【安倍「破憲」改造内閣の奇怪な正体(2)】高市早苗総務大臣と「ネオナチ団体代表」とのツーショット写真:騒動の背後では、歴史書き換え「情報発信」計画が進行中?(前編) 2014.9.19

記事公開日:2014.9.19 テキスト
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(IWJ・藤澤要、文責:岩上安身)

 総務大臣の高市早苗氏と、ネオナチ団体の代表がツーショット写真を撮っていた——。

 その高市氏が過去に、『ヒトラー選挙戦略』なる書籍に推薦文を寄せていた——。

 9月3日の総務大臣就任会見で、領土問題に関する「正しい情報」の発信を、NHK国際放送を通じて行う意欲を語った高市氏。それから一週間も経たないうちに、自身と「ネオナチとのつながり」を示唆する出来事が、立て続けに表沙汰となった。海外の報道が、すぐにこれを追う。高市氏に関する「正しい情報」は、たしかに世界に向けられ発信された。

 9月の2週目に入った頃からネット上では、ネオナチ思想に傾倒する極右団体の代表と、高市氏とのツーショット写真が、同団体のウェブ・サイト内に掲載されていることが話題にのぼり始める。高市氏との写真以外にも、9月の内閣改造を期に自民党政調会長に就任した稲田朋美氏と、自民党所属で参議院議員の西田昌司氏との写真も、同サイトの同じページに掲載されていた。

▲高市氏と、「ネオナチ団体代表」山田一成氏

 これら自民党議員と一緒に写真に写っているのは、「国家社会主義日本労働者党(NSJAP)」の代表・山田一成氏。同団体の「基本理念」には、「我が国において『民族浄化』を推進しなければならない」とあり、「均質的な日本の社会を維持・推進して行く」と主張している。

・国家社会主義日本労働者党 「基本理念

 山田氏は、『雷韻出版』という出版社の設立者でもあり、2000年には『誰も知らない日本共産党のホンネ』という書籍を出版。これを宣伝するビラが共産党を中傷する内容で、3000万枚とも1億枚ともいわれる大量の数が配布されたと言われている。

 一説には、自民党本部が『誰も知らない日本共産党のホンネ』を大量に買取り、2000年6月の総選挙で利用するよう、自民党の各都道府県連合会、衆院選挙事務所および参院選挙区比例区事務所への申し渡しがあったという。

・日刊ゲンダイ 2014/9/12 「高市、稲田両氏と2ショット 極右活動家とオウムの繋がり
・しんぶん赤旗 2014/9/11 「高市総務相・稲田自民党政調会長がネオナチ代表と写真——海外報道相次ぐ

 山田氏が高市氏らと撮ったツーショット写真については、海外の報道が先んじた。AFPは9月8日付けの記事で、「これらの写真は、安倍晋三首相が、ますます自身の周りを日本の政治の右派たちで固めている、という主張を勢いづかせるものとなるだろう」と分析。

 さらに、「『慰安婦』として知られる、公式に行われた性奴隷のシステムに関する安倍首相の曖昧な言葉づかいは、特に韓国、中国を苛立たせ続けており、両国は常に安倍首相に対し考えを改めるように呼びかけている」と続けた。

・AFP 2014/9/8 「Japan PM’s new picks deny neo-Nazi links

 英紙ガーディアンは、「高市氏と稲田氏の二人は靖国神社に参拝している。靖国神社は14人のA級戦犯を含む、日本の戦死者を祀る場所だ」と両者の靖国神社に対するスタンスに言及。「高市氏は先週、国務大臣の役割として、靖国神社に参拝するつもりだと発言している」と紹介している。

・Guardian 2014/9/9 「Neo-Nazi photos pose headache for Shinzo Abe

 米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」の関係者は、9月8日の時点で、「(安倍)首相の新しい閣僚のネオナチとのつながりに関して、非常に懸念しており、困惑している」と、いち早くツイートを流している。

 米国のロス・アンジェルスに本部を置く同センターは、反ユダヤ主義の監視を行う。注意の目は世界中に及び、ヘイトスピーチ、従軍慰安婦問題といった人権問題に関する日本政府の姿勢も、厳しい批判の対象となる。

 同センター副所長のエイブラハム・クーパー氏は昨年12月26日、安倍総理の靖国神社参拝直後、「倫理に反している」という声明を発表。今年7月24日には日本記者クラブで会見し、日本のヘイトスピーチ、慰安婦問題、731部隊の問題について意見を述べている。

・産経新聞 2013/12/27 「靖国参拝『倫理に反する』 ユダヤ系団体も非難
・RecordChina 2014/7/24 「人権・歴史認識で『対日包囲網』―米有力人権団体が要求『日本はヘイトスピーチや元慰安婦問題解決を!』

