「死ね」「帰れ」――「国際貢献」の美談のもと行われている外国人技能実習生への醜悪な差別と搾取の実態! 指を失い、都内建設会社から命からがら逃げ出したカンボジア人実習生が奴隷的労働の現実を明かす! 2017.1.25

記事公開日:2017.2.25取材地: テキスト動画独自
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(文:西原良太、取材・記事構成:城石エマ)

 加速する少子高齢化、拡大する経済格差、進まない労働者の待遇改善――。

 労働者の人権を守る砦のはずの労働法制の空洞化の改悪と、事実上の空洞化によって、日本の労働者の多くが、過剰な長時間労働を強いられている。

 この日本の悲惨な労働環境を象徴する事件の一つが、大手広告代理店・電通の新入社員・高橋まつりさんの過労自殺だ。高橋さんは生前、月に105時間以上もの時間外労働を強いられていた上に、上司から「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」などという暴言を受けていたという。

 こうした長時間労働と日常的なパワハラにより、2015年12月25日、高橋さんは社員寮から飛び降り自殺。高橋さんの死は2016年9月30日に過労死と認定され、電通に対する非難の声が急速に高まった。

 また、東京電力社員として福島第一原発事故の賠償業務に携わっていた一井唯史氏が、長時間労働とストレスによりうつ病を発症したとして労災認定を申し立て、2016年10月31日、実名で記者会見を行った。一井氏は2016年11月5日、休職期間が切れたとして解雇された。

 岩上安身はこの件に関し、一井氏に直接インタビューを行っている。インタビューでは、東電の無理な人員配置による過酷な労務管理により、一井氏がうつ状態にまで追い込まれていく過程や、東電の「労災隠し」、さらには日本社会に蔓延する深刻な長時間労働の現状にも話が及んだ。

 長時間労働による労災事例は後を絶たない。三菱電機の31歳の男性は月160時間にも及ぶ残業を強いられた上、パワハラを受けて適応障害を発症、2016年11月24日に過労による労災と認定された。さらに、2016年4月には関西電力の40代の男性社員が自殺。男性は1か月に200時間もの残業をしていたとされ、2016年10月20日に過労死認定された。

 こうした日本の労働環境の酷さは、”KAROSHI”(過労死)という言葉とともに、世界に広く知れ渡っている。

 労働者の人権を無視し、一人の人間を死に追い込む日本の産業界で、犠牲にされているのは日本人だけではない。日本人よりもずっと弱い立場に立たされ、虐げと搾取に耐えているのが、外国人技能実習生(※)だ。

 中国やベトナム、カンボジアなどの労働者は、外国人技能実習制度により来日し、日本人の若者は決して働かないような低賃金で過酷な労働を強いられている。言葉の壁により意思疎通がうまくいかない実習生を見下し、日本の法体系に対する知識不足につけ込み、搾取する悪質な事業者もいる。中には、殴る蹴るなどの暴行を働く者もいる――。

※外国人技能実習生:「理念上はあくまでも教育を受けるために来日しているが、事実上労働関係法令が適用される労働者」という特殊な資格を指す。このため、建前上は教育を受ける立場でありながら、実態は「単純労働者」として扱われることが少なくない。現在、大企業から中小企業、農家まで幅広く受け入れをしている。

 IWJは2017年1月25日、外国人技能実習生の労働問題に取り組んでいる全統一労働組合事務局長の佐々木史朗氏と、実際に都内の建設会社で配管工の技能実習をして劣悪な待遇に置かれ、現在はうつ病のため休職中のカンボジア人実習生の男性にインタビューを行った。

■ハイライト

  • タイトル 「死ね」「帰れ」――「国際貢献」の美談のもと行われている外国人技能実習生への醜悪な差別と搾取の実態! 指を失い、都内建設会社から命からがら逃げ出したカンボジア人実習生が奴隷的労働の現実を明かす!(聞き手 IWJ城石エマ記者)
  • 日時 2017年1月25日(水)
  • 場所 東京都内

休憩なしで12時間勤務、「死ね」「バカ」と言った暴言、さらには着用していたヘルメットが割れるほどの暴行も…

 インタビューに応じたカンボジア人男性が佐々木氏の元を訪れたのは、2016年4月のことだ。受け入れ先の企業と監理団体(後述)から「雇用契約を解除し、帰国してもらう」と強く迫られ、困り果てた男性は、日本に在住している姉とともに全統一労働組合に相談に訪れた。

 男性は、日本語で最低限の意思疎通はできるものの、堪能とは言い難い。佐々木氏が時間をかけて話を聞いていくうちに、男性の置かれた悲惨な労働環境が明らかになった。

▲(手前)カンボジア人技能実習生、(左奥)佐々木史朗氏

▲(手前)カンボジア人技能実習生、(左奥)佐々木史朗氏

 男性は、2014年6月に来日し、1ヶ月間語学等の研修を受けたのち、都内にある建設会社で配管工として働き始めた。そこで男性は、東京都の最低賃金に近い時給で働かされていたが、佐々木氏によると「日本人なら時給2000円、日給1万6000円でも応募しないようなきつい職場」だったという。

 また、男性は日本に来る前、「月給20万円ほど」と聞いていたが、実際には深夜残業をこなしても月給15万円ほどであった。時給制のため、雨が降って作業ができなかった日は給料が出ず、場合によっては月給7~8万円ほどのこともあったという。

 受け入れ先では、多くの外国人実習生の場合と同様に、長時間労働を強いられていた。雇用契約に相当する「雇用条件書」では、勤務時間は8時から17時、昼休みは12時から13時の8時間労働ということになっていたが、実際には昼休みはほとんど与えられず、早朝5時半頃から、道具の積み込みなどの工事現場に行くための準備をさせられ、12時間近く労働させられていた。そして、このような勤務時間外の労働に対する賃金は支払われておらず、数十万円の未払い賃金があるという。

