IWJ代表の岩上安身です。日頃より、IWJをお支えいただき、誠にありがとうございます。
10月21日、日刊IWJガイドと皆さまへの直接のメールにて、IWJ年末恒例のシンポジウム「饗宴」開催に関するアンケートの呼びかけをさせていただきました。「これまでと同規模で開催する」「規模を縮小して開催する」「開催自体を取りやめる」の3択でお聞きしたところ、全部で733件ものご回答をいただきました。お答えいただいた皆さま、誠にありがとうございました。
IWJ設立以来、毎年開催している「饗宴」は、全国各地からたくさんの方々にお越しいただき、好評をいただいているイベントですが、実は例年、赤字必至で、昨年も会場費や人件費などで約50万円の赤字を出しています。
もちろん、少々の赤字を出してもなお、開催する意義もメリットもあります。
その一年、IWJが何を伝えてきたのか、立体的にひと目で分かる集約されたイベントであること。IWJにご来場いただいた多くの識者の方々に、ナマで触れあう貴重な機会であること。
また、複数のテーマで多彩なゲストの方をお招きするので(通常のシンポジウムだとワン・テーマです)、ゲストの方々も、分野の違う識者の話をお互いに聞けるのを楽しみにしていること。
年に一度、IWJを支えてくださっている会員・サポーターの皆様にお会いし交流する集いの場であり、参加者の皆様にも毎年楽しみにしている方々が少なくないこと。
少々の赤字が出ようとも、様々な点で意義あるイベントであり、開催する価値はあると、自負しておりました。特に昨年末の緊急事態条項をメインテーマとしたシンポジウムは、この緊急事態条項の危険性がほとんど周知されていなかった当時において、傑出した内容であり、世論喚起の起爆剤の役割を果たしたと思っています。
このように、単純に売上と利益をあげるだけが目的のイベントではなく、公共性、公益性もあるイベントだと思っておりますので、少々の赤字であれば、他の努力で埋め合わせていこうと考えてきましたし、実際、毎年、そうしてきました。しかし、今年はもうその余裕すらありません。
IWJの財政状況はいつもぎりぎりであり、今年の春、前期の決算期前には一時、3000万円の赤字の危機に瀕したこともありました。その際には、私から直接、皆さまにSOSを発信して、たくさんのご支援をいただき、なんとか大赤字の危機を乗り切ることができました。お助けいただいた皆さまには、本当に心から感謝申し上げます。
本年8月からスタートした第7期では、そのような経営危機に陥ることのないように、期の始まりからスタッフの深夜残業を減らし、配信規模を縮小するなどして、人件費や活動費の削減に努めてきました。しかし、残念なことに秋からのご寄付・カンパの低迷は予想を超え、私どもの支出削減努力を上回るものでした。経済環境の悪化を反映しているのではと思われます。
ご寄付、カンパというものは、出してくださる方のお志、お気持ち次第であり、その時々でいただけたり、いただけなかったり、不安定なものです。しかし、IWJの経営は会費とご寄付の二本柱でまかなわれており、ご寄付が低迷しますと、たちまち、経営難に陥ってしまうのが現状です。そのご寄付が、このところ低迷し、急激に財務状況が悪化しています。
「寄付をあてにせず、収入の見込みが立つ会費だけで収支を考えるべきだ」というご意見もあります。ごもっともだと思います。しかしあまりにも急激な収支のアンバランスに対し、支出の少々の削減だけでは対応できません。
最大の支出費目は人件費です。人こそIWJの財産でもあります。人件費を削減するとはIWJの宝を切り捨てる、ということでもあります。身を切られるような痛みを覚えます。
それでも支出をカットしなければならないのが、経営上の現実だとしても、人件費は単なるコストではありません。働いているのは、生身の人間です。
