クリミアとイエメン~西側メディアで報じられない真実(日刊ガイド2015年12月16日号より) 2015.12.16

記事公開日:2015.12.16 テキスト
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(平山茂樹)

 おはようございます。IWJの平山茂樹です。今年2月12日に、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、そしてウクライナのポロシェンコ大統領の4者協議によってウクライナ東部の停戦が合意されて以降、日本ではウクライナ関連の報道はめっきり減っています。

 しかし、今も、ウクライナとロシアによるつばぜり合いは続いているようです。

 先日、ロシアからクリミアに引かれた送電線が、ウクライナによって切断される、という事件がありました。その結果、クリミアに住む住民200万人以上が、一時、暗闇の中で生活するという事態に。このクリミアの危機を救ったのは、他ならぬロシアでした。

 インターナショナル・ビジネス・タイムズは、次のように報じています。

 「ウラジーミル・プーチン大統領が、半島を電撃訪問し、ロシア本土とクリミア間送電線の最初の区間落成を祝った。地域が広範囲の停電で真っ暗になった後に、戦略的に重要な領土への彼の訪問が行われた。

 ウクライナのエネルギー封鎖に見舞われたとモスクワが主張しているクリミアは、“電気の橋”が完成すれば、ロシアから電力を受け始める。海底ケーブル・プロジェクトは、12月末までに完成する予定だったが、クリミアの電源供給が止められた後、前倒しにされた」

 記事によれば、停電によって真っ暗になったクリミアにプーチン大統領が電撃訪問し、ロシアからクリミアに電力を供給する「海底ケーブル・プロジェクト」を前倒しにすることを決定した、ということです。

 米国とキエフ政府は、米国の民間の傭兵会社(かつてのブラックウォーターなど)まで使ってウクライナ東部で散々危機を煽り、クリミアを巡っては「第3次世界大戦勃発か」とまで騒がれました。それほど、ロシアとウクライナの対立は深刻な状態にあったのです。

 しかし、今回のように、クリミアにおいて、電力のような生活に必要不可欠なインフラをロシア側が整備したということは、この地域におけるロシアのプレゼンスが今まで以上に高まっていることを示している、と言えるでしょう。

 言いかえると、電気の供給を遮断させたことで、ウクライナは、クリミア統治の正当性を自ら放棄してしまった、ともいえます。

 次は、中東からのニュースです。

 ロシアのメディアSputnikは、アムネスティ・インターナショナルの発表として、イエメンに対し軍事作戦を行っているサウジアラビアが、イエメンの数百もの学校を故意に破壊している、と伝えました。

 アムネスティ・インターナショナルとイエメン政府によれば、サウジアラビアの空爆により、1000校あまりの学校が稼働不可能となり、254校は全壊した、ということです。

 イエメンを巡っては、今年3月からサウジアラビアが軍事介入を開始。依然として、サウジアラビアは空爆を継続させています。

 中東における米国の「傀儡国家」として知られるサウジアラビア。しかし今年3月からのイエメンへの軍事介入は、米国に事前の承認を取らず、独自に行なったものであると言われています。サウジアラビアは、米国に頼らず、核武装をも視野に入れて、独自に軍事大国化への道を進んでいるとの見方もあります。こうしたサウジアラビアの思惑については、岩上さんが日本女子大学教授の臼杵陽氏に詳しくお話を聞いていますので、こちらをぜひご覧ください。

 イエメンは「中東の最貧国」と言われ、今回のサウジアラビアの空爆によって、大量の難民が発生しています。今回、アムネスティ・インターナショナルが告発したように、戦争と無関係の学校に空爆することなど、断じて許されることではありません。IS(イスラム国)が席巻しているシリア、イラク情勢だけでなく、イエメンの情勢についても、IWJは引き続き報じてゆきますので、どうぞご注目ください。

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