「国家を愛せ、家族は仲良くせよ、国旗に敬意を表せと国民に求めている。まったくの勘違いだし、無教養だ」――樋口陽一氏、小林節氏、小沢一郎氏らが改憲に前のめりな安倍自民党政権を徹底批判 2015.4.20

記事公開日:2015.4.30取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 秘密保護法|特集 集団的自衛権|特集 憲法改正
※4月30日テキストを追加しました!

 「自民党は改憲草案で、国家を愛せ、家族は仲良くせよ、国旗に敬意を表せと国民に求めている。まったくの勘違いだし、無教養だ」──。憲法学者の小林節氏は、このように断じた。

 憲法という「国家の根本」に手を付けようとするなら、それ相応の英知が不可欠、という正論が色濃く反映されたシンポジウムが、2015年4月20日、「緊急鼎談 樋口陽一×小林節×小沢一郎 憲法を語る」と題して、東京都千代田区の憲政記念館で開かれた。

 慶應大学名誉教授の小林節氏は、日本国憲法をめぐる、連合国総司令部(GHQ)による押しつけ論について、「当時の支配階級は悔しさを感じたと思うが、普通の国民は違ったはずだ」とし、明治憲法から日本国憲法へのシフトにより、「格段に良い体制が、日本に生まれた」と述べた。

 東京大学名誉教授の樋口陽一氏は、日本がポツダム宣言を受け入れたことを重視し、過去に自由民権運動や大正デモクラシーがあった日本社会が、「民主主義の復活」を、ある種の積極性を伴いながら受け入れたことを強調した。

 自民党の改憲草案について、小沢一郎衆議院議員(生活の党と山本太郎となかまたち共同代表)は、旧体制への回帰意図が透けて見える、と指摘。「国家あればこその国民、という価値観がギラついている」と懸念を示した。

 3人が特に力を込めたのは、たとえ憲法9条に微調整の必要があるにせよ、憲法の支柱である立憲主義を蔑ろにして改憲に前のめりな安倍政権に、それをさせるのは非常に危険だ、という点だった。

 小林氏は、「思いつめた人たちが、憲法をどこに持っていってしまうのかと考えると、不気味でならない」と自民党を批判した。

記事目次

■ハイライト

  • 登壇者 樋口陽一氏(東北大学・東京大学名誉教授)、小林節氏(慶應義塾大学名誉教授)、小沢一郎議員(生活の党と山本太郎となかまたち代表)

国民の多くは「戦後憲法」を歓迎した

 司会役を務めた堀茂樹慶応大学教授の、「今日は3人の有識者に、憲法に関する根本的な話をしてもらおうと思う。狙いは、国民の憲法への認識を深め、立憲主義が存亡の淵にある中で、広く議論を深めることにある」との言葉でシンポジウムはスタートした。

 前半は各登壇者によるスピーチ。トップバッターの樋口氏は、まず、「民主主義と立憲主義は対立するのか」について論じた。

 国家権力の選出には、その時々の国民多数派の価値観が反映される。よって、国家権力の暴走に歯止めをかける立憲主義は、国民多数派の価値観を否定するものでもある――。

 一般的に、民主主義と立憲主義の対立性とは、上記のようなことだが、「一方は人民による支配を、もう一方は法律による支配を意味しており、現実の世の中では、民主主義で最大のものは選挙と政治。立憲主義では、裁判官が大きな役割を担う」と樋口氏は語る。

 その上で、両イデオロギーの間を考えることに人類の知恵が働くとし、「両者のどちらか一方しかない、という事態になったら、世の中は大変なことになる」と続けた。

 改憲派の政治家たちが好んで使う、「現行憲法は、GHQから押しつけられたもの」という主張については、「これは『誰が押しつけられたか』という視点に立つことが重要だ」と樋口氏は言う。

 「70年前の1945年8月15日直後に、日本の指導層にいた人たちにとっては、強い押しつけだったことは事実」としながらも、当時の平均的な日本国民の受け止め方は異なっていたとして、このように強調した。

 「これは大変なことになる、と不安にかられた国民はいたと思う。だが、それとは対照的に、『これで日本は新しくなる』と思った国民の方がはるかに多かった。当時の新聞の世論調査などが、そのことを物語っている」

「改憲する・しない」で始まる議論はナンセンス

 「日本には、1945年の(日本に降伏を求める)ポツダム宣言を受け入れないという道もあったが、それを選ばなかった」と言い重ねた樋口氏は、当時の日本が「民主主義の復活」を、ある種の積極性を伴いながら受け入れたことを強調した。「近いところでは大正デモクラシーが、遡れば自由民権運動があった日本の歴史を、米国側はよく勉強していた」

 憲法改正の必要性に話が進むと、巷間聞かれる「憲法を改正すべきか」という問題の立て方自体に難がある、と樋口氏は指摘した。

 「どんな必要性があり、何をしたいがために、どんな政治勢力が、どういう国内的・国際的状況の下で、今の憲法のどの部分を、どう変えたいのかを、明確にするのが大前提。それによって(国民は)賛成派と反対派に分かれる。これが憲法問題をめぐる国民的議論の正しいあり方だ」

 そして樋口氏は、「アジア諸国のみならず、米国との関係もぎくしゃくしている中で、自民党が2012年にまとめた草案に従って改憲を行うことには、とうてい賛成できない」と力を込めた。

憲法の微調整は「行われて当然」

 自民党の改憲草案を、「自民党は草案の中で、国家を愛しなさい、家族は仲良くしなさい、国旗に敬意を表しなさいと、国民に求めているが、まったくの勘違いだし、無教養だ」と喝破してみせたのは小林氏である。

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