人それぞれに生活がかかっており、人件費の圧縮がいくら急務といっても、「明日からスタッフの3分の1を解雇する!」「明日から、スタッフの給与を半分にする!」などという乱暴なことが許されるわけではありません。IWJはブラック企業ではありません。労働基準法を尊守しています。人件費の圧縮には時間がかかります。人手を減らすにも、相応の手続きや配慮も必要です。人件費の毎月の支払額はピーク時で900万円台にまで達していましたが、現在、700万円台まで圧縮しています。それでも、減収のスピードに追いついていません。
会員数も最低目標の6000名にはなかなか回復しない状況です。また、7月末の決算後、9月に消費税・法人税を約500万円も納付したために、予想以上に現預金の残高が少なくなってしまいました。11月のスタッフの給料を支払うには、手元のキャッシュがついに不足してしまったため、私の個人的な預貯金をつぎ込んで乗り切るしかない、というところまで追いつめられてしまいました。
経理からの悲鳴を聞いて私が貯金を崩して500万円の貸付けを行い、今月のスタッフへの報酬支払いは、なんとか遅払いなくすませることができましたが、私の蓄えなどたかが知れています。来月、さ来月も同様の状況が続けば、私の貯金も底をついてしまいます。
IWJは、どこの金融機関からの融資も受けていません(打診したことはありますが、担保もないので、融資してくれるところは皆無です)。IWJに資金を貸しているのは、私個人のみです。私からIWJへの貸付金残高は約900万円なので、今回の緊急の500万円とあわせると、合計1400万円。過去には平成26年(第4期中)に貸付金が最大約2000万円まで膨れ上がったことがあります。会計から少しずつ返済してもらって、900万円まで減っていましたが、これで逆戻りです。
私は資産家でも何でもありません。過去最大だった2000万円は、本当に貯金をすべて投げ込むようにして差し出した金額であり、私の資産は増えていませんから、これが私の出せる精一杯の限界です。現在の状況があと2、3ヶ月続いたら、私自身は手も足も出なくなり、IWJは本当に行き詰まってしまいます。
このような状況で、赤字必至の「饗宴」を開催すべきか否か。毎年続けてきたイベントでもあり、開催するたびに多くの方から、「とても良かった」と好評をお寄せいただいていたこともあって、決断に至るまでには非常に悩みました。
今回のアンケートでも、「寄付をするので、ぜひ開催してほしい」とのご意見もいただきました。しかし、一番多かったのは、「何より大事なのは、IWJそのものの存続だ」というお声でした。
アンケートの内訳を見ると、「これまでと同規模で開催する」のご回答が全体の13.2%、「規模を縮小して開催する」が最も多く、全体の53.7%、「開催自体を取りやめる」が全体の33%でした。
しかし、そのコメントを読みますと、饗宴は不要である、やめてしまえ、といった回答はほとんどなく、参加した人はもちろん、参加しなかったがDVDで見たという人、今年会員になったので今年こそ参加します、という人を含め、大半の人々が饗宴を楽しみにされているのがわかり、嬉しさと同時に、期待されている、という責任感をずしりと感じました。本当にありがたいことであり、同時に、心が大きく右に左に揺さぶられました。
たくさんのご意見・ご感想もお寄せいただきました。以下に、その一部をご紹介いたします。
「本当に悩ましい問題だと思います。昨年の饗宴に参加致しました。ライブの醍醐味は格別です。最も避けなければならないことは、IWJが倒産してしまうことです。今の日本においてIWJはどれほど大切か!」
「年に1度、会員同士が一堂に会して岩上さんの進行で素晴らしい先生方のお話を聴けるのは勿論、夢のような饗宴ですが、留まるところを知らぬ右傾化の波が日々押し寄せる中、饗宴に準備の時間や労力を割くよりは、毎日のリアルタイムで起きていることを教えていただく方がより有り難いと私は思います」
「戦争とファシズムに向かう日本で、情報統制に抗うIWJの存在は何者にも増して貴重です。守備範囲を縮小してでも、絶対生き残ってください」
「(アンケートの選択肢として)『饗宴』の開催自体を取りやめる、を選択しましたが、もちろん可能であれば開催するにこしたことはないと思います。ただ、私としては岩上さんのインタビューに魅力を感じたのが会員になったきっかけですし、今でも岩上さんのインタビューを楽しみにしています。饗宴や講演会、選挙、デモなど各種中継、その他の活動も大切だと思いますが、岩上さんのインタビュー、これだけは続けていただきたいと思っています。
