安倍総理はこれまで、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなど農産品5品目(いわゆる聖域)の関税撤廃の例外として「守る」と強く主張してきました。しかし7月11日、日本の交渉参加がこの「関税撤廃」の協議に間に合わないことが明らかになりました。
日本は7月15~25日にマレーシアで行われる交渉会合の、最後の数日間から正式に参加することになっていますが、その前に「関税撤廃」の協議日程が終わってしまうためです。各国の利害がぶつかる「関税撤廃」については、これまでの会合でもほとんど進展が見られないため、「まだまだ交渉の余地はある」とする声もあります。しかし、もし万が一何らかの合意がなされてしまった場合、TPPでは後から参加する国は「いかなる修正も、文章の変更もできない」ため、日本の聖域確保は絶望的になります。
(東京新聞 2013年7月12日 「TPP関税協議 日本、間に合わず マレーシア会合」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013071202000113.html )
今後の日本のあり方に多大な影響を与える協議が、今まさに行われようとしています。
日本の交渉参加は7月23日午後とみられ、21日の参院選の投開票から明けてすぐ、という超喫緊の政治課題です。にも関わらず、TPPは今回の参院選の争点から明らかに外されています。
日本の大手メディアは、TPP日米事前協議という「米国に」日本の交渉参加を認めてもらうための協議が4月12日に決着したのを契機に、TPPについてはほどんど報じなくなりました。そんななか、参院選における各党のTPPの公約について比較し、論じている大手メディアが1社だけあります。メディアにおけるTPP推進の旗振り役の筆頭である、読売新聞です。
読売新聞は7月11日付の「13参院選 TPP交渉 参加出遅れに危機感が乏しい」と題した社説で、「11か国は年内の大筋合意を目指し、交渉を本格化させる。出遅れた日本は通商ルール作りで巻き返す道を探らねばならない」とし、「そうした厳しい状況にもかかわらず、各党の公約は危機感に乏しく、TPPへの対応は大きな争点になっていない」と、各党の公約を紹介し、「具体論に欠ける」などと批判を展開しています。
これまで「TPPに早く参加すべし」と背中を押しながら、「でもこのまま入るのは危ないから、巻き返しのための具体論を示せ」と各政党に要求するのは、実に読売新聞らしい、傲慢かつ没論理的、徹底した責任転嫁の姿勢と言わざるを得ません。
とはいえ、たしかに、自民党や民主党、維新の会などのTPP推進の党の公約を見てみると、旗振り役の読売新聞が焦るように、TPPと国益を結びつける具体策を提示できていません。できないのは当然で、TPPがそもそも国益に反するからですが、そう言ってしまうと身も蓋もないので、同紙の社説では、省かれている生活の党、共産党、社民党、みどりの風などTPPに反対の姿勢を示す党の公約を補いながら、読売新聞の指摘とともに各党の公約をみてみたいと思います。
まずは、TPP推進を掲げる自民党、公明党、民主党、みんなの党、日本維新の会のTPPについての方針をみてみましょう。
【読売新聞社説】
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130710-OYT1T01388.htm
自民党より「強硬さ」をアピールする民主党
民主党は、菅政権、野田政権と、二代続いてTPP推進を推し進めた党だけあって、「高いレベルの経済を推進し、世界におけるルールづくりを主導します」と、当然ながらTPPを肯定します。「高いレベルの経済」という言葉は、何がどう高いのか。意味が不明ですが、これは、自由貿易協定を売り込みたい米国のUSTRあたりの文書を直訳した名残りなのでしょう。自分の頭で考えていない様子がよく伝わります。
「農林水産物の重要5品目などの除外」や「食の安全の確保」、「国民皆保険の堅持」などの国益を確保するために、交渉参加自体には賛成としつつも、「脱退も辞さない姿勢」と強硬さをアピールしています。「脱退」するくらいなら、そもそも「参加」しなければいいだけの話で、「重要品目の関税」も、「食の安全」も、「国民皆保険の堅持」も、脅かされることはないはずですが、そうは言わないところがミソです。ちなみに、これについて読売新聞は同社説の中で、「農業の強化策は抽象的である」と批判していますが、これもまた、裸にしておいて風邪をひきそうなのは、鍛錬が足りないからだ、というくらい無茶で無理な話です。
民主党の農業についての公約をみてみると、「『食料自給率50%』をめざしつつ、農業者戸別補償の法制化や6次産業化などによって所得の安定・向上をはかり、新規就業者を増やします」となっています。読売の社説がいう「抽象的」とは、どの点を指すのかは不明です。民主党の公約は、「抽象的」というよりもむしろ、「空想的」と表現する方がふさわしく、「自給率50%」も「農家の所得向上」も、「新規就業者の増加」も、言葉はそれぞれ「具体的」ですが、どれもほとんどSF的な空想であって、現実にはほぼ実現不可能です。
「攻めの交渉」を掲げるみんなの党・維新の会
みんなの党は、「TPPのみならず、日中韓FTA、RCEP、日EU等の広域FTAを推進し、日本の国益を最大化。アジア・太平洋諸国とエネルギーや安全保障分野を含めた提携関係を強化する」とし、主要政策でも「株式会社の農業参入を原則自由化」など、前回の衆院選から一貫して「TPP推進」を全面的に勇ましく打ち出しています。自民党と違って、何もブレがないところが、支持者にとっては頼もしく感じられることでしょう。みんなの党の公約の文章が、「日本の国益」ではなく、「米国の国益」もしくは「米国企業の利益」を最大化、とより正確に表記されていたら、完璧だったと思われ、その点が惜しまれます。
