山口二郎氏「謝罪ないなら公的言論空間から追放しなければならない」〜「ニュース女子」長谷川幸洋氏の謝罪求め有志が会見!香山リカ氏らが東京新聞に申し入れに行くもほぼ「ゼロ回答」!?(第14弾) 2017.2.9

記事公開日:2017.2.10取材地: テキスト 動画
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(取材・文:原佑介)

 「長谷川幸洋氏が謝罪しないのであれば、公的言論空間から追放することが私たちの務めだ」――。

 TOKYO MX前で抗議行動を続ける「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」が2017年2月9日、衆議院議員会館で記者会見を開いた。市民有志は東京・中日新聞に対し、同社の論説副主幹・長谷川幸洋氏の責任を追及する申し入れ書を郵送したと明かし、会見でも改めて長谷川氏へ謝罪を求めた。

 問題となっているのは沖縄ヘイトデマを垂れ流したTOKYO MXの報道バラエティ番組「ニュース女子」。長谷川氏は同番組で司会を務め、デマの拡散に加担しながら、謝罪・訂正するどころか「言論の自由の侵害」だとして居直り、ますます非難を集めている。

 記者会見に出席した法政大・山口二郎教授は長谷川氏について、「公的言論空間においてものを言う資格がない」と批判。「地上波でデマゴギーが当たり前になれば、日本の言論、民主主義は壊れる」と危機感をあらわにし、「これはデマゴーグを一個一個潰しにいく『白兵戦』だと思って闘わなければいけない」と訴えた。

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■ハイライト

■記者会見

■東京新聞本社申し入れ後の囲み

  • 発言 川名真理氏(雑誌編集者)、川原栄一氏(のりこえねっと事務局長)、香山リカ氏(精神科医)、西谷修氏(立教大学教授)、野平晋作氏(ピースボート共同代表)、他
  • 日時 2017年2月9日(木) 14:00~
  • 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 沖縄への偏見をあおる放送を許さない市民有志

「デマの波及効果を考えるとき、その罪は重大だ」〜「ニュース女子」における長谷川幸洋氏の責任

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 市民有志らが「申し入れ書」を送付したのは中日新聞の小出宣昭社長、論説主幹の深田実氏、そして論説副主幹の長谷川幸洋氏の3名。申し入れ書は「(東京・中日新聞の)『論説副主幹』という権威ある肩書を持つ司会者がいることで、嘘を真実と捉える視聴者が増える」と指摘し、「デマの波及効果を考えるとき、その罪は重大」であると糾弾した。

 申し入れ書は、東京新聞が2月2日に謝罪記事を掲載したことについては「真摯な姿勢を高く評価」するとしつつ、当の長谷川氏本人が「言論の自由の侵害だ」と開き直っていることを問題視し、(1)長谷川氏本人が番組内容について訂正・謝罪を行うこと。(2)本人が謝罪・訂正しない場合、論説副主幹から解任することの2点を求めた。

 東京新聞の謝罪記事と長谷川氏の開き直りの詳細についてはIWJ「ニュース女子」検証記事の第10弾、11弾を参照いただきたい。

ますます拡大する「ポスト・トゥルース」〜山口教授「嘘をついたジャーナリストには看板を降ろさせる必要がある」

 山口教授は1月27日付の東京新聞「こちら特報部」のコラムで、長谷川氏について、「ジャーナリストの職業倫理にもとる」と厳しく非難して注目を集めた。山口教授は会見で、「地上波のテレビであんな無茶苦茶なデマが垂れ流されるのを黙認していてはいけないという思いだった」と振り返った。

▲東京・中日新聞副主幹・長谷川幸洋氏の責任を問う山口二郎法政大学教授
▲東京・中日新聞副主幹・長谷川幸洋氏の責任を問う山口二郎法政大学教授

 「『ポスト・トゥルース(脱・真実)』という言葉が世界中で使われているが、背景にはメディアの崩壊、ジャーナリズムの劣化がある。嘘をついたジャーナリストには、ジャーナリストの看板を下ろさせる必要がある」

 山口教授は、長谷川氏について「公的言論空間でものを言う資格がない」と断じ、「謝罪をしないのであれば公的言論空間から追放しなければいけない」と主張。「放っておけば、ますますポスト・トゥルースが広がる」と懸念を示す。

 「地上波放送でデマゴギーが当たり前になっていったら、日本の民主主義は壊れる。今、日本は『嘘が真実』の社会になるかどうか、瀬戸際にきているのではないか。これはデマゴーグを一個一個潰しにいく『白兵戦』だと思って闘わなければいけない」

