「あとの総仕上げはPKOで自衛隊が死ぬことだ」元レンジャー隊員・井筒氏がPKO協力法に憤怒――「われ国と自衛隊を愛す、故に戦争法に反対する」学習会 2015.9.21

記事公開日:2015.11.4取材地: テキスト動画
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(取材:城石裕幸 記事:安道幹)

特集 安保法制反対メッセージ
※11月4日テキストを更新しました!

 「こう言いたいんですよ、安倍首相は。9条があったから、まともに自衛隊は住民保護もできなかった、戦死者も出した。だから9条も変えるんだ、って。それで憲法改正ですよ」――。

 2015年9月21日、伊藤塾東京校で「井筒高雄×泥憲和 われ国と自衛隊を愛す、故に戦争法に反対する」と題された学習会が開かれた。元自衛官である泥憲和氏は「日本はPKOから撤退したほうがいい」と述べ、日本が世界各国でこれまで取組んできた活動実績を踏まえつつ、PKO以外の国際貢献のあり方を提案した。

 また、元レンジャー隊員の井筒高雄氏も、今国会で成立した安全保障関連法案の一つである「国連平和維持活動(PKO)協力法」の改正について、その危険性や自衛隊内の実情を指摘し、「カンボジアPKOから23年、平和維持活動は時間とともに拡大し、今後は必ず自衛隊が海外で死ぬことになる」と憤った。

■ハイライト

「日本も人を出さなくては国際社会では評価してくれない」という自民党のまやかし ~日本のPKOへの人的貢献

 泥氏は、今回の安全保障関連法案をめぐる議論について、主に「集団的自衛権」に焦点があてられ、「PKOの積極参加」についてはあまり注目されなかったのはでないかと述べ、次のデータを示す。

「これは昨年(2014年)の数ですが、世界がどれくらいPKOに人的貢献したか。中国2192人、フランス939人、アメリカ113人、ロシア92人、日本271人。ドイツ214人。ドイツ、日本、イギリス、どちらも200人台です。実は日本はすでに西側諸国並みの貢献を実際やってきたわけです」

 泥氏は具体的な数字を持ちだし、政府・与党がたびたび使用するレトリック「日本も人を出さなくては国際社会では評価されない」は「まやかしだ」と批判した。

「PKOは、Peace Keeping Operationではなく、やってることはForceです」

 また泥氏は、平成25年度の防衛白書を参照しつつ、「9のPKOが国連憲章第7章のもとで強力な権限を与えられている」ことについて、この「強力な権限」が「自衛または任務の防衛に限り実力の行使が認められている」と記述された部分にあたると指摘する。PKO部隊による「実力の行使」について、この規定は、実際にはどれほどの制限を加えるものなのだろうか。

「『自衛または任務の防衛に限り』とされているが、実は武力行使の理由は二つしかないんです。一つは自己保全のため。もう一つは任務を守るため、つまり民間人を守るための武器の使用。だから、この『限り』というのはただの修辞です。つまり何でもできるということです」

 一方、今回の安保法案で改正された「国連平和維持活動(PKO)協力法」では、PKOにおける自衛隊の武器使用について、「いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を越える武器使用が可能」と新たなに追加・明記された。このような自衛隊による武器使用の権限の拡大について、井筒氏も次のように危機感を露わにする。

「もう今度の改正で、部隊や住民を守るためなら武器を使って相手を殺しちゃってもOK。駆けつけ警護という言葉はきれいなんだけど、何をするのかというと、一緒にやっている軍隊の人たちが戦闘に巻き込まれて、行方不明者が出ちゃったら探しに行くとかですね、ベースキャンプがやられているかもしれないという時は、日本の自衛隊もそっちまで出張っていって、バンバン武器を使って相手を蹴散らせながら、自分たちPKOの部隊を守る。PKOといっても、今は『Peace Keeping Operation』ではなく、やってることは『Force』なんですよ」

「PKOは政府軍の虐殺を止めることができない」

 しかし住民を守るためには、より攻撃的な武器使用も容認せざるを得ないのではないか。そのうえで現地住民は、そんなPKOを支持しているのだろうか。事態はそう単純ではないようだ。これに関して泥氏は、現在のPKOが置かれている深刻なジレンマを次のように説明する。

「PKOというのは相手国政府の同意がなければ派遣できないんです。ですが住民を虐待、虐殺しているのは反政府勢力だけでなく政府軍もやっている。ではPKOはどっちを止めることができるか。反政府勢力の行為を止めることはできるでしょう。だけど政府軍の行為を武力行使で止めることはできないんですよ。それしようとしたら、政府か出ていってくれと、こう言われたらPKOは身動きできなくなります」

 さらに、「ですから、同じように残虐行為をしているにも関わらず、政府軍の行為は野放し。そしてゲリラの行為ばかりをPKOが攻撃してくる。こうなると国連は中立性を失って、住民から見れば政府軍の味方をしているように見えてしまう。現実に、政府っていうのは決して民衆の味方でないことはいくらでもあることなんです」

 そのうえでスリランカ政府による2万人の住民虐殺や、南スーダンでの政府軍による残虐行為の事例を紹介し、すでにマリ、ソマリア、ゴラン高原、南スーダン等ではPKO部隊が武装集団に狙われ、死傷者が多発していると指摘した。

PKO以外にどのような国際貢献の方法があるか?~「平和構築」「選挙支援」「開発による平和構築」

 泥氏は、「日本はPKOから撤退したほうがいい」という。

 PKO以外の国際貢献の方法として、国連が行う7つの活動(「紛争予防」「平和維持(PKO)」「平和構築」「選挙支援」「開発による平和構築」「平和のための行動」「軍縮」「平和維持」)のうち、次の3点「平和構築」「選挙支援」「開発による平和構築」で、日本が重要な役割を果たせるはずだと指摘する。

(…会員ページにつづく)

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「「あとの総仕上げはPKOで自衛隊が死ぬことだ」元レンジャー隊員・井筒氏がPKO協力法に憤怒――「われ国と自衛隊を愛す、故に戦争法に反対する」学習会」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    2015/09/21 井筒高雄×泥憲和 われ国と自衛隊を愛す、故に戦争法に反対する(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/266003 … @iwakamiyasumi この二人、声を上げれない現役自衛隊員の想いを代弁してるのではないか。国を愛すると戦争をしないは同じ意味を持つ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/646456169007988736

  2. 武尊 より:

    >そしてこう言いたいんです、安倍首相は。『9条があったから、まともに自衛隊は軍事活動ができなかった、住民保護もできなかった、戦死者も出した。だから9条も変えるんだ』って。それで憲法改正ですよ」
     アメリカのご命令と戦前回帰したい日本会議の思惑からな(怒)
    さて、この二つの思惑は共通なのだろうか?米国は日本の戦前回帰なんぞ、絶対望まない。日本会議は米国の傀儡でいたいなんて、絶対に本音にはない。
    ということは、この二つのパワーバランスは何時か衝突を起こすんだな(恐)
    その衝突と世界のバランスが崩れた時が重ならない事を祈るしかないのかなぁ、、、(悲)
    崩れていれば、日本も消える時を迎えている、という事に成りかねない、、、。

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