日本維新の会もみんなの党と同じく、「農業への株式会社参入(農地所有、技術指導、金融支援)を促す」としながらも、TPPについての直接的な記述は「自由貿易圏を拡大する。TPPは攻めの交渉で国益を勝ち取る」と、抽象的な表現に留まっています。
「攻めの交渉」とは何を指すのでしょうか? 米国は、自国の農産物に対しては巨額の補助金を出しています。これらをやめさせることでしょうか。米国は、日本車に対する関税を少なくとも10年間はそのままにすえおくと身勝手なことを言っていますが、これらを即時撤廃させるように求めることでしょうか。米国内での公共調達の際に、日本語での案内を入れるように義務づけることでしょうか。ISD条項による審判の際、公開の議論、三審制、日本人審判員を加えるように求めることでしょうか。
「攻める」と口先だけ言いますが、その中身を誰も語りません。TPP推進の各党と、読売のようなTPP推進メディアは、「攻め」の中身を自らの責任で明らかにすべきです。また、維新の会とみんなの党は両党とも減反政策の見直しや農協改革を掲げています。読売新聞の社説はこの点について、「活発な論戦を期待したい」と評価しています。この程度のことが、読売新聞の求める「具体的な強化策」なのでしょうか。この程度で、TPP参加によって生じる莫大な損失を穴埋めできるというのでしょうか。
「公約」と「政策集」を使い分ける自民党
注目すべきは、やはり自民党です。公約では「TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します」としていますが、「守るべきもの」の具体的な品目には言及せず、守れなかった時にどうするのか(脱退するのか)についても触れられていません。
他方、公約と同時に発表した総合政策集「Jファイル2013」に「農林水産物分野の重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)などの聖域を確保する」「農林水産分野の重要5品目などを確保できない場合は、脱退も辞さない」と記載されています。ということは民主党の公約と同じく、「守るべきもの」を守れなかった時には、「脱退」するというのが、自民党の公約なのか、といえば、そうではありません。そこはさすが自民党、手がこんでいて、二段構えになっています。
【自民党総合政策集「J -ファイル2013」】
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/sen_san23/j-file-2013-06-27-1.pdf
高市早苗政調会長は、6月20日の参院選公約発表の記者会見で、「公約は、最優先で取り組むという強い決意で示す国民への『約束』だが、Jファイルは、目指すべき政策だ」と説明しています。
少しややこしいですが、今回の自民党が公約として国民と約束するのは「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します」という実に「抽象的」な一文のみ、ということです。Jファイルは、国民との約束ではない、ということなのです。
実は自民党は、2012年末の衆院選の時にも、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」という公約とは別に「Jファイル2012」を発表しています。その中でTPPについて以下のように記載していました。
・自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
・国民皆保険制度を守る。
・食の安全安心の基準を守る。
・国の主権を損なうような ISD 条項は合意しない。
【自民党総合政策集「J -ファイル2012」】
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf
しかし、安倍総理は2月28日の衆議院予算委員会で、先にあげた高市政調会長と同じく「Jファイルは正確に言うと公約ではなく、目指すべき政策だ」と発言しています。事実、安倍政権は4月12日に合意されたTPP日米事前協議において、「米国車の輸入台数の引き上げ」を義務付けられ、「Jファイル2012」で定めた「自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない」という目標を達成できませんでした。
Jファイルに書かれている限り、それは「公約」ではなく、「目指すべき政策」なのであって、達成できなくても責任は問われない、という「仕組み」になっているわけです。ずるい、といえばずるい、しかし巧妙というほどでもない、政治的トリックです。
昨年の衆院選で「TPPへの交渉参加に反対!」と書かれた、自民党の黄色い選挙ポスターを目にした方は多いのではないでしょうか。しかし3月15日に安倍総理がTPP参加を正式に表明したことで、「自民党は嘘つきだ」とする声も一部ネット上などで目にします。しかし、このポスターには小さく「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」と書かれています。生命保険に加入するときの約款のような、このわかりにくい、小さな文字の連なりは何を意味するのでしょうか。
2012年、自民党衆院選ポスター