東京新聞は態度表明を!西谷教授「長谷川氏はオルタナティブ・ファクトそのもの」

 「すべでのメディア人の足元を崩すかのような状況が起きている」

 こう語るのは立教大学大学院の西谷修教授だ。西谷教授も山口教授と同じく、今回の「ニュース女子」問題には「オルタナティブ・ファクト(=代替的な事実)」が絡んでいると分析する。

▲東京新聞の熱心な購読者だという立教大学大学院・西谷修教授
▲東京新聞の熱心な購読者だという立教大学大学院・西谷修教授

 トランプ米大統領の就任式は、09年のオバマ前大統領の就任式と比べて圧倒的に聴衆が少なかったと言われている。にも関わらず、ショーン・スパイサー大統領報道官は「過去最大だった」と発表。虚偽発表であると批判が高まる中、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問は、「スパイサー報道官は『オルタナティブ・ファクト』を提供しただけだ」と反論し、虚偽発表を正当化した。

 「『ポスト・トランプ』的な状況が世界に広まろうとしている。そんな中で、日本では頼れるメディアだったはずの東京新聞の論説副主幹が『オルタナティブ・ファクト』を製造し、何ら反省も示さないでいる」

 西谷教授は、「こういう人が要職についていていいのか、このままでは東京新聞に深い不信感を持つことになるし、日本のメディアにますます強い危機感をもつことになる」と懸念を口にし、「東京新聞は長谷川氏の処遇についてはしっかり態度を示してほしい。これは『オルタナティブ・ファクト』の形成そのものだ」と語った。

次は「BPOから言論弾圧を受けた」と開き直る!? 香山氏「BPOが経験したことのない事態になるのではないか」

 放送倫理・番組向上機構(BPO)で6年にわたって放送倫理検証委員を務めた、精神科医の香山リカ氏も会見に出席した。

▲元BPO放送倫理検証委員で精神科医の香山リカ氏
▲元BPO放送倫理検証委員で精神科医の香山リカ氏

 BPOは現在、TOKYO MXに対し、「ニュース女子」の放送内容について報告を求めている。香山氏は、「委員を務めた経験から言って、おそらく『ニュース女子』はBPOで審議入りすると思うが、これまでと違うのは、(製作元の)『DHCシアター』や長谷川氏が自分たちの瑕疵をまったく認めていないことだ」と論じる。

 「これまでBPOの検証委員会がヒアリング調査した中で、初めてのケースになると思う。おそらくヒアリングでも開き直って正当化し、『BPOから言論弾圧を受けた』『BPOが偏向している』などと攻撃に転じるだろう。委員会が経験したことのない事態になるのではないか。そこでどうBPOが対峙していくかだ」

問われるコンプライアンス!香山氏らが東京新聞本社に申し入れするも、ほぼ「ゼロ回答」

▲東京・中日新聞本社(東京都千代田区)
▲東京・中日新聞本社(東京都千代田区)

 会見後、香山氏らは東京・中日新聞本社を訪れ、改めて申し入れ書を手渡した。申し入れの会談は取材陣に非公開で行われたが、この日不在だった論説主幹・深田実氏に代わり、論説委員の豊田洋一氏と総務部長の中橋俊夫氏が対応した。

 香山氏らは、東京新聞が謝罪記事で、長谷川氏について「対処する」と記している点についても、「形で表してほしい」と訴えたが、豊田氏自身は「長谷川氏の処遇にコメントできる立場にはない」と強調。「東京新聞の報道姿勢に変わりはありません。これからも沖縄問題を書き続けることで東京新聞の姿勢を示していきたい」と述べるにとどめたという。

 香山氏は申し入れ後、「『長谷川氏本人の謝罪、もしくは処分さえないのでは読者としてちょっと納得がいかない』と伝えたが、どこまで伝わったか、少し疑問も感じた」と報告し、次のように続けた。

 「次の『ニュース女子』では、東京新聞の謝罪記事を取りあげるとも聞いている。おそらくまたデマを交えて揶揄するのだと思う。長谷川氏は自分のいる会社を愚弄しているとしか思えない。東京新聞はなぜ長谷川氏をかばっているのか、少し納得がいかなかった」

 西谷教授は、豊田氏らに対し、「長谷川氏のやっていることは東京新聞の努力を大きく損なう反社的行為だ」と告げ、「企業コンプライアンスを考えても、組織として何らかの対処をとらないと信用問題に関わる」と念を押したという。

 責任者不在とはいえ、申し入れに対し、ほとんど「ゼロ回答」の対応に終始した東京新聞。今後、期待を寄せる読者の声に応えるのか、それとも、一本の謝罪記事で幕引きを図るのか、その行動に大きな注目が集まっている。

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