【岩上安身のツイ録】アレクサンドル・ドゥーキン「ベルリン、テヘラン、東京で枢軸を形成」!? ロシアを中心に融和しつつあるユーラシアの「ランドパワー」――プーチン大統領来日を地政学的に読み解く 2016.12.16

記事公開日:2016.12.16 テキスト
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※2016年12月16日のツイートを加筆・再掲しています。

 今の官邸の住人の中には、アレクサンドル・ドゥーニンの『地政学の基礎』にかぶれた間抜けでもいるのだろうか? ランドパワーのモスクワがシーパワーのヤンキーに対抗するために、ベルリンと東京との枢軸形成を画策し、そのためには北方領土を返す用意があると信じる間抜けが。

 オスプレイが墜落し、日米同盟断固堅持派にとっては、まことに罰が悪いタイミングでのプーチン来日となった。これも偶然ではあろうが、米軍の傲慢さと日本政府の属国然とした卑屈さが際立つ中でのプーチンの来日であることは特筆すべきである。

 ソ連崩壊後、ロシアの中では、世界に先駆けてグローバリズム、グローバリストという言葉が流行った。当時、モスクワで、僕は嫌というほど耳にした。国有財産の大規模な民営化につけ込んで、濡れ手に粟で莫大な富を手にする新興財閥(オリガルヒ)が台頭した。

 グローバリストや寄生的なオリガルヒに対してエリツィン政権はなすすべもなく、国民の信任は凋落。そこへオリガルヒと対決する勢力としてシロビキが台頭。シロビキとは軍、警察、諜報機関を含めた治安機関を指し、その筆頭が旧KGB出身のプーチンだった。

 プーチンはナショナリズム、ロシア帝国復活を目論む帝国主義者などと目されてきたが、ロシアにおいては、幅を利かせてきたのは、ユーラシアニズムという地政学ベースの思想である。

 ユーラシアニズムの代表的なイデオローグの一人が『地政学の基礎』をしたためたアレクサンドル・ドゥーキンだ。彼は単なる市井の右曲がりの物書きではない。ロシアの参謀幕僚学校で講義を行い、その講義録をまとめたのが『地政学の基礎』である。

 チャールズ・クローヴァーの『ユーラシアニズム』によれば、ドゥーキンの『地政学の基礎』は、今も幕僚学校や軍事大学で教材に使われており、シロビキに、そしてクレムリンにも一定の影響を与えている、という。

 その内容はマッキンダーの地政学の拡大版である。シーパワーである米英との宿命的対決を制するために、ハートランドを押さえた世界島(ユーラシア大陸)のランドパワーであるロシアは、ベルリンと東京、そしてテヘランと枢軸を形成すべしと大胆な構想を語る。

 ドゥーキンの拡大版のハートランドの中には、ユーラシア大陸に隣接してはいるが、島として離れていて、明らかにシーパワーであるはずの日本が、あらかじめ含まれている。断りもなく、あつかましい話だが。

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 ドゥーキンらユーラシア二ストは大胆にも、東京との枢軸形成の暁には、北方領土を返還しよう、とも言うが、そのためには日米安保の破棄が前提となると、喉元に刃を突きつけることも忘れていない。

 プーチン自身がユーラシアという言葉を近年頻繁に用いていることに注意を払うべきだ。プーチンはすでに「大ユーラシア経済」構想をぶち上げている。

 旧ソ連五カ国からなるユーラシア経済同盟と、中国が推進する海と陸のシルクロード経済圏「一帯一路」構想は、ロシアと中国の間で2015年の5月の段階で連携に合意している。

 ウクライナ危機問題でロシアが米欧日に「制裁」されている間に、良くも悪くも、ランドパワーの「ユーラシア」は、連携を進めてきた。陸の通称路がシベリアから西欧まで貫通し機能し始めている。シーパワーがおさえるシーレーンの重要性が相対的に低下する。

 政府もメディアも地政学的観点からの戦略の検討を含めて、広い視野で日露関係、とりわけ今回の来日と日露の経済協力について考え、語ることが必要だ。そうした論議があまりにも足りな過ぎる。

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