「貴様、上官の命令は天皇陛下の命令だ!」と言われた時代に戻してはいけない ~立憲主義から憲法を考える7・1集会 樋口陽一氏・村山富市元首相講演 2013.7.1

記事公開日:2013.7.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

特集 戦争の代償と歴史認識
※樋口陽一東京大学名誉教授、村山富一元首相の講演全文文字起こしを会員ページに掲載しました。

 2013年7月1日(月)18時、東京都千代田区の星陵会館において、「立憲主義から憲法を考える7・1集会」が開催された。集会では、「96条の会」を立ち上げた樋口陽一氏(東京大学名誉教授・東北大学名誉教授)と、1994年に三党連立政権(自民党・社会党・さきがけ)で首相を務めた村山富一氏が講演し、立憲主義の観点から憲法を守ることの大切さを訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 樋口陽一氏(96条の会 代表、東京大学・東北大学 名誉教授)「立憲主義について(仮)」
  • 村山富市元首相「『村山談話』について(仮)」 他

 樋口氏は、96条先行改憲をもくろむ勢力の言い分である、「国会発議の要件を緩めれば、頻繁に国民投票ができ、それだけ国民の声を聞くことができる。これこそが民主主義だ」という主張を、「そうではない」と否定した。その理由として、「国民の意見を聞く方法に問題がある」と語り、国会議員が徹底的に議論を尽くし、議論を国民の前に示して、国民一人一人が「何が問題なのだろうか」と自分の考えを確かめてこその国民投票でなければならないとした。その上で、「国民投票の際の有権者は、憲法改正権を行使する権力者になる」とし、「有権者が、軽々しく決め急ぐことをも制限をするのが立憲主義。その限りにおいて、民主主義をも制限するのが立憲主義である」と強調した。

 村山氏は、戦後50年の節目に行った国会決議や「村山談話」を発表した経緯を振り返った。

 また、小泉純一郎首相(当時)による靖国神社参拝で冷え切っていた日中関係を、第一次安倍内閣当時の安倍首相が改善したことを、「中国側は高く評価している」とした上で、「村山談話を見直す」「侵略という言葉に国際定義はない」などと発言した安倍首相について、「韓国・中国などアジア全体のみならずアメリカからも、『昔の日本に戻るのか』という印象を持たれ、日本が孤立することになる」と批判した。さらに、「いまの日本があるのは、やはり憲法。憲法があったから日本は救われている」と語った。そして、かつて村山氏自身が徴兵された当時、日本軍の上官から、「貴様、上官の命令は天皇陛下の命令だ!」と叱責されたことを紹介し、「そういう時代に戻してはいけない」と聴衆に語りかけた。

樋口陽一氏(東京大学名誉教授・東北大学名誉教授)講演全文

 皆さんこんばんは。去る5月、大学の内外でそれぞれの研究をしております人間が集まりまして、この、憲法96条をまず変えようという、96条改憲論の筋の悪さを、もっと人々に知ってもらう必要があるという趣旨で、旗揚げをしました。6月14日に第1回目のシンポジウムを、上智大学を会場として行いました。あまり大きな教室ではありませんので、最初から念のため、会場の他に二つの会場を用意しておりましたんですけども、次から次へと足を運ばれる皆さんを、とても収容できなくて、結局、合計九つの会場をなんとかやりくりいたしまして、その間のいろいろな不手際をお詫びしながらも、およそ1200人に上る方々に、大いに私どもも励まされ、勇気付けられました。それと同時に、それだけたくさんの方々が夜中の時間に来られたということは、私たちが当面しているいまの問題の深刻さ、これを、ご参加いただいた方々とともに再確認した次第であります。

 何しろ、憲法改正のための手続きのハードルをまず低くしてくれ、そのあとは好きなようにやらせてもらうというのは、なんということはない96条改正論ですから、これは先程からお話であります立憲主義、権力を制限するということを願目とする憲法そのものを破壊する。そのこと自体の認識が、ここ数ヶ月の間に、私どもも、むしろ議題と言っては失礼なんですけど、むしろそう思っていいほどに、急速に世論の中に広がってきております。20分で話をしろということでありますので、限られた20分ですから、ここで述べることはいたしません。しかし、どうしても一点だけ繰り返し、6月14日にももちろんお話ししたことですけども、そのときお見えの方々も、ちらほら以上にここにいらっしゃいますけども、繰り返し強調しておきたいことがあります。それは、立憲主義と民主主義という、二つの言葉の間の関係についてです。

(…会員ページにつづく)

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