 また、今年、東京都内の図書館で『アンネの日記』をはじめとしたホロコースト関連の書籍が破られる事件が連続発生したが、その際にも同センターは、いち早く、懸念の声明を発表している。

※この声明の日本語訳はこちらから、お読みいただけます:

 サイモン・ウィーゼンタール・センターの影響力の大きさは、つとに知られている。過去には、あの株式会社文藝春秋を存続の危機に追い込んだこともある。1995年1月に、同社が発行していた月刊誌『マルコポーロ』に、内科医の西岡昌紀氏による「戦後世界史最大のタブー。ナチ『ガス室』はなかった」という論文が掲載された。内容はホロコーストがなかったと主張するものだった。

※この論文の内容等については、当時、岩上安身が「無邪気なホロコースト・リビジョニスト」というルポを『宝島30』誌に書いています。『IWJウィークリー』第13号に再掲しているので、そちらをぜひ、御覧ください。『IWJウィークリー』の講読は、こちら からどうぞ。

 同センターは、発行元の株式会社文藝春秋に抗議。さらに、文藝春秋への広告掲載を控えるよう、全世界の企業に呼びかけた。その結果、『マルコポーロ』ばかりでなく、月刊『文藝春秋』や『週刊文春』といった他の雑誌の広告主までが、次々と文藝春秋への広告出稿から手を引いていく事態となった。

 倒産の危機に瀕した文藝春秋は、2月に『マルコポーロ』の廃刊を決定。当時の編集長は、辣腕の雑誌編集者として名を馳せていた花田紀凱氏だった。この騒動のあと、花田氏は同社を退社。その後、保守的な色あいの濃い文藝春秋の各雑誌よりも、さらに極端に右に偏った月刊誌『WiLL』の編集長に就任。現在もその椅子に座り、発売されたばかりの最新号(11月増刊)でも、「歴史の偽造!朝日新聞と『従軍慰安婦』」と題する「総力大特集」を組んでいる。

 そのサイモン・ウィーゼンタール・センターのエイブラハム・クーパー副所長は、日本の総務大臣が、過去にネオナチ団体代表とのツーショット写真を撮影していたことに対し、「こうしたことが起きないよう責任を持って対処する人はいないのか」と強く非難。

 しかしながら、まともな、誠意ある回答を示す政治家は、安倍総理率いる自民党からは今のところ皆無である。世界中をいらだたせ、極端な言動や態度を示しては、抗議を受ける。抗議を受けると、ごまかし、はぐらかす。ほとぼりがさめると、また、世界には受け入れられない非常識で、非良識的な言葉を口にする。自民党の政治家たちは、ずっとこんなことを繰り返してきたが、安倍政権の閣僚はとりわけひどい。

・毎日新聞 2014/9/10 「米ユダヤ系人権団体:高市総務相ら写真に強い不満表明

 一方、国内の報道機関は動きが鈍かった。9日夜にようやく共同通信が記事を配信。翌10日昼には毎日新聞が取り上げた。そうこうしているうちに、高市氏の事務所は同日、「撮影したときに山田氏がどういった人物であるか知らなかった」という内容のコメントを出した。これを産経新聞が早速報じ、ごていねいに全文を掲載した。

・産経新聞 2014/8/10 「極右代表と撮影、高市総務相のコメント全文 『撮影時、どんな人物か不明だった』

 高市氏は9月12日、総務大臣としての会見に臨む。IWJ は山田氏とのツーショット写真撮影の経緯について質問。この問題が、中国や韓国との外交問題にどのような影響を与えるかについて質した。

 高市氏は、「政治家をしていると、まったく知らない方から写真撮影を求められることは、ほぼ毎日のようにある」と、「不可抗力」だったことを強調。報道があった後に写真を見たが、当初は山田氏が誰であったか分からなかったと話した。

 高市氏の事務所が、稲田氏と西田氏の事務所と協力して調査した結果、2011年6月から7月に、月刊誌「撃論」が3事務所をインタビュー目的で訪問していたことが判明。山田氏は出版社側のスタッフの一人としてそれぞれの事務所を訪れていたことが明らかとなったと説明した。高市氏は、「その方の所属団体なり、思想信条なりが分かっていたら、決してお会いもしなかったし、写真も撮らなかった」と明言した。

 一方、アジアの隣国との外交問題への影響についての我々IWJの質問への直接の回答はなかった。

 この一件に関して、日本の政界からの反応は皆無であるといってよい。抗議も擁護もなにもない。まるで何もなかったことにされている。菅義偉官房長官が、「(高市、稲田両氏は男性に)そのような背景があるとは知らなかった。全く問題はない」と、高市氏と稲田氏をかばう発言をしている。これは内閣の要なので、かばわざるをえなかった、事実上の不問に付した、ということだろう。つまり、この一件で、世界中から懸念の声が寄せられても、日本政府も、与党の自民党も、「おとがめなし」の態度で切り抜けようとしているわけである。

・読売新聞 2012/9/12 「高市・稲田氏、極右団体代表の男性と写真撮影

ヒトラーに学んで選挙に勝つ!