 建設業界はもともと厳しい労働環境がまかり通っており、日本人の若者はこの業界への就職を避ける傾向にある。現在建設業に従事している労働者のうち、55歳以上が約3割を占めているのに対して、29歳以下の若者は約1割にとどまっている。極めていびつな労働者構成だ。それにもかかわらず建設業界は、労働者の待遇を改善して若者を呼び込むのではなく、外国人労働者(実習生)を低賃金で酷使して不足する労働力を補っている。

 そしてこの問題は、長時間労働や低賃金労働に留まらなかった。男性は、受け入れ企業の従業員から、身体的、精神的な暴力を受け続けていたのだ。

 男性は、業務時間内外を問わず、殴る蹴るなどの暴行を日常的に受け続けていた。工具を用いて頭部を殴られ、着用していたヘルメットが割れたこともあるという。このような暴行傷害事件に相当するほどの凄まじい暴力、さらに「死ね」「バカ」「カンボジアに帰れ」と言った暴言を日常的に浴びせられていた。

 2016年3月深夜、突き飛ばされた後、さらに馬乗りになって殴られるという激しい暴行を受けた男性は、日本に在住する姉のもとに避難し、全統一労働組合に相談に訪れた。現在はうつ病のため休職し、労働組合を介して、受け入れ企業と補償についての交渉を行っている。

「監理団体」にも「我慢しなさい」と言われただけ…第三者のチェックも機能せず

 外国人技能実習制度では、監理団体(中小企業協同組合、農協等)が実習生を受け入れ、そこが受け入れ先企業に実習生を派遣する。監理団体は、技能実習がきちんと行われているか監視したり、実習生からの相談を受けたりする役割を担っているはずだが、「実際には機能していない」と佐々木氏は言う。

▲外国人技能実習制度(団体監理型受入れ)の構造(作成:IWJ)

▲外国人技能実習制度(団体監理型受入れ)の構造(作成:IWJ)

 「監理団体にとって受け入れ企業は『お客さん』であり、そこに人材(外国人実習生)を売り込んで利益を上げている以上、受入れ企業の不機嫌を買うようなことは言わないし、やらない」

 実習生の男性も、労働組合に相談へ訪れる前に監理団体に自分が受けてきた暴力や時間外労働について相談したが、「我慢しなさい」と言われただけだったという。

何か起きたら「強制帰国」――100万円近くの借金を抱えた実習生に対する「脅迫」

 さらに佐々木氏は、「外国人実習生制度は、『何か問題が起きたら、いつでも強制帰国させるぞ』という脅しの上に成り立っている」と指摘する。男性が会社の上司からの暴力に耐えかねて避難した際にも、監理団体と受け入れ企業は男性を呼び出し、強制帰国させようとした。

 なぜ「強制帰国」が脅しとなるのか。

 実は男性は来日に際し、紹介料や日本語授業料等として、約100万円もの「借金」を抱えている。途中で帰国すれば、この借金を返済することはとてもできない。

 佐々木氏によると、多くの外国人技能実習生はこの男性と同じように、日本で技能実習生となるにあたって、100万円に近い借金を抱えるという。このため、「強制帰国」が脅しとして通用するのだ。

 「根本的には、日本人に対してはおそらくやらないであろう(暴行、賃金不払い等の)人権感覚の欠如した行為を、(相手が)外国人だということで見下し、そういう事件が起こる」

 佐々木氏はそう述べ、さらに次のように続けた。

 「日本人相手でも暴力沙汰が起こることもあるでしょう。でもその時は、『仕返しをされるかも』という恐怖があるかもしれない。でも実習生に対しては、『彼らは絶対に歯向かってこない』と思い込む。そういう歪んだ関係の中で、暴行事件や人権侵害が起こっているのです」

 受け入れ企業は「強制帰国」で威圧し、監理団体に相談しても相手にされない。さらに上位の機関として、受け入れ企業や監理団体を指導・監督する役割を担う政府系の国際研修協力機構(以下、JITCO)があるが、実際には、実習生を保護する役割を果たしていないという。

 佐々木氏によると、実習生の中にはJITCOに相談する人もいるが、JITCOが問題を解決することはなく、逆にJITCOに相談することで、その情報が監理団体に流され、受け入れ企業にフィードバックされたりすると、「JITCOに相談した結果、強制帰国の危険にさらされる」ということさえあるという。

指を切断する大事故を「健康保険」で処理――多重請負構造が生み出す「労災隠し」

 2015年9月、前出のカンボジア人男性は、現場作業中に電動のこぎりで左手の人差し指を切断する大事故に遭遇した。緊急手術を受け、切断した指の再接着が試みられたもののうまくいかず、男性は指を失った。

 明確な労働災害である。しかし、受け入れ企業は労災申請を行わず、健康保険で処理をした。

 受入れ企業は当初、「事故発生時刻は勤務時間外で、男性が勝手に作業したために事故が起きた」と主張したが、労働組合が緊急搬送先の病院にあたり調べたところ、男性の病院搬入時刻が勤務時間内であることが確認された。この事実を突きつけると、受入れ企業は労災隠しの事実を認め、補償に応じたという。

 なぜ受入れ企業は労災を隠したのか。

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    労働者の人権を無視し、一人の人間を死に追い込む日本の産業界で、犠牲にされているのは日本人だけではない。日本人よりもずっと弱い立場に立たされ、虐げと搾取に耐えているのが、外国人技能実習生だ。 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/365297 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/835441035715104768

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