大手メディアがまともな報道をしない現在、IWJの役割は非常に大きいと思います。微力ながら応援したいと思いますので、IWJの活動を最優先と判断されるようにお願いします」
皆さまからのご意見を読ませていただき、日頃IWJがどれだけ皆さまのお支えによって成り立っているのかを痛感し、私もスタッフもとても励まされました。その一つ一つを丁寧に読み、時間をかけ、じっくりと考えました。
スタッフ一人ひとりの意見も聞き取りました。その上で答えを出しました。
苦渋の決断ではありますが、今年は、例年と同じ規模での「饗宴」は、開催を取りやめることにいたします。
12月23日におさえていた会場も、キャンセル料を払ってキャンセルしました。断腸の思いです。
とはいえ「饗宴」は、日頃IWJをお支えくださっている方々へ感謝をお示しする場でもあります。その場がなくなってしまうのは、私としてもやりきれませんし、また、毎年集うのを楽しみにしてくださっていた方々に対し、申し訳ない気持ちもあります。
アンケートにも、「規模を縮小してでも、無理のない範囲で続けてほしい」というお声が最も多かったため、それを踏まえて何ができるか考えたいと思います。考えがまとまり次第、皆さまには、改めてご連絡させていただきます。
ともあれ、眼前に迫っているのは、IWJが存続できるか否か、という問題です。2010年12月にIWJを設立して以来、毎年12月に必ず行ってきた、大切な饗宴の開催を今年は見送る、というのは、それだけ目前の危機が大きなものであることを意味していると、ご理解いただけたらと存じます。
大きな危機とはいっても、乗り越えられない危機ではありません。
仮に一般会員(11月13日時点で4228名)の皆様が、全員サポート会員に切り替えていただいたら、楽々と乗り越えられます。一般会員の方々には、ぜひ、この機会にサポート会員へのお切り替えのご検討をよろしくお願いいたします。
また、過去に一時は会員登録し、現在は休会中(会費の納付がない)の方々が、再開してくださったら、会員数は1万人をはるかに超えて、悠々と乗り越えられます。「休会中」の皆様、この呼びかけが届いたら、ぜひ再開をお願いいたします!
※IWJ定額会員へのご登録はこちらから
また、現会員の皆様が、仮に一人あたり平均1万円のご寄付・カンパをしていただけたら、今期の危機は乗り越えられます。やはりご寄付・カンパによるご支援が現実的かと思います。
簡単なようで、簡単ではないことは、重々承知しております。しかし、IWJの存続は、決して不可能なことではなく、皆様のご支援次第で、可能なことだと思っています。
どうか、皆さま、危機に瀕する今のIWJを皆さまからのご寄付やカンパでお支えいただけないでしょうか。伏してお願いを申し上げます。
※ご寄付・カンパはこちらからお願いいたします
皆様にご支援のお願いをしている私が、まず率先して身を切らなくてはなりません。前述した500万円貸し付けとは別に、役員報酬の50%、私への240万円をIWJへ「返上」することを決めました。
家族がいれば独断でこんな決断は到底無理だと思いますが、幸か不幸か両親を看取り、子供たちも巣立ち、今は伴侶のいない独り身なので、独断で決めました。「返上」と申しましたが、正確には、税務上「返上」は難しいとのことで、実際には役員報酬の半額分をIWJに「寄付」するという形になります。
私自身も、IWJをお支えいただいている皆様と同じ思いでいます。IWJをつぶしてはならない、存続させなければいけない、そう思っています。これからますます厳しい時代がやってきます。どんな時代になろうとも、変わらずに真実を伝え続ける独立メディアとして、IWJを残さなくてはいけないと思います。
どうぞ、皆様のお力をお貸しください。饗宴をとりやめなくてはならないほどのIWJの窮地に、緊急のご支援を、何とぞよろしくお願い申し上げます。
(IWJ代表 岩上安身拝)