現在の日本社会には、日本を自画自賛する「日本スゴイ!」系のコンテンツが溢れている。その範囲は、テレビ、雑誌そして書籍に及び、日本の文化や習慣を外国人の視線を通して褒め称えるものから、先のアジア・太平洋戦争を「アジア解放の聖戦」であると肯定するもの、さらには中国や韓国に明確な蔑視の視線を向ける「ヘイト」まで、多種多様なバリエーションが存在する。
こうした各種メディアにおける「日本スゴイ!」の自画自賛プロパガンダは、アジア・太平洋戦争中、大日本帝国下の新聞、書籍、雑誌などにおいて極めて盛んに行われ、それはまさに「自画自賛のディストピア(暗黒郷)」とでもいうべき状態であった。
2016年10月18日、岩上安身は『「愛国」の技法』『神国日本のトンデモ決戦生活』『「日本スゴイ」のディストピア』などの著書がある早川タダノリ氏にインタビューを敢行。早川氏がこれまでに収集した、戦前・戦中の書籍や広告を参照しつつ、大日本帝国が展開した「戦争プロパガンダ」の実態を聞いた。
- 日時 2016年10月18日(火) 14:30~
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
「アメリカ人をぶち殺せ!」――婦人雑誌「主婦之友」等に掲載された敵愾心を過剰に煽るスローガン~国民生活の隅々まで「戦争プロパガンダ」を横溢させた大日本帝国
「アメリカ人をぶち殺せ!」「アメリカ人を生かしておくな!」――。この非常に過激な言葉が掲載されたのは、戦前、多くの家庭で読まれていた婦人雑誌『主婦之友』である。『主婦之友』は戦争末期の1944年12月、「これが敵だ!野獣民族アメリカ」という特集を組み、「ぶち殺せ!」「生かしておくな!」「屠(ほふ)れ!」など、敵国であるアメリカへの敵愾(てきがい)心を煽るスローガンを数多く掲載した。
こうした敵国への憎悪は、自国に対する自画自賛と表裏一体の関係にある。戦前戦中、日本は自らを「神の国」であると自己規定。新潮社の月刊誌「日の出」が、1933年に「世界に輝く 日本の偉さはここだ」という特集を組んだことをきっかけに、珍妙な自画自賛本の出版が相次いだ。
こうした「戦争プロパガンダ」の数々が生活の隅々にまで浸透したことで、国民は無謀な戦争に駆り立てられることになった。早川氏はインタビューの中で、「第2次安倍政権が発足して以降、こうした『日本スゴイ』系の自画自賛本は確実に増えており、歴史修正主義の台頭に対する注意が必要だ」と語った。
このインタビューの「後編」は11月初旬に行う予定。詳細な日程は、決まり次第お知らせする。
▲インタビューの様子――10月18日、IWJ事務所