マスコミが作り上げたイメージに背中を押される捜査側、今更引き返せない検察との関係で生み出される冤罪の仕組み ~メディア報道の罪と罰 2014.11.26

記事公開日:2014.12.16取材地: テキスト動画
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(IWJ・松井信篤)

特集 PC遠隔操作事件

※12月16日テキスト追加しました!

 「『メディア報道の罪と罰』―PC遠隔操作事件と本庄トリカブト殺人事件を追う」と題したシンポジウムが11月26日(水)、明治大学大学院情報コミュニケーション研究科の主催で東京都千代田区の明治大学リバティタワーにて開催された。

■ハイライト

  • 司会 八木啓代氏(作家、「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」代表)
  • パネリスト 野間英樹氏(PC遠隔操作事件特別弁護人)、生越昌己氏(ITエンジニア、元Linux協会会長)、高野隆氏(本庄トリカブト保険金殺人事件弁護人)、森達也氏(映画作家、明治大学特任教授)、神保哲生氏(ジャーナリスト)

PC遠隔操作事件で浮かび上がった問題点

 来年2015年2月4日に判決を迎えるPC遠隔操作事件。この日、特別弁護人の野間秀樹氏は、改めて事件の概略を説明するとともに、事件の問題点を指摘した。野間氏は、PC遠隔操作事件において、事件との関連性があるとは一切わからない状態で5名の誤認逮捕者を出してしまったことや、マスコミが刑事を尾行し、逮捕前に容疑者が判明してしまった事態を問題として挙げた。

 また、日本の取調べには強引なものがあり、弁護団が「可視化しない限りは基本的に取調べに応じない」という方針で進めた結果、「警察はあまり取調べをしない状況が生じた」と報告。結果として、片山祐輔被告が主張することと、実際に出てくるデータを比較することができない状況に陥ってしまったという。野間氏は、可視化されない状況でなければ、取調べが行なわれないことを問題だと語った。

メディアの情報から受ける印象と自己判断

 ITエンジニアで元Linux協会会長の生越昌己氏は、保釈が取り消される前、今年2014年5月の公判後の記者会見で片山被告に会った印象を、「こいつには無理だ。今もって印象は変わらない」というものだったと振り返る。片山被告には「無能な彼」と「優秀な彼」という別人格が同居しているということが、後になってわかったと、生越氏は言う。

 こうした事情から、生越氏が片山被告との初対面で感じた印象と同様、片山被告が冤罪だと思っていた人達についても、「実はそんなに大きく間違っていなかったのだろう」と述べた。加えて、「心証というのはメディアの情報などからの印象に左右されやすく、どこまでが自分の判断なのだろうか」と疑問を投げかけた。

決定的証拠がなくても犯人に

 ジャーナリストの神保哲生氏は、片山被告が逮捕された2013年2月10日の時点では、片山被告を逮捕・起訴できるほどの証拠はそろっていなかったと説明。翌月の3月2日に釈放された後、勾留延長のために5分後には再逮捕されていたことなどから、2月10日の逮捕は、証拠が不十分なままで逮捕していたことが明らかだという。

 神保氏はまた、PC遠隔操作事件において、片山被告がサイバー犯罪ではない部分で捕まっているとし、仮にサイバー犯罪の部分だけを見れば、決定的な証拠を持たずして犯人に仕立て上げられていた可能性があると神保氏は述べ、「非常に危ない」と警告を発した。

本庄トリカブト殺人事件

 第二部では、1995年から99年に埼玉県本庄市で起きた保険金殺人事件が取り上げられた。トリカブトや風邪薬を用いて2人の男性を殺害し、その後、1人の男性が自分も殺されるかも知れないと警察の指示で病院へ入院。マスコミに告発した事件で、八木茂被告と3人の愛人が逮捕されている。

 3人の愛人はすでに有罪判決が確定しており、主犯とされている八木被告は死刑が確定しているが、現在は即時抗告中だ。本庄トリカブト保険金殺人事件弁護人の高野隆氏は、この事件について、「マスコミが作った保険金殺人のイメージを捜査機関が引き取って、徹底的に濃密な取り調べをした。そして、保険金殺人事件の供述を作り上げた。最終的には完全に人の記憶まで作り替えてしまった」と明かした。

死因とされている風邪薬、トリカブトに矛盾点

 99年に肺炎が原因で亡くなった森田昭さんについて、警察は大量の風邪薬を用いて好中球減少(白血球が少なくなり免疫力低下する症状)により肺炎を起こしたと死因に結びつけた。しかし、高野氏によると通常は大量の風邪薬を用いると肝炎で亡くなる。大量の風邪薬服用で好中球減少で亡くなった例は世界中で1例も報告されていないという。

 95年に利根川で水死体で発見された佐藤修一さんについては、被告らは自殺と主張していた。佐藤さんの臓器がまだ残っていることが判明して、溺死の鑑定をすることになったのが、今年2014年の初めだと高野氏は説明する。容疑は、トリカブトが入ったアンパンを食べさせて殺害した後、利根川に捨てたとされていた。ところが、鑑定の結果は肺、肝臓、心臓、腎臓の全てから利根川のケイ藻が発見され、溺死と判断された。埼玉地検の検事らは、溺死である証拠を公判中からすでに持っていたのだという。

記憶は密室で作られる

 高野氏によると、暗示をかけられて偽りの記憶を蘇らせるカウンセリングの事例はたくさんあり、日本では、このようなカウンセリングに近い取調べが行なわれていると言う。繰り返し聞かれる質問から「自分はやっているに違いないけど、思い出せないだけなんだ」という心理状態に陥り、全くやってもいない罪を鮮明に脳内映像として蘇らせるようだ。

(…会員ページにつづく)

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