柏崎刈羽1号炉、冷温停止維持を前提に30年高経年化評価をすすめる~2014年度 第30回規制委員会 2014.10.1

記事公開日:2014.10.1取材地: テキスト動画
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 2014年10月1日(水)10時30分から、原子力規制庁庁舎にて2014年度第30回規制委員会が行われた。東京電力柏崎刈羽原発1号炉について、冷温停止維持を前提に運転30年経過時の高経年化評価を進めることが承認された。

■全編動画

  • 日時 2014年10月1日(水)10:30~
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

議題 1 原子力防災体制の充実・強化のための原子力規制委員会組織規則の改正について

 原子力防災体制に関して、内閣府と原子力規制委員会の組織令の改正を行ったが、それに伴う原子力規制委員会の組織則の改正について委員会で議論するもの。組織内の所掌事務や職規定、人事変更などを定めている。

 今回の改正により、防災は内閣府の方へ移動して規制庁から切り離される。田中俊一委員長は「責任範囲が明確になるのは良い」が、「技術面は引き続きサポートできる体制をとるよう」コメント。さらに、見直し後の組織案については、「突然こうなるのは当面しょうがないが、もう少し整理するように努力を」と指示した。

 池田克彦・規制庁長官は、「今までも内閣府と規制庁とで担当者が”併任”して職務にあたっていたので、大きく仕事の内容が変わるものではない。今後も長官官房の審議官が併任して両方を見るし、いろいろな形の交流も行うので、体制が縦割りにならないようにする」と回答した。

 他に意見はなく、事務局案通りに承認された。

議題 2 災害対策基本法改正に伴う原子力災害対策特別措置法の一部改正について

 今臨時国会で提出が予定されている災害対策基本法の改正案に伴い、原災法(原子力災害対策特別措置法)も改正する予定となっている。その内容を委員会に報告するもの。

 大規模災害時に緊急車両の通行の妨げになっている放置車両の移動を、警察だけでなく、国交省や自治体、道路管理者等も行えるように改正する。

 10月上旬に閣議決定される予定だという。

議題 3 各種検討会合等の体制変更について

 委員の交替に伴い、各検討チームの会合の担当委員について事務局が整理し、報告するもの。島崎邦彦委員に替わりに石渡明委員が、更田豊志委員のサポートして田中知委員も福島第一原発に関する検討チームを担当するなどの変更がなされ、異論なく了承された。

議題 4 敷地内破砕帯の評価に関するピア・レビュー会合の座長の交代について

 ピア・レビュー会合の座長は、これまで石渡明氏が担当していたが、規制委員に就任したことから座長を選出しなおすもの。

 事務方から加藤照之・日本地震学会会長に務めていただくよう提案があり、内諾を得ているということで、特に異論なく了承された。

議題 5 核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則の一部を改正する規則(案)等に対する意見募集について

 放射性物質の安全輸送に関するIAEA安全基準が2012年版に改定されることにともなう関係法令の改正、および、行政手続法にあたるパブリックコメントの実施について委員会で議論された。

 主な変更点は、解放型のコンテナを規制対象に追加し、それに伴う細かな対応である。さらに、輸送終了後に関係文書を保管することを義務付けた。

 解放型コンテナとは、輸送中にフタを開けて、中を自由に見られるようなコンテナだと事務方が説明。しかし、具体的なイメージがつかみにくいことから、田中委員長は写真などで実際の作業者が混乱しないような工夫をするよう指示した。

 中村佳代子委員は、「今回の改正内容に薬事法の放射線医薬品の製造、取扱いが入っている。所管は厚労省だが、輸送では国交省となることなどから、省庁間で齟齬がないよう、国際的なIAEA基準とも齟齬がないように」とコメントした。

 改正案とパブコメの実施は了承された。今後10月2日から10月31日までの期間で意見募集が行われ、11月中旬に委員会が決定し、12月上旬に公布、2015年1月1日から施行される予定となっている。

議題 6 高性能多核種除去設備の設置等に係る福島第一原子力発電所特定原子力施設実施計画の変更認可について

 東京電力福島第一原子力発電所について、汚染水を処理する”高性能多核種除去設備(高性能ALPS)”は長官決裁により2014年9月29日に実施計画変更が認可された。

 更田豊志委員は、核種除去能力だけではなく、処理量も大事な性能、今あるリスクを考えると、ちゃんと運転し続けられることもおおきなポイントだとコメント。キチンと運転が進むことを期待するとコメント。

 田中俊一委員長はトリチウム以外の核種を除去する所定の性能をキチンと出すのが大切だとコメント。
更に、平成27年度末に処理後の水を保管するタンクの余裕がなくなること、タンクの寿命が5年程度だということから、対策を事業者に求めるよう指示した。

議題 7 東京電力株式会社「柏崎刈羽原子力発電所保安規定変更認可申請」(1号炉の高経年化技術評価書等)に対する審査について

 東京電力が柏崎刈羽原子力発電所にかかる、1号炉の運転30年経過時の高経年化評価という保安規定変更認可申請を出した。しかし、新規制基準の適合審査の申請はまだ出していない。そのため、高経年化対策実施ガイドに基づき、冷温停止の維持を前提とした部分のみ審査を行うことを委員会で議論するもの。

 更田委員は今回の30年評価について、「対応は事務局で示した通りでもっともだ」と了承。その上で、次の40年評価について対応を検討するよう指示した。これは、今後事業者が40年評価を申請した時、新規制基準の適合性審査がまだ終わっていない場合も考えられ、その場合にどうするかということ。

 田中委員長は、「今後、古い炉に対する廃止措置が増えてくるが、廃棄物をどうするのかまだ規則がないため、委員会として早急に整理する必要がある」と意見し、事務局で問題を整理するよう指示した。

 高経年化技術評価は、冷温停止の維持を前提に進めるという事務局方針通りに了承された。

議題 8 国際原子力機関(IAEA)総会時における国際原子力規制者会議(INRA)や各種二国間会合等の結果概要について

 2014年9月22日から26日にかけて開催された、IAEA総会の結果概要を報告するもの。

 田中委員長は、原発を新設するトルコ、リトアニアと情報交換協定を結んだ。さらに、UAEも原発を建設しており、日本の経験を共有しようということで、情報共有や公開を行った。協定内容は相手国の了承を得ているため、Webに掲載する予定だという。

議題 9 使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約日本国第5回国別報告について

 条約に基づき、3年に一度報告することになっている報告書の規制庁担当分を委員会に報告するもの。2014年10月10日に締め切られ、条約事務局へ提出される。

 更田委員は、この報告書は他国が当該国の状況を参照するときの基礎資料となるものであることから、「事実関係にくれぐれも誤りがないように」とコメント。

 田中委員長は、「廃棄物の対応問題はどの国も苦労しており、情報共有していこうということだ。福島第一原発の廃止措置に伴う廃棄物については、日本独自の基準を作り、IAEAの国際的な視点でみてもらう必要がある」との考えを述べた。

前回委員会時の質問事項への回答

 2014年9月29日の第29回原子力規制委員会で、2013年度放射線管理等報告を行った際、石渡委員から2003年度の放射線業務従事者の被曝線量が高くなっている理由を調査するようにと指示があった。その回答を報告するもの。

 調査結果によると、2002年に自主点検記録の不正が発覚し、その影響で翌2003年に記録の不正があり、炉心シュラウド等を総点検・総修理したという。これらは高線量環境下の作業であり、同時に複数のプラントで行われたからだと説明があった。

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