自民党石破幹事長「高い関税率で外国からの産品の輸入を防ぎさえすれば農業は良くなるのか」―自由民主党 街頭演説会(東京有楽町) 2013.4.2

記事公開日:2013.4.2取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・阿部光平、久保元)

特集TPP問題

 2013年4月2日(火)18時、東京都千代田区の商業施設・有楽町イトシア前において「自由民主党 街頭演説会」が行われた。松本洋平遊説局長の挨拶のあと、中川雅治政調副会長、高市早苗政調会長、石破茂幹事長が順に演説。最後を任された石破幹事長は、経済、地震対策、領海問題、TPP、一票の格差の問題などについて幅広く語り、東京都議会選挙と参議院選挙に勝利して「まっとうな日本を取り戻す」という姿勢を強調した。(※サマリーと各議員の演説要旨を追加しました)

■全編動画

  • 日時 2013年4月2日(火)18:00~
  • 場所 有楽町イトシア前(東京都千代田区)

 「昨年の選挙戦で訴えた『頑張れば報われる社会を取り戻す』『戦後最悪となった外交や安全保障を取り戻す』『国民の財産と暮らしを守る政治を取り戻す』を実行し、政治は誰がやっても同じではないことを実感していただく」という松本洋平遊説局長の決意表明で始まった自民党の街頭演説。冷たい雨が降りしきる中にも関わらず、多くの聴衆が足を止めた。

 トップバッターを務めた中川雅治政調副会長は、安倍首相が打ち出す『大胆な金融緩和』『機動的な財政政策』『成長戦略』という緊急経済対策について「これら3本の矢を次々と放つことによって、デフレから脱却し日本経済を復活させる。安倍総理は、日銀に物価目標2%を約束させ、素晴らしい日銀総裁を選んだ。日本にはまだまだ潜在的成長分野がたくさんある。これにインセンティブを与え、成長させていく」と大きな自信をみせた。

 続いて高市早苗政調会長は、「国民の命、領土、資源、主権、名誉を守り抜くのが、国家の究極の使命」した上で、集中豪雨対策、巨大地震に備える事前防災、通学路の見直しやガードレール設置など、具体的な事業展望を発表。3万2700人の邦人が滞在している韓国と北朝鮮の情勢が緊迫していることを引き合いに出し、自衛隊法改正の必要性についても強く訴えた。

 最後に登場した石破茂幹事長は、これまでの自民党について「権力があるのは当たり前、資金があるのは当たり前、マスコミが採り上げてくれるのも当たり前、色んなお願いに来るのも当たり前。いつの間にか与党でいること自体が存在意義になっていた」と分析し、今後は「年功序列を廃し、実力主義を貫き、国民に嫌われても本当のことを言っていく。高い支持率があるから参議院選挙までは、本音を言わずにおこうなどとは考えていない」と宣言。「わが国は経済、財政、外交、安全保障、農業、農村、教育など様々な面において危機的状況にある」との認識を前提に、経済、地震対策、領海問題、TPP、一票の格差の問題などについて幅広く語った。

 社会保障と経済成長について石破幹事長は「我々は社会主義国家ではない。努力した人もしない人も一緒、困っている人もそうでない人も一緒、そういう国家とは決別していかねばならない。本当に困っている人に十分な手当てをするのであって、そうではない人に対しても同じようにやっていたら、消費税を何パーセントあげても足りない」と述べ、今後の動向が注目を集める日本の農業については「高い関税率で外国からの産品の輸入を防ぎさえすれば農業は良くなるわけではない。今までも高い関税を一部の産品に張ってきたが、農地は減る一方。農業に後継者はいない。生産額も手取りも減る。いかなる生産者も一緒に取り扱うことをやっていては強い産業はできない」とTPPの参加に前向きな姿勢を示した。

 また、『一票の格差問題』にも触れ、「我々は4割の得票しかないのに8割の議席を持っていることを忘れてはならない」と語ったほか、「総理が決めたことに『選挙で落ちる』『反対だ』などと党内から異論が出ることもあるが、自分たちが不利になっても、国家・国民のためになることをやる」と明言。東京都議会選挙と参議院選挙に勝利して、3年4年と続く安定した政権を築き「まっとうな日本を取り戻す」との方針を強調した。

以下、各議員の演説要旨

松本洋平衆議院議員(遊説局長)

