【IWJブログ・特別寄稿】『マイナンバー導入によって予想される詐欺被害』インターネット・セキュリティ評論家の滝本圭氏がマイナンバーに警鐘を鳴らす!

記事公開日:2015.10.15
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 「個人番号カードを持ち歩いて軽減税率の還付を受けなさい、というのは、常に『実印』を持ち歩きなさい、と言われているのと同じくらいリスクを負うものだ」――。

 安全性に多大な疑問を残すマイナンバー制度の中止を求めるべく、インターネットセキュリティ専門家の滝本圭氏から、IWJに特別寄稿が寄せられた。

 滝本氏は、大手プロバイダー管理者としての自身の豊富な経験から、【IWJブログ・特別寄稿】元・大手プロバイダー管理者が明かす! セキュリティ突破は想像以上にたやすい! マイナンバー施行開始 <前編>の中で、パスワードの管理者がアルバイトに任される現場の実態や、パスワード持ち出しの容易さを暴いた。

 今回、滝本氏は、特別寄稿の中編の中で、マイナンバーの利用拡大により、情報漏洩の危険性が上がるとされる原因や、万が一情報漏洩した場合の、想定される犯罪手口などを解説した。

 マイナンバーが戸籍と結びつくことで、住民票が不要になる、という政府案は、結婚詐欺や出身地差別などの危険にもつながりかねない。また、振り込め詐欺や、さらにはプライバシー情報を握られることで現場被害も格段に増えるのではないか、という懸念も述べている。

 マイナンバーの発送は、2015年10月中旬以降とされている。手元に届く前にぜひ、以下に掲載する特別寄稿の中編をご一読いただき、自分の個人情報がどのような危機にさらされるのか、一考していただきたい。

(特集担当&前文・城石愛麻)


元・大手プロバイダー管理者が明かす! マイナンバーの流出で、結婚詐欺や出身地差別が行われる!? マイナンバー施行にどもなうセキュリティ危機<中編>

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「住民票不要」で、なりすましのハードルがグッと下がる!

 政府が訴えるマイナンバー導入後のメリットの一つが、社会保障や税、災害対策の手続などの際に『住民票が不要になる』ことだ。内閣官房作成のWebページ「マイナンバー 社会保障・税番号制度」の<よくある質問(FAQ)>には、次のようにある。

 「Q1-6 マイナンバー(個人番号)が導入されると添付書類が不要になると言われていますが、住民票の写しや戸籍の添付が全て不要になるのですか?

 A1-6 マイナンバーの導入により、平成29年1月から国の行政機関など、平成29年7月から地方公共団体で情報連携が始まり、社会保障や税、災害対策の手続で住民票の写しなどの添付が不要になります」

 ここで思い出してほしいことがある。前回記事で紹介したように、知的障害者になりすまして口座開設や消費者金融からの借り入れを行う詐欺は、「住所・氏名・年月日・電話番号」を把握すれば、いとも簡単に実行できてしまう犯罪である。

 従来であれば、「住所・氏名・年月日・電話番号」の情報を取得するためには、住民票を取得しなければならない。住民票は不正に取得したことが分かれば、処罰の対象となるため、「住民票取得」が、犯罪実行の上で、一つのハードルとなっていたと言える。

 しかし、マイナンバー導入により、社会保障や税、災害対策の手続に住民票が不要となれば、「住民票取得」というハードルを超える必要もなく、誰かのマイナンバーを入手するだけで、勝手に免許取得(身分証取得)や口座開設などができるようになってしまうのだ。

「戸籍謄本不要」で、すべての身分情報がリスクにさらされる!?

