経産省による露骨な「東電ファースト」「原発ファースト」の救済策――「新たな東京電力救済策・原子力発電会社救済策は正当化できない」原子力市民委員会が声明を発表 2016.12.2

記事公開日:2016.12.8取材地: テキスト動画
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(取材・文 青木浩文)

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 「経産省の出した救済案は、『東電ファースト』であり『原発ファースト』である」――。

 九州大学大学院比較社会文化研究院教授で元政府原発事故調査委員会委員、そして原子力市民委員会座長を務める吉岡斉(ひとし)氏は、そう警鐘を鳴らした。

 「脱原発社会構築のために必要な情報収集、分析および政策提言をする市民シンクタンク」として活動する原子力市民委員会は、2016年12月2日に都内で、「新たな東京電力救済策・原子力発電会社救済策は正当化できない」と題した声明を発表し、その後、意見交換会を開催した。その冒頭での発言である。

 2016年9月に入って経済産業省は、「東京電力改革・1F問題委員会」と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置した。この二つの審議会は、年内にも、新規に東京電力救済と、原子力発電会社救済策の骨組みを設定することを目指している。

 もし、新たにこれらの救済策の骨子が定められた場合、「福島原発事故の対策コストと、原子力発電固有のコストを、際限なく国民に転嫁する仕組みが完成することになる」として、立命館大学国際関係学部教授で原子力市民委員会座長代理を務める大島堅一氏は、次のように訴えた。

 「『国民が全員で原子力を全力で永久に支えましょう』ということに、国民が合意しているならそれでいい。しかし、そうではないだろう。東京電力においては、(福島原発事故の対策コストとして)同社の純資産をはるかに超える費用が発生するということがわかっている以上、法的整理は避けられない。経産省なり政府の役割は、そこで電力システムが大混乱に陥らないような措置をとることだ」

■ハイライト

  • 司会 細川弘明氏(京都精華大学人文学部教授、原子力市民委員会事務局長)/議員挨拶 近藤昭一氏(衆議院議員、民進党)、田嶋要氏(衆議院議員、民進党)
  • 声明要旨解説 大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授、原子力市民委員会座長代理・第3部会長)
  • 解説・説明 吉岡斉氏(九州大学大学院比較社会文化研究院教授、元政府原発事故調査委員会委員、原子力市民委員会座長)/松原弘直氏(環境エネルギー政策研究所〔ISEP〕主席研究員)/竹村英明氏(市民電力連絡会会長、イージーパワー株式会社代表取締役)
  • 質疑・意見交換
▲立命館大学国際関係学部教授・原子力市民委員会座長代理 大島堅一氏

▲立命館大学国際関係学部教授・原子力市民委員会座長代理 大島堅一氏

 大島氏はこれまで、『原発のコスト』(岩波新書)などの著書で、立地対策費や使用済燃料の処分費用などを含めたコスト試算を行い、経済合理性の観点から「脱原発」を主張してきた。福島第一原発事故の発災からわずか1ヶ月後の2011年4月11日、岩上安身は立命館大学を訪れ、大島氏に単独インタビューを行っている。ぜひご覧いただきたい。

 他にもこの日の意見交換会では、吉岡氏が次のように述べ、経産省による東電救済策を批判した。

 「トランプ次期大統領が『アメリカ・ファースト』と言い、小池都知事が『都民ファースト』と言っているが、9月に経産省の出した救済案は『東電ファースト』であり『原発ファースト』であるということが非常に露骨に出ている」。

▲九州大学大学院比較社会文化研究院教授・元政府原発事故調査委員会委員・原子力市民委員会座長 吉岡斉(ひとし)氏

▲九州大学大学院比較社会文化研究院教授・元政府原発事故調査委員会委員・原子力市民委員会座長 吉岡斉(ひとし)氏

 国の原発政策に対して政策提言を行う「原子力市民委員会」については、2013年4月の設立以降、IWJでは常に会合の模様を取材・中継してきた。大島氏、吉岡氏だけでなく、河合弘之弁護士や海渡雄一弁護士、上智大学教授の島薗進氏らが、原発の再稼働や汚染水、被曝問題についてプレゼンテーションを行い、意見交換を行っている。ぜひ、IWJの動画アーカイブでご視聴いただきたい。

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