 しかし話はこれで終わらない。高市氏が公式コメントを出して、事態を取り繕おうとしていた矢先、今度はさらにとんでもないことが明らかとなる。

 なんと、高市氏には、『ヒトラー選挙戦略』(千代田永田書房 1994年)なる書籍の推薦文を書いていたらしい過去があるというのだ。

 この本の著者は、当時の自民党都連広報部長だった小粥義雄氏。自民党の関係者が、ナチスの戦略に学べ、という本を書いたことは重視されてしかるべきだ。

 内容はマスメディアによる宣伝戦術や、イベントによる演出など、大衆操作に長けたヒトラーの「政治手法」を評価し、それを現代選挙戦に応用しようというもの。

 一方で、「ヒトラーの残した独裁政治、ユダヤ問題など歴史的評価は後世に譲る」との立場をとる。

 つまり、ナチスの反ユダヤ主義政策についての評価や判断は留保する、ということだ。これもまた、世界中から非難されても仕方のない態度だろう。自民党の元都連広報部長が、ナチスの反ユダヤ主義政策について、厳しい批判的な評価を下さなかった、という事実は、自民党の中には、ナチスを事実上肯定する勢力が存在していると受とられても仕方がない。

 『ヒトラー選挙戦略』のカバー下の表紙には堂々と鍵十字があしらわれ、口絵に掲げられたヒトラーの肖像の上には、「Adolf Hilter ist der Sieg(アドルフ・ヒトラーが勝利だ)」と、当時のプロパガンダ・ポスターそのものの文言が踊る。また、ページ各所には、漫画風に描かれたヒトラーの姿がちりばめられている。

・札幌たのしい授業・研究サークル用レポート仮説実験授業研究会・北海道・丸山秀一
 2005/8/27 「小粥義雄『ヒトラー選挙戦略』(1994)を読む

 1994年6月14日付の朝日新聞によれば、6月10日にイスラエル大使館は自民党都連を訪れ不快感を表明した。また、サイモン・ウィーゼンタール・センターも、イスラエルの日本大使館に対して、出版中止を要請する抗議文を送ったという。

 このような状況下で、著者と出版社は絶版にすることを決め、流通していた本も回収されたという。米紙ニューヨーク・タイムズによれば、著者および出版社は、ヒトラーの選挙戦略のみを取り上げたことで、非難の集中を予想していなかったという。また、ヒトラー礼賛の意図はなかったとも説明している。

・New York Times 1994/6/8 「Japanese Book Praises Hitler For His Electoral Techniques
・New York Times 1994/6/8 「Hitler Book Withdrawn in Japan

 国際的な非難の的となったこのいわくつきの本は、1994年5月5日発行の『週刊東京政経通信』第1421号で、「まったく新しい視点からの必勝本 まず一度、触れてみてください。衝撃の発刊です」と大々的に紹介されたようだ。おそらくその宣伝目的のためだろう、政治家を中心とした15人が「私たちが推薦します」と短文を寄せているが、その中に高市氏がいた。

▲「週刊東京政経通信」第1421号(1994年5月5日発行)

 衆議院議員 高市早苗
 「候補者と認知された瞬間から始まる誹謗、中傷、脅迫。私も家族も苦しみ抜いた。著者の指摘通り勝利への鍵は『強い意志』だ。国家と故郷への愛と夢を胸に、青年よ、挑戦しようよ!」

▲右から5番目が高市氏

 ジャパン・タイムズの9月10付け報道によると、同日午後、高市氏の事務所の広報担当者は、広告に使用されている写真について高市氏本人であると認めた模様。ただ、高市氏は、『ヒトラー選挙戦略』について覚えがなく、その宣伝に関わったかどうかも記憶がないという。

・Japan Times 2014/9/10 「New Cabinet ministers’ pasts coming back to haunt Abe Hitler’s eleciton strategy

 『ヒトラー選挙戦略』と高市氏との関係に関しては、英紙インターナショナル・ビジネス・タイムズも9月11日に報道。一方で、国内のマスメディアが、この件を報じる様子は、9月19日現在までのところない。静観して通り過ぎるのを待つ、といった姿勢である。

・International Business Times 2014/9/11 「Japan: Adolf Hitler Book Haunts Interior Minister Sanae Takaichi

※ 高市早苗政調会長(当時)、2013年6月20日の参院選公約発表の記者会見で、自民党が衆院選で掲げた総合政策集「Jファイル2013」に「(TPPで)農林水産物分野の重要5品目などの聖域を確保する。確保できない場合は、脱退も辞さない」と記載されていることについて、「Jファイルは、目指すべき政策だ」と弁明。

後編へ続く

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