 IT総合戦略本部の「マイナンバー制度活用推進ロードマップ(案)」によると、2018年に「戸籍制度の見直し」とある。マイナンバーの導入により、「戸籍謄本」が不要になるかもしれない。

 2015年3月15日の日経新聞『戸籍にもマイナンバー適用 結婚・相続で謄本不要』には、以下のようにある。

 「政府は日本に住むすべての人に割り振る社会保障と税の共通番号を、2018年にも戸籍に適用することを検討する。結婚やパスポート申請、遺産相続といった行政手続きの際に、戸籍謄本などが不要になる。将来的にはインターネットで結婚などの手続きが可能になる見通しだ」

 住民票の管理されている場所を「現住所」と呼ぶのに対し、戸籍の保管されている場所を「本籍地」という。本籍地は、個人を特定することのできる重要な情報であり、そうそう簡単に提出を求められるものではない。住民票を発行してもらう際にも「本籍地を記載するか否か」を選択することができるようになっている。この本籍地が露見してしまうと、相続や結婚など、重要な法律上の手続きで「なりすまし」が行われる危険性がある。

「安心・安全です」と言いながら、施行翌日には早くも現金被害

 マイナンバーの漏洩リスクに対し、政府は「従来より厳しい罰則がある」として、安全性を強調するが、どれだけ厳しい罰則を設けたところで、犯罪をなくすことはできない。

 実際、マイナンバーに関する不審電話などの相談は、すでに消費者庁へ複数件寄せられており、施行開始の翌6日には、早くも現金被害が発生した。消費者庁発表は以下のとおりだ。

 「公的な相談窓口を名乗る者から電話があり、偽のマイナンバーを教えられた。その後、公的機関に寄付をしたいという別の男性から連絡があり、そのマイナンバーを貸してほしいと言われたので教えた。翌日、『マイナンバーを教えたことは犯罪に当たる』と寄付を受けたとする機関を名乗る者から言われ、記録を改ざんするため金銭を要求され、現金を渡してしまった」

 「マイナンバー制度は、安心・安全の仕組みです」と胸を張る政府の主張は、早くも信頼が揺らいでいる。

国会議員とて例外ではない! マイナンバー漏洩による被害

 自民・公明両党は、積極的にマイナンバー法案を推進してきた。

 しかし、これまで述べてきたような、詐欺被害など情報漏洩による被害は、政治家とて免れうるものではない。いや、むしろ、政治家や芸能人のように、顔や名前を公にする立場にある人ほど、マイナンバーによる被害は大きいかもしれない。

 源泉徴収票にはマイナンバーの記載が義務付けられるため、国会議員・公設秘書と言えども、税務署職員・国会事務職員のみならず、区役所・市役所の職員、窓口アルバイトなど、多くの人にマイナンバーを共有されることになる。こうなれば、誰から漏洩したのか追跡するのは難しいだろう。

 わたしたち一般国民は、マイナンバー制度導入により、詐欺被害にあうリスクを薄く広く全体に負わされた形だ。個人番号カードを持ち歩いて軽減税率の還付を受けなさい、というのは、常に「実印」を持ち歩きなさい、と言われているのと同じくらいリスクを負うものである。

 マイナンバーを積極的に推進してきた与党政治家は、国会議員であろうと詐欺被害の対象となる、ということを自覚すべきだろう。たとえば、誰かが国会議員のマイナンバーを入手して、マイナンバーに紐付けられた預貯金や自動車免許番号を基に、国会議員のプライバシーなどをネットの掲示板などに公開してしまう可能性もある、ということを慎重に考えるべきだろう。

「怨恨」や「悪ふざけ」でネットにマイナンバーがさらされる日

 政治家を含む市民の個人情報が、マイナンバーによって漏洩される危険性について論じてきた。ここから、具体的に想像されるのは、どのような被害だろうか?

 企業で言えば、マイナンバーを管理する経理担当や人事担当が、従業員の退職後、怨恨からその人のマイナンバーをネットに流す、といったケースだ。

 現在も罰則があっても、自治体の住民票データは売買され、家族構成を把握して振り込め詐欺などに悪用されているというのに、多種の情報がリンクしたマイナンバーは、被害者の高齢者に、実の息子だと信用させるに充分な詳細情報を詐欺集団に提供してくれる。

「本籍地」で就職差別が行われた記憶―歴史的タブーを再発させかねない!?

