ついに南スーダン「駆けつけ警護」閣議決定!新任務を付与されるのは「青森陸上自衛隊第9師団普通科第5連隊」!地元青森からIWJ青森中継市民・外川記者が緊急レポート! 2016.11.15

記事公開日:2016.11.16 テキスト独自
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(青森中継市民・外川鉄治)

 政府は11月15日、自衛隊に対し、安全保障関連法の新任務である「駆け付け警護」の新任務を付与すると閣議決定した。新任務は青森陸上自衛隊第9師団普通科第5連隊中心の11次隊に与えられ、18日に派遣命令が出され、20日には南スーダンへ向けて日本を出発する。

 自衛隊員が背負う新たなリスクはどれほどのものか、政府が正確に評価できているとは言い難い。

 10月8日、南スーダンを視察した稲田朋美防衛大臣は、首都・ジュバにわずか7時間滞在しただけで、「落ち着いていると目で見ることができた。意義があった」と強調した。しかし同日、首都ジュバから約100Km離れた幹線道路で武装グループがトラックを襲撃。21人が死亡している。

 PKO法が定めるPKO5原則は、武力紛争下にある地域への活動参加を禁じている。南スーダンへの派遣もこれに該当すると思われるが、政府は、「武力衝突は発生しているが武力紛争は発生していない」という詭弁を弄することで、あくまで自衛隊を派遣するつもりだ。

 「駆け付け警護」の新任務検討が政府から発表されたことについて、地元紙である東奥日報は、陸上自衛隊第9師団広報に問い合わせたところ、「報道で知らされた」との答えが返ってきたと今年5月24日付けで伝えている。政府が事前に、青森陸上自衛隊第9師団に何の相談もなく決めたのだというのがよくわかる。

「核の要塞」に外国軍を招いて共同訓練の愚!戦後初、日英共同訓練「ガーディアン・ノース16」

 10月15日、秋晴れの中で行われた「陸上自衛隊青森第9師団創立54周年記念行事 青森市中パレード」では、多くの市民がパレードを見守った。翌16日には、青森駐屯地で記念式典と、訓練展示が行われた。

 私はその日、陸上自衛隊第9師団がある駐屯地からわずか1Kmに満たない圏内で偶然仕事をしていたが、近くの陸上競技場で行われていたサッカーの試合の歓声すらも、ヘリコプターや爆音によってかき消されてしまった。それほどの強烈な騒音が駐屯地周辺の住宅街に響いていた。

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 青森陸上自衛隊第9師団の訓練場として、青森県内には他に、六ケ所村に射撃・射爆含めた2ヶ所の訓練場がある。

 米空軍基地と航空自衛隊基地が共有されている三沢基地では、10月17日から11月7日まで、日英共同の「ガーディアン・ノース16」という訓練が行われた。この訓練は、今年1月に開かれた日英外務・防衛閣僚会合「2+2(ツープラスツー)」で合意した訓練である。日本領空内で英国軍と日本の自衛隊が共同訓練したのは、戦後、初のことだ。

 米空軍、航空自衛隊だけでなく、民間の飛行機も併用する三沢飛行場。その30Kmほど北には、六ヶ所核燃サイクル施設が立地する。爆撃・射撃訓練を行うであろう猿ケ森射撃場のすぐ付近には東通原発がある。

 「核の要塞」とも言えるこの地域で、自衛隊だけでなく、他国軍が軍事訓練を行う。日本の安全保障上、あまりにも問題ではないだろうか。

 また、10月20日には核燃サイクルの拠点の「むつ小川原港」に、英国で再処理をした「核のゴミ」高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)が到着した。時期的に、日英共同訓練「ガーディアン・ノース16」と重なっている。偶然のタイミングなのかもしれないが、「2+2」の中に、核利用に関する何かしらの合意もあったのではないのか――そんな懸念も頭をよぎる。

 「核のゴミ」の搬入は、当初、10月20日にむつ小川原港への陸揚げが予定されていたが、強風の影響によって中止された。しかし、翌21日には、20日と同程度の強風が吹いていたにも関わらず、搬入が強行された。日英共同訓練のためのスケジュールありきで、安全の確保は二の次にされたのではないか。そう疑わざるをえない。

 話は変わるが、今回の「陸上自衛隊青森第9師団創立54周年記念行事・青森市中パレード」には、今年の参議院選挙の青森1人区で 「野党統一候補」として立候補し、当選した民進党・田名部匡代(たなぶ・まさよ)参議院議員も壇上の中央、第9師団団長の隣の席で市中パレードを眺めていた。

 また、やや遅れて、民進党・升田世喜男衆議院議員も到着し、田名部議員の隣の席に座ってはいたが、不動のまま真っ直ぐ前を見ていた。

 「いのちとみらいのために」というスーローガンを掲げた、田名部匡代参議院議員の選挙戦。野党の思いを託された 田名部匡代参議院議員は、パレード壇上で何を思い、何を感じ取ったのだろう?