 「わが党は、昨年の選挙戦で『頑張れば報われる社会を取り戻す』『戦後最悪となった外交や安全保障を取り戻す』『国民の財産と暮らしを守る政治を取り戻す』という約束を掲げ、政権を託していただいた。総選挙から3ヶ月過ぎた。できたこともできていないこともある。選挙で勝ったからといって、わが党が完全に信頼されたとは思っていない。緊張感を持って『政治は誰がやっても同じではない』ことを実感していただく」

中川雅治参議院議員(政調副会長)

 「総選挙で勝利し119名の新人議員が誕生した。自民党は若いエネルギーであふれ返っている。安倍総理の強いリーダーシップで「日本が明るくなってきた」という声を耳にする。安倍総理は急ピッチで政策を次々と実施している。緊急経済対策の『三本の矢』である『大胆な金融緩和』『機動的な財政政策』『成長戦略』は、デフレから脱却させ、日本経済を復活させるという安倍総理の決意の表れだ。日本にはまだまだ潜在的成長分野がたくさんある。これらにインセンティブを与えていく」

高市早苗衆議院議員(政調会長)

 「我々は、日本人の限りない可能性を信じている。古来から大切にしてきた価値や強みを活かし、とどまることなく挑戦を続けていくなら、道は開けると信じている。我々は、『力強く成長する日本』を取り戻す。私達の祖先は勤勉に働き、田畑(でんばた)を耕し、産業を興し、子ども達を育て、美しい地域社会の絆を紡ぎながら、素晴らしい日本国の伝統文化を守り続けてきた。命を賭けて国を守った祖先がいる。我が国は世界一の科学技術国に成長した。諸外国に比べると清潔な社会と治安がある。我々は、自立と勤勉の意味を取り戻しながら、美しく、強く、成長する日本を創っていく。国民の命、領土、資源、主権、名誉を守り抜くのが、国家の究極の使命。集中豪雨対策、巨大地震に備える事前防災、通学路の見直しやガードレールの設置。駅にホームドアの設置等を行う」

 「アルジェリア人質事件。わが国の今の法律では、相手国任せで避難するしかない。自民党は数年前、相手国において陸路で邦人を警護できるよう、自衛隊法改正案を議員立法で提出した。朝鮮半島情勢が緊迫している。韓国には3万2700人の邦人が滞在している。まもなく自衛隊法改正案が閣議決定されると承知している。国民の命を守る取り組みを進めていく」

 「ひとりでも多くの雇用が確保され、絶え間ないイノベーションが起き、地域社会の隅々まで活発な経済成長が行き渡る、そういう国にする。それらが、私達の生活に還元されるようにする。我々は、勤勉の流儀を取り戻す。多くの人々の厚意で支えられている生活保護の不正受給を許すことはできない。ひとりでも多くの人が働ける、税収も増える、困っている人を支えあえる日本を創っていく」

石破茂衆議院議員(幹事長)

 「私達は野党だった時の気持ちを忘れてはならないと思っている。我々が野に下った時、民主党にだまされた国民が悪いとか、マスコミの自民党叩きにはまったのだとか、そう言う人もいた。だが我々は至らぬところがあったから政権を失ったのだ。何が間違っていたのか。なぜ国民の気持ちが自民党から離れていったのか。当時、谷垣総裁のもとで、何が間違っていたのか検証した。我々は長く与党だった。権力があるのは当たり前、資金があるのは当たり前、マスコミが採り上げてくれるのも当たり前、人が色んなお願いに来るのも当たり前。いつの間にか、与党でいること自体が存在意義になっていた。人が来ないなら出向けばいい、マスコミが採り上げないなら街頭に立てばいい。金がないなら知恵を出し汗をかけ。役人が教えないなら自分で考えろ。年功序列を廃し、実力主義を貫く。国民に嫌われても本当のことを言う。そういうところが評価され政権を託されたと思う。安倍政権になり、高い支持率をいただいている。しかし、少しでも驕ったら、あっという間に無くなってしまう。安倍総理がよく言っている。『支持率が上がれば上がるほど、謙虚でなければならない』。我々はこのことを忘れてはならない」

