「番号変更はできる」「責任は総務大臣にある」――マイナンバー推進の旗振り役・高市総務大臣が会見で断言。自治体の担当者は「え!? 初耳」。これでDV被害者を守れるのか!? 2015.10.6

記事公開日:2015.10.25取材地: テキスト動画
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(取材・記事 城石愛麻)

※10月25日テキストを追加しました!

 「具体的な被害が出なければ、番号変更に応じるとは言い切れない」――。

 10月20日、いよいよ通知カードの発送準備が開始された、マイナンバー。施行開始からまもなく、詐欺による現金被害や、住民票への誤印字、厚生労働省職員の汚職などが騒がれてきたが、またもや「衝撃的な事実」が発覚した。

 マイナンバーの制度設計全体を握る内閣官房が、「具体的な被害が出なければ、番号変更に応じるとは言い切れない」と明言したのである。

 マイナンバーのセキュリティ対策において主導権を握るのは総務省だ。総務省は、セキュリティやプライバシーの問題について問われると、必ず「番号変更」を持ち出す。「番号変更ができるから、万が一にマイナンバーが漏洩しても、安心だ」、というのだ。

 原則、「一生変更されません」とされているマイナンバーだが、番号利用法第7条2項には、「番号が漏洩して、不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り、本人の申請、または市町村長の職権により変更することができる」と定められている。

 しかし、この「変更」とは、番号が漏洩した人や、不安を感じる人の誰もが認めてもらえるようなものではないことが明らかになった。

 ちなみに、前述の内閣官房の明言を得るまでに、マイナンバーに関わる、総務省、内閣府、内閣官房へ何度も電話を繰り返さねばならなかった。「それはどこどこの管轄になります」、というお決まりの縦割りシステムだ。マイナンバー制度が、多数部署の絡んだ複雑極まる制度であることがよく分かる。多数部署が関われば関わるだけ、各部署は「責任逃れ」に走る。

 そのような状況の中、10月20日に行われた総務省記者会見で、高市大臣が「情報漏洩の『責任』は総務大臣にある」と明言したのは異例だった。

 しかしその後の取材を通し明らかになったのは、現場の自治体に最終決定を放り投げる総務省の実態だ。言葉こそ勇ましいが、実態と異なる大臣の発言は、明らかに「口を滑らしたもの」だろう。「安全・安心」の甘言に隠された、制度の瑕疵の数々を、徹底追及する。

■ハイライト

  • 日時 2015年10月6日(火) 10:30めど~
  • 場所 総務省(東京都千代田区)

「居所登録はまだ受け付けています」――遅すぎた対応・短すぎた申請期間の失態を打ち消すため? 実際にはもう「間に合わない」!

 マイナンバー法が施行された翌日、10月6日、東京・霞が関で行われた総務省の記者会見で、高市早苗大臣は、冒頭発言の中で一言もマイナンバーに触れなかった。制度構築は順調に進んでいます、ということなのだろうか。しかし、その後の質疑応答の中から、制度のスタートが万事順調というわけではないことが明らかになった。

 この日、幹事社をつとめた産経新聞記者が、「(10月20日に開始される通知カードの)送付にあたって、懸念点は?」と質問をすると、高市大臣は、「カードの不達」をあげた。通知カードは、簡易書留で郵送されるため、自宅で受け取れなければ、郵便局で一定期間預かられたあと、市区町村に戻される。

 しかし、受け取れないのは、たんに留守にしていたから、という理由だけに限られない。DV被害者や東日本大震災の被災者など、住民票の住所と異なる住所地に住む人もいる。そのような人たちに対し総務省は、2015年8月24日から9月25日まで、「居所登録」を受け付けていた。9月25日時点で、申請は全国26万4千件あったという。

 しかし、この「居所登録」の必要性について、どれだけ周知が徹底されたであろうか。マイナンバーについて、つい最近まで何も知らなかったという人は、少なくない。にわかにマイナンバーについて調べ始めて、今頃「居所登録」の必要性を知った、というDV被害者の方もいるのではないだろうか。そういう人はどうなるのだろう?

 申請期間が1カ月と、非常に短く、告知もぎりぎりだったためか、総務省は、申請期限としていた9月25日以降も、「送付のための居所登録を可能とする」とする発表をしている。10月6日の記者会見では、高市大臣も以下のように述べている。

 「居所登録の手続については、先般も申し上げましたが、9月25日が申請期限となっていましたが、今後も、居所登録ができなかったという方、また、新たに発生するDVも想定されることから、DV等被害者や東日本大震災の被災者の方について、『住所地で通知カードを受け取れずに住所地の市区町村から再送する場合』や、『通知カードがDV等加害者に届いてしまったために、マイナンバーを変更して新たな通知カードを送付する場合』も想定できますから、送付のための居所登録を可能とするということであります」

誤解する人続出! 「居所登録申請」は「延長」されたわけではない! 誤解のままでは、命に関わる問題につながることも

 総務省の発表、および高市大臣の発言を聞いた人のうち、彼らのいわんとすることを正しく理解できる人はどれだけいるだろうか? IWJ記者は、この点をはっきりとさせるため、会見後、総務省に確認の取材を行った。