 現在、就職する際は、本籍地を記載していない住民票の提出を求められるのが普通だ。

 企業が本籍地情報の提出をあえて求めないなぜか? それは、1975年に露見した「被差別部落地名総監事件」の記憶があるからだ。

 この事件は、全国の被差別部落の所在地を示した『被差別部落地名総監』を、上場企業をはじめとする多くの企業が購入し、被差別部落出身者を採用選考から排除するための身辺調査に使っていた、という事件だ(「東京人権」『就職差別を根絶し公正な採用選考を「部落地名総鑑」事件から40年』)。

 憲法22条には、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と明記されている。被差別部落出身者という理由で採用選考から排除することは、重大な憲法違反であり、人権の侵害だ。

 この事件が露見して以降、就職に際して、本籍地の提出を求められることは、基本的になくなった。本籍地とは、従業員であっても、経営者に知られないほど重要な個人情報なのだ。

 戸籍と結び付けられたマイナンバーの提出によって、会社が従業員の本籍地を自由に確認できようになったら、再び、出身地差別が起こらないとも限らない。少なくとも、差別の記憶が残る人たちにとっては、自らの出身地を相手に知られることは、精神的苦痛をともなうものであるはずだ。

「結婚詐欺」で資産横領も!? 「戸籍謄本不要」により予想される被害

 前述の日経新聞記事によれば、マイナンバーが戸籍と結びついた場合、戸籍謄本を提出することなく結婚をできるようになるという。

 また、2015年9月のマイナンバー法の改正により、2018年には、マイナンバーが銀行口座と結びつくことも決定した。

 ここから想像されることは、詐欺師が漏洩したマイナンバーを悪用して、見知らぬ資産家と勝手に結婚手続を行い、資産を自分に宛て贈与したり、相続してしまったり、という犯罪だ。個人のマイナンバーを入手し、銀行のデータや行政期間のデータから名寄せを行えば、その人の資産や家族構成などを集めることは不可能ではない。

 振り込め詐欺の手口に見られるように、詐欺師は個人情報の名簿を業者から買い取り、詐欺などに使う。マイナンバーによって、家族構成と銀行口座の預金高を知ることができるようになれば、そのような「お宝情報」が載った名簿が、今までより格段に簡単に作られ、出回るだろう。そうなれば、詐欺による被害はこれまでとは比べ物にならないほど大きなものになるだろう。ネットの情報や操作に弱い高齢者は、カモにされてしまう可能性が格段に高くなる。

 また、どんな人でも、他人に知られたくないプライバシーがあるものだ。どんな情報を公開されると困るか、というのは、その人その人で違う。プライバシーを握られることで、恐喝の材料にされる場合もありうる。個人情報を全て公開するぞ、などという脅しに対して、誰もが毅然とはね返すことができるかどうか。自分だけでなく、家族や親戚のプライバシーまで手に入れられてしまう可能性も、大いにあるのである。

「メリット」よりも、実害の方が多い―マイナンバーは延期か中止を

 以上見てきたように、マイナンバーから個人情報が漏れる可能性は、日本政府の自信とは裏腹に、とても高いものであり、その結果起こりうる犯罪被害は、従来の振り込め詐欺などとは比べ物にならないほど大きなものになるはずだ。

 本人確認は、「個人番号カード」がなくとも、運転免許証やパスポートで十分であり、マイナンバーがなくとも、結婚や相続は戸籍謄本を提出すれば何も問題はない。マイナンバー導入で失うものの方が多いはずだ。

 私は、マイナンバー導入の延期か中止を強く求める。

(文・インターネット・セキュリティ評論家 滝本圭)

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コメント “【IWJブログ・特別寄稿】『マイナンバー導入によって予想される詐欺被害』インターネット・セキュリティ評論家の滝本圭氏がマイナンバーに警鐘を鳴らす!

  1. 【IWJ特別寄稿】『マイナンバー導入と予想される詐欺被害、そして保守系政治家たち』インターネット・セキュリティ評論家の滝本圭氏がマイナンバーに警鐘を鳴らす! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/270588 … @iwakamiyasumi
    マイナンバー、庶民にとって百害あって一利なし。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/654632761228062720

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