 「わが国は危機的状況にある。経済の危機、財政の危機、外交の危機、安全保障の危機、農業や農村の危機、教育の危機。『危機突破内閣』と言うからには、全身全霊で危機に立ち向かっていかねばならない。大胆な金融緩和だけで景気はよくならない。お金が本当に使われるのか。金融機関が金を貸してくれるのか。市場に出たお金が使われないとか投機に回るとか、そういうことがあってはならない。財政出動は機動的にやるから意味がある。のべつ幕なしにやって良い訳ではない。どこに投資すれば人命が救われるのか。いつ直下型地震が来てもおかしくない状況である。どうやって強靭な国土を造っていくのか。極めて急ぐことである。機動的財政出動とはそういう意味である。昔のようにどこでもかしこでも同じものを造るということではない。財政出動はする。しかし、財政には規律が必要。我々は社会主義国家ではない。努力した人もしない人も一緒、困っている人もそうでない人も一緒、そういう国家とは決別していかねばならない」

 「領海侵犯した船を排除する法律を持っていない。我々は隙があるから付け込まれる。法整備を急がねばならない。海上保安庁の能力は十分ではない。空中や海中からの脅威には対処できない。自衛隊と海上保安庁の連携も不十分。ただ、海上保安庁をすぐに自衛隊に置き換えるオペレーションが正しいとは思わない。警察と自衛隊の中間的な組織を考えなければ、隙のない国家づくりはできない」

 「農業や農村の問題。高い関税率で外国からの産品の輸入を防ぎさえすれば農業は良くなるのか。決してそうではない。今までも高い関税を一部の産品に張ってきた。それでも農地は減る一方だ。農業に後継者はいない。生産額も減るし、手取りも減る。いかなる農業者も一緒に取り扱うことをやっていては、強い産業はできない。農業をどう守るか正面から取り組んできたとは言えない」

 「一票の格差を一日も早く是正しなければならない。我が国は、今まで一度たりとも『1:2』の格差に収めたことがない。いかに『1:2』に収めていくのか。我々は昨年、『0増5減』案を出した。昨年2月の野田総理と谷垣総裁の党首会談で、野田総理は『一票の格差是正に最優先で取り組む』と言った。にもかかわらず、その結論を得なかったのは、はっきり言って民主党の諸君の責任である。『一票の格差は違憲』という判決が出る前に対処すべきだった。まもなく政府から選挙区の区割りを変える案が出てくるはず。何にも増してこれは最優先。議論の余地はない。なんとしても成立させる。自民党は、思い切って比例区の定数を減らす案を作る。小選挙区は、第一党が大きく議席が獲れるようにブレる。我々は4割の得票しかないのに8割の議席を持っているということを忘れてはならない。比例区で定数を30減らす。ほとんど自民が強いところで議席が減ってくる。我々は自分たちの利益よりも国民が第一だ。自分たちが不利になっても、国家・国民のためになることをやる」

 「我々は、甘い言葉で国民を惑わせることはしない。約束を破ればどうなるか。いったん総理大臣が決めたことを、『選挙に落ちる』『反対だ』などと党内から異論が出る。あってはならないことだ。我々は民主党から『反面教師』として学ばねばならないことがある。『約束を絶対に違(たが)えてはならない』『できもしないことを言わない』『総理が決断したからには不利なことであっても支える』ということだ」

 「我々は昨年12月16日に政権を奪還したのではない。7月の参議院選挙と、その前に行われる東京都議会選挙で必ず勝利して、はじめて政権奪還が完成する。ただ、政権奪還は手段であり目的ではない。何をやって我々は政権をまっとうするのか示していく。東京都議会選挙も全身全霊で戦う。東京を取り戻す、日本を取り戻す、まっとうな国を取り戻す。東日本大震災追悼式典。去年は両陛下ご臨席の際、一同着席のままだった。国歌斉唱もなかった。今年は違う。陛下ご臨席の際は一同起立したし、国歌をみんなが誇りを持って歌った。少しずつまっとうな日本を取り戻しつつある」

 「我が国では、選挙に大勝したら次は負ける、負けたら次は勝つというようなことが繰り返されてきた。我々は昨年の衆議院選挙で大勝した。しかし参議院選挙で負けるわけにいかない。これまで総理大臣が1年ごとに変わる事態が続いた。これによってどれほど国益が損なわれたか。我が日本国に3年、4年の安定した政権ができることが、強い国として蘇ることができるかを決めるのだ」

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