 「9月25日以降も、申請を受け付ける、という総務省の発表は、今申請すれば、登録住所でカードを受け取れる、ということですか?」質問したところ、総務省の担当者は、「非常に多くの人が勘違いをしているのですが」と前置きしたうえで、次のように説明した。

 「10月20日より発送される通知カードは、10月5日時点で住民票に記載されている住所、もしくは、居所登録された住所に届きます。通知カードを送付した際に受け取ってもらえず、市区町村に戻されたものは、10月6日以降に居所登録をしていれば、その住所地に転送します」。

 え!? それでは何の意味もないのでは!? せっかく申請しても住民票住所地に送られてしまうのであれば、DV被害者の場合、加害者の住む住所に届いてしまうことになる。なんのための「居所登録」なのか、まるで意味がない。私の聞き間違いではないかと思い、何回も担当官に聞き直して確認したが、間違いではなかった。確認の結果わかったことは、「通知カードが初めて送られてくる際の居所登録期限は延長されてない」という、驚きの事実だった。

 10月3日の読売新聞「マイナンバー 通知先変更受け付け延長 総務省、自治体に対応要請」では、「10月5日から始まる共通番号(マイナンバー)制度を巡り、総務省は2日、番号を記載した『通知カード』の郵送先の変更申請を、当面受け付ける方針を示した」としているが、「申請が延長された」というのは、誤解を招く表現だろう。

 DV被害者などは、加害者の住む住民票住所地に自分のマイナンバーが送られてしまうことによって、実際的・精神的被害を受ける可能性がある。今年の7月には、大阪で、夫からDVを受けて別のマンションへ避難していた女性が、住所を突き止めた夫によって、帰宅時を車ではねられるという事件も起きた(毎日新聞、2015年7月27日『殺人未遂:DV夫、避難の妻はねる 2人軽傷、包丁持ち待ち伏せ 容疑で逮捕 大阪・藤井寺』)。

 マイナンバーの通知カードに、被害者の住所地が書かれることはないが、番号を控えて、各所で名寄せを行えば、相手の重要な個人情報を突き止めることができてしまう。

 一斉に住民票住所地に、個人の特定に結びつくようなカードが送られること自体、多くの問題をはらむのだ。そのうえ、「居所登録」の申請期間が1カ月しかなかったこと、期限後、実質的には「延長」の措置が取られていないことは、人によっては命にかかわる問題に発展しかねない、重要な瑕疵と言える。

 期限が延長されたように伝える報道は言語道断だが、ひと通り聞いただけでは正しく理解しきれないような総務省の説明にも、「国民の安全・安心を守ろう」という気持ちを感じられない。

 このような説明をしても、非常に多くの人が「10月6日以降も、申請をすれば登録住所で通知カードを受け取れる」と勘違いをしているなら、さらにより丁寧な説明がなされるべきだろう。

番号変更は「被害が出てから」!? 「できます」と断言した大臣発言の裏には、明確な基準もなし!

 マイナンバーの通知カードが漏洩した場合などに不正利用されることも想定し、総務省は「番号変更を受け付ける」としている。

 しかし、マイナンバーは「原則、生涯不変」とされる。申請をすれば誰もが変更を認めてもらえるものではなさそうである。番号の変更を認めるのはどのようなときか、明確にするため、IWJは総務省に確認をした。

 電話に答えた総務省担当者は、「マイナンバーの全体的なことは、内閣官房へお願いします」として、IWJ記者の質問には答えなかった。たらい回しである。続いて、内閣官房に同様の内容を伝えたところ、複数の部署でさらなる「たらい回し」にあったあげく、ようやく担当者にたどり着いた。

 IWJ記者が「番号変更は、どのようなときにおこなわれるのですか?」と尋ねたところ、担当者は番号法7条2項の「番号が漏洩して、不正に用いられるおそれがあると認められる場合」に該当する場合であると回答した。

 「『おそれがある』というのはあいまいだが、どのような状態を想定しているのか?」と重ねて問いただすと、担当者は、「変更を認める具体的な基準はまだ決まっていない」と言葉を濁した。

 さらに、IWJ記者が、「番号が不正に利用されたら、変更されるのか?」と尋ねると、担当者は「不正に利用されたことが明らかである場合には、変更を受け付けます」とした。

 IWJ記者が念を押すように、「たとえば、マイナンバーの書かれたカードをどこかに置き忘れてしまい、手元に戻ってきたけど、誰かに番号を見られたかもしれず、不安だ、という場合にも、変更は受け付けられないのか?」と聞いたところ、とうとう担当者は、「申請を受け付けるとは言い切れません」と答えた。

 被害が出てから番号を変更するのでは、遅すぎる。「番号変更」は、マイナンバーのセキュリティ対策を主導する総務省の、切り札だったはずだが、番号が漏洩しただけでは、必ずしも変更に応じてもらえるわけではないことが、明確になった。

最終的には「自治体任せ」!? 「責任は総務大臣にあります」という実態にあわない大臣発言

 DV被害者に関しても、番号変更は被害が出るまで待たねばならないというのか? 10月20日行われた総務省の会見で、IWJ記者から番号変更について問われた高市早苗大臣は、「番号変更はできます」と明言した。以下が、そのときの質疑応答だ。

(…会員ページにつづく)

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