福島原発事故の区域外避難者「自主避難者」が3月末以降避難住宅から追い出されることに~「私たちはこの事故がなければ帰りたい。でも帰れない状況を皆さんに知っていただきたい」 2017.1.17

記事公開日:2017.1.18取材地: 動画
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(取材・文:阿部洋地)

※1月20日テキストを追加しました!

 2017年1月17日、日本外国特派員協会で「福島県飯舘村の原発事故による避難指示解除問題に関して」の記者会見が、松本のり子氏(福島・自主避難者)、石丸偉丈(いしまるひでたけ)氏(「こどもみらい測定所」代表)、吉田千亜(よしだちあ)氏(『ルポ 母子避難』著者)の3名により行われた。

 会見では2017年3月末で住宅支援が打ち切られる区域外避難者(自主避難者)の当事者である松本のり子氏が、自身の窮状を訴えた。

■ハイライト

住宅支援打ち切りは死活問題~避難生活を営む松本のり子氏が訴え

 松本氏(本年54歳)は、当時12歳の次女とともに神奈川県に避難した母子避難者だ。料理店を営む夫は地元に残っている。

▲左から石丸偉丈(いしまるひでたけ)氏(「こどもみらい測定所」代表)、松本のり子氏(福島・自主避難者)、吉田千亜(よしだちあ)氏(『ルポ 母子避難』著者)

▲左から石丸偉丈(いしまるひでたけ)氏(「こどもみらい測定所」代表)、松本のり子氏(福島・自主避難者)、吉田千亜(よしだちあ)氏(『ルポ 母子避難』著者)

 松本氏は郡山に自宅があり、ローンをかかえながら神奈川と福島の二重生活をおくっている現在の状況を述べ、以下のように訴えた。

 「災害救助法のもとに私は住宅支援を受けていました。たった一つの命綱である住宅支援が、今年の3月末で打ち切られようとしています。二重生活でさえ大変なのに、この住宅支援がなくなれば私たちのような母子避難者は、経済的に窮困してしまいます」

▲時に言葉を詰まらせながら話す松本のり子氏

▲時に言葉を詰まらせながら話す松本のり子氏

区域外避難者(自主避難者)の住宅支援の打ち切りは2015年に方針が決定された。IWJではこの問題について継続的に取材している。下記の記事もあわせてご覧いただきたい。

国、福島県は区域外避難者(自主避難者)を棄民扱い 「帰りたい。でも帰れない」

 松本氏は避難して2年後に膠原病(こうげんびょう)(※)、その1年後に橋本病(※)も見つかり、現在も治療中だという。

※膠原病:全身の複数の臓器に炎症が起こり、臓器の機能障害をもたらす一連の疾患群の総称。
※橋本病:慢性甲状腺炎。女性に多いとされる疾患。

 さらに、松本氏は昨年(2016年)川崎で、市民団体が行っている甲状腺エコーを受け、自身と次女に健康被害が出たことが分かったとして、以下のように述べた。

 「私は10ミリの腫瘍があり、良性と言われましたが、次回それ(腫瘍)が大きくなれば、生検(患部の一部を切り取って,顕微鏡などで調べる検査)をしましょう、ということでした。

 事故前は健康だった次女も、甲状腺エコーで3ミリの嚢胞(のうほう)が見つかりました。要観察とのことですが、今後娘の健康になにかあるのではないかという心配を、ずっとしなければならないということに不安があります」

 福島と神奈川の二重生活、健康被害、そして2017年3月末で打ち切られる住宅支援、といった窮状を訴えた後、松本氏は以下のように述べた。

 「私たち自主的避難者は勝手に避難をしたということで、国、福島県も、私たちを棄民扱いして、今後自己責任というかたちで私たちを捨てていくことに、深い怒りを感じます。私たちはこの事故がなければ、帰りたい。でも帰れない状況を皆さんに知っていただきたい」

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