 パレードの最終地点には、田名部匡代参議院議員を支持した市民らが、「戦争はマイネ(マイネ=ダメ)」「安倍首相!自衛隊を戦場に送るな」「守ろう9条」などのプラカードを掲げ、「自衛隊を殺すな!」と訴えていた。

 田名部議員も升田議員も同月30日には、「戦争法廃止を求める青森県民ネットワーク」と「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が主催した市民集会「自衛隊を南スーダンに送るな!いのちを守れ!青森集会」に参加。田名部議員は「参院選で託されたのは平和への願い。諦めることなく、戦争法廃止へ力をつくします」と訴えている。この言葉を口にした田名部議員と、市中を陸自が行進するパレードに参列した田名部議員と、どちらを信じたらよいのだろう。

元陸上自衛官・末延隆成さん「自衛隊が現地に派遣されても敵味方の区別がつかない」と指摘!

 青森駅前公園では、「青森県9条の会」が主催する抗議集会が毎月19日に行われている。

 この取材の中で、ドキュメンタリー映画『ザ・思いやり』の米国人監督、リラン・バクレー氏は、三沢米軍基地に配備されている戦闘機は海外の軍事作戦に参加していると明かしている。

 日本ではまったく報じられないが、三沢米軍基地の戦闘機が中東攻撃の基地として使用されており、世界でも最大の攻撃基地になっている。このことは、青森県の地元紙「東奥日報」の編集員でもある斉藤光政氏も指摘している。

 稲田防衛大臣の岩手県演習場訓練視察と時を同じくして、10月23日には、米軍三沢基地と自衛隊が隣接する三沢市で、陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊の南スーダン「駆け付け警護」派遣に反対する大規模な集会が行われた。

▲23日の三沢市内でのパレード

▲23日の三沢市内でのパレード

 この「日本平和大会in三沢」と題された三沢の全国集会は、10月22日と23日に行われ、約1000人の市民が「自衛隊を南スーダンに送るな!」「戦争法廃止、憲法9条守れ!」と呼びかけた。

 22日の三沢市公会堂で行われた集会では、沖縄からの辺野古・高江ヘリパッドでの現状も報告された。

▲沖縄からの辺野古・高江ヘリパッドでの現状報告

▲沖縄からの辺野古・高江ヘリパッドでの現状報告

 また、北海道の元自衛隊員末延隆成さんも、元自衛隊員としての立場から訴えた。

 元自衛隊員末延隆成さんは、「3.11」で被災地の救援時に着用した自衛隊制服姿で講演し、支援物資を届ける「後方支援」の経験について語った。

 「燃料・食料・弾薬・水などの必要な物資を届ける、後方支援の任務は一番重要である」「安倍総理は、リスクはこれまでと変わらない危険はないと言っているが、とんでもない話だ!一番危険な任務だ」

 そう語る末延さんは、「南スーダンの武力衝突が発生している現場に行って、民間人を救出するというのは、自衛隊の能力を超えるものだ」と不安を募らせ、「南スーダンでは、誰が政府軍で、誰が反政府軍で、誰が民間人か区別がつかない」と指摘する。

 そのうえで、「武器の見分けはつくが、自衛隊が現地に派遣されても敵味方の区別がつかない」「もしも民間人を撃ってしまったらということを考えると、『駆け付け警護』はできない」と述べ、壇上で肩を落とした。

 末延さんはさらに、「今まで自衛隊は憲法9条によって、70年間武器を使っていない。しかし、『駆け付け警護』により、今後は必ず人を殺すことになる」と危機感を募らせる。

 「はじめて人を殺す自衛隊員は青森から行くことになる。そのような思いをさせてはいけない」

 「安倍総理は『戦闘ではない衝突だ』と言っているが、私達自衛隊員にとっては戦闘も武力衝突も同じであり、武力を行使するということは、明らかに憲法違反である」

 「自衛隊員には色々な人はいると思うが、よその国に言って人を殺したいと思っている人間は、誰一人としていない」

 「自衛隊は入隊するときに『事に望んではわが身の危険を省みず責務完遂に務め…』と宣言にあるが、憲法9条に基づいて、この国の国民を守るという宣言であり、他国で武力行使をするための宣言じゃない」

 末延さんが、「駆け付け警護」に対する懸念と、安倍政権に対する不信感をあらわにすると、賛同の拍手が会場いっぱいに響き渡った。

 末延さんにはIWJ代表・岩上安身が単独インタビューを行い、東日本大震災で実施された「トモダチ作戦」の知られざる舞台裏を語っている。

▲元自衛隊員末延隆成さん

▲元自衛隊員末延隆成さん

自衛隊員の息子をもつ母の平和子さんが涙の訴え!息子に「絶縁状」を送った理由!

 集会には、自衛隊員の息子をもつ母の平和子(たいらかずこ・仮名)さんも登壇した。息子が入隊を希望した当時を振り返り、「今のような状態なら即反対していたが、災害救助などの役に立てるなら、という淡い期待にすがり、渋々承諾した」と明かし、「今となっては、悪夢を見ている気分です」と悲痛な思いを語った。

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