つ星運動)ほか
- タイトル 五つ星運動のリーダー リカルド・フラカーロさんと語り合う Eデモクラシーとコミュニティの未来
- 日時 2017年11月26日(日)13:00〜17:00
- 場所 東京都練馬区内
- 主催 五つ星運動との対話集会実行委員会 (Facebook)
人気コメディアンの人生の危機から生まれた、草の根インターネット・デモクラシー「五つ星運動」
五つ星運動はイタリアの人気コメディアンで、世界屈指のブロガーでもあるベッペ・グリッロ氏と、企業家・政治運動家のジャンロベルト・カザレッジョ氏によって、2009年に開始された市民運動であり、現在は市民政党でもある。スイスで始まった、国家レベルの法律を国民発議と国民投票で決める「直接民主主義
のイタリアへの導入を目指している。
政権批判をしてテレビ業界を干され、仕事を失ったグリッロ氏は、イタリア各地で政治の理想を語るイベントを開催した。持続可能な発展やエネルギー改革などについて語るこのイベントが評判を呼び、多くの市民が参加するようになった。
また、カザレッジョ氏が提案し、グリッロ氏が開設したブログも人気を博し、世界で9番目にアクセスを集める世界的なブログとなった。五つ星運動はインターネットとイベントを通じた、草の根のネットワークを発展させ、地域から支持を拡大していった。
2012年より政界に進出。2013年のイタリア総選挙では、ネット投票による予備選挙で選ばれた候補者を数百人擁立し、約860万票(約25%)を獲得。上院と下院あわせて130名の国会議員を輩出し、野党第1党に躍り出た。翌年、2014年には欧州議会にも進出し、17名の欧州議会議員を当選させた。
ローマ市とトリノ市で2人の女性市長を誕生させるなど、地方選挙でも勝利を重ね、現在2000人以上が五つ星運動から議員になっている。
昨年の世論調査での政党支持率は約29%でトップに躍進。来年のイタリア総選挙では第1党になる可能性も指摘されている。
党名の由来であり、シンボルでもある五つの星は、社会が守り抜くべき概念、「持続可能性のある発展・水資源の重視・持続可能性のある交通システム・環境重視主義・インターネット社会」を指している。
「私の選挙費用は300ユーロ(約4万円)でした」企業献金も政党助成金も受け付けない!議員報酬も「国民の平均年収分」のみ!
この日の集会で、フラカーロ氏は「五つ星運動の最終的な目標は、政権を取ることではありません。『直接民主主義』を導入することです」と述べ、「直接民主主義」を国政レベルでイタリアに導入することが運動のゴールであると説明した。また、五つ星運動の特長を「市民が自分たちの代表をコントロールすることができるシステムです。そして、国の政策に積極的に参加できるシステムです」と語った。
多くの市民から支持を得られた理由として、「伝統的なマスメディアを完全に無視しました。私たちはオンラインだけで活動しているわけではなく、広場で人々と実際に出会って活動しています」と述べ、ネットやSNSを使った活動のみならず、直接市民がコミュニケーションをとる機会を重視していることを明かした。
▲ベッペ・グリッロ氏が始めたイベント「V DAY」(ボローニャ 2007年)
「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表である黒川敦彦氏が、「日本では国政選挙に立候補するためには最低300万円の供託金が必要であり、選挙費用として少なくとも1500万円程かかると言われているが、イタリアではどうか?
と質問すると、「私の選挙費用は300ユーロ(約4万円)でした。イタリアでも選挙にはお金がたくさん必要ですが、私たちはオンラインや道端で人々と話すというシステムを使って、お金のかかる通常の選挙ツールを使わなかったために、安く済ますことができました」と語った。
2013年の総選挙では、市民から30ユーロ(約4000円)という少額の寄付を募って、選挙資金70万ユーロ(約9300万円)を集めたが、選挙には40万ユーロ(約5300万円)しか使用せず、残り30万ユーロ(約4000万円)は地震で被害を受けた小学校に寄付した。
また、五つ星運動は4200万ユーロ(約55億6000万円)の政党助成金を拒否し、大企業からの献金も受け付けていない。議員報酬も「国民の平均年収分」にするという方針により、所属議員の報酬の半分はマイクロクレジット基金に寄付している。
フラカーロ氏は「もし国際的な企業からお金をもらったりしたら、あなたを動かすのはその国際企業になってしまうと、私たちは確信を持っていました。市民があなたを応援しているのなら、あなたの雇用主は市民であるということです」と述べ、五つ星運動が政治資金に関して厳格なルールを定め、お金によって政策が影響されないようにしていることを強調した。
▲聴衆の前で演説するベッペ・グリッロ氏(ローマ 2014年)
フラカーロ氏はイタリアの現状を「政党が目標としていることは、いかに多くの票を得るかということであって、社会を改善することを目的とはしていません。票を得るために汚職をしたりもします」と説明した。
また、「イタリアの新聞・雑誌は多くの場合、政党や企業がコントロールしています。本当に自由で勇気のあるジャーナリストは少数です」と述べ、五つ星運動が急速に支持を広げた背景として、既成政党の腐敗や、政府や大企業にコントロールされたマスコミへの不満がイタリア市民の間で高まっている状況をあげた。
森友・加計問題をはじめ、政治の私物化や公金の使い方が問題視され、多くの国民から疑惑を持たれているにも関わらず、説明責任を果たすどころか国会を解散し、野党の質問時間を削ってまで逃げ回る安倍政権。そして、その政府の無責任な姿勢を厳しく追及しない大手マスコミなど、現在の日本とよく似た状況が、イタリアに五つ星運動を生んだとも言える。しかも、その市民政党が、政権を取る一歩手前にまで迫っているのだ。
五つ星運動の成功は、一人ひとりの市民が自分たちの力を信じ、草の根のネットワークを作って積極的に政治参加すれば、日本でもイタリアと同じ様な変革を起こせる可能性を我々に示していると言える。
IWJでは岩上安身がリカルド・フラカーロ氏に単独インタビューをした他、五つ星運動に関する取材やインタビューを積極的に行っている。ぜひ合わせてご覧いただきたい。また、フラカーロ氏へのインタビュー動画については現在字幕作業をすすめており、12月中旬公開予定である。ご期待いただきたい。
直接民主制は市民が代表者をコントロールし国の政策に積極的に参加できるシステム!~五つ星運動のリーダー リカルド・フラカーロさんと語り合う Eデモクラシーとコミュニティの未来 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/406261 … @iwakamiyasumi
いまの日本に最も足りない部分だろう。学ぶべきアドバイスに溢れている。
https://twitter.com/55kurosuke/status/935263086604251136
フラカーロ氏「もし国際的な企業からお金をもらったりしたら、あなたを動かすのはその国際企業になってしまうと、私たちは確信を持っていました。市民があなたを応援しているのなら、あなたの雇用主は市民であるということです」
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/406261 … @iwakamiyasumiさんから
https://twitter.com/55kurosuke/status/938316933727965184