安倍総理は2月22日に行われた日米首脳会談で、「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」とする共同声明を取り交わし、この少々わかりにくい文章をもって、「『聖域なき関税撤廃』を前提にはしないことを確認した」と、3月15日の参加表明記者会見で述べています。
しかし、4月22日から25日にかけて訪米した、山田正彦元農水相など超党派のTPP訪米調査団が、米国政府のTPP担当機関であるUSTR(米通商代表部)のカトラー代表補に問い質したところ、安倍総理が再三、「聖域」であることを強調しているコメの関税についても、「セーフガード(一時的な保護)か、段階的に、関税を撤廃する」と断言しました。つまり、日本のコメの関税を現状のまま温存するという選択肢は、米国は考えていないということです。
さらに、甘利明TPP担当相は、4月26日の参院予算委員会で、「聖域」とは何を指すかについて「現時点で特定はしていない」と述べ、今後も具体的に特定しない方針を示しました。どんどん話が曖昧になってきているのは、コメの関税を守ると具体的に言いきってしまうと、守れなかった時に政治的責任が問われるからであって、つまりは「守れない」可能性が高いと安倍政権自ら判断しつつある、と考えていいでしょう。
つまり、自民党が公約で約束した「聖域」とは、「永久に関税を守る」という意味ではなく、「即時に撤廃は避けたいが、いずれはゼロにすることもありうる」という意味であり、「聖域」に含まれる品目も特に決めてはいない、コメのこととは限りませんよ、という話だったのです。確かに自民党は公約では「聖域」の内容や中身については言及していませんでした。自民党のTPPについての公約を判断する際には、「何が語られていないか」を見定める必要があります。
慎重なスタンスを貫く公明党
自民党よりもよりリベラルな政策を掲げはするが、結果として常に自民党に連れ添って動く公明党は、TPP参加に曖昧な姿勢を示しています。
「TPPに参加すれば、日本製品の輸出増が期待されます。さらに消費者の立場からは輸入品が安く手に入るなどの経済的効果があります。地域の中で貿易ルールを統一していくことで、日本が競争できる分野をさらに強くしていける意義があります」と、TPPのメリットを主張する一方で、「TPPは包括的な経済連携協定であり、貿易や農業に加え、医療・食品安全など広く国民生活に影響を及ぼします。
今後のTPP交渉に際しては、わが国農業の多面的機能、食料自給率の向上に深く配慮することが必要です」と、デメリットも併記しています。後段で、国民生活への影響などの懸念を示していますが、交渉参加を前提としており、また前段ではTPP参加の意義を強調しています。
今後のTPP交渉について自民党とともに取り組んでいくと、一応「推進」の立場ですが、そもそも賛成なのか、反対なのかははっきりせず、後段で言っているTPP交渉に際して「深い配慮」ができなかった時にどうするのか、という部分も明言せず、曖昧なスタンスを貫いています。
読売の同社説では、「自民党は公明党とともに、政府を後押しし、TPPに国益を反映させる方針を示すべきだ」と書いています。
報じられないTPP反対派の主張
~TPPはメディアの「タブー」に
読売新聞の社説ではなぜか、残りの生活の党、社民党、共産党、みどりの風については公約を紹介せず、「そろってTPP反対を主張している」という一文で括ってしまっています。そして、「『貿易立国』として発展した日本が、アジアの自由貿易圏から外れる道を選べば、将来展望は開けまい」として、これら4党の姿勢を批判しています。反対派の党の公約を紹介もせずに批判する読売新聞の姿勢は、きわめてアンフェアなものです。
また、TPPの不参加は、「アジアの自由貿易圏から外れる」といいますが、日本の最大の貿易相手国である中国はTPPに参加していませんし、韓国も、台湾も、興隆するインドも、人口大国のインドネシアもTPPに入っていません。「貿易立国」というイメージも、虚像です。日本経済のGDPの6割は個人消費であり、醍醐聰東大名誉教授が指摘するように、純輸出のGDPへの寄与率はわずか2.5%に過ぎません。
朝日新聞社が「参院選で議論を深めてほしい政策」について7月6、7両日に世論調査を行ったところ、「景気・雇用」が50%と最多であり、「社会保障」39%、「原発やエネルギー」30%、「消費税」29%、「外交・安全保障」16%、「憲法」13%と続き、「TPP」は12%と最も少ない数字でした。
超喫緊の課題にも関わらずここまで国民の関心が低い理由は、言うまでもなく、それはスポンサーに配慮してのことであり、主たるスポンサーである輸出大企業の株主は、今やかなりの程度、米国資本を管轄とする外資によって占められつつあります。経団連などの主張は、外資の主張を色濃く反映しており、「外資主権」がじりじりと現実化しつつあります。読売新聞の社説のようにTPPへの反対意見、疑問の声などをほとんど報じないメディアの姿勢があります。原発以上に、TPPの問題はメディアで「タブー」扱いされてきました。
本来であれば、国民生活に多大な影響を及ぼすTPPであるからこそ、賛成・反対両者の意見を併記し、国民的議論をさらに深める必要があります。ですが、ビッグ・マネーに容易に支配されてしまう大手メディアでは、それは困難でしょう。以下、TPPに反対の姿勢を示す、生活の党、社民党、日本共産党、みどりの風のTPPについての方針をみてみましょう。
小沢一郎・生活の党代表「TPPは強者の論理」
生活の党は、「TPPには参加せず、各国とのFTAを推進します。食料の自給率を高め、食の安全を確保します。農業戸別所得補償制度などを法制化し、安定的に実施します。いのちと暮らしを守るために公的医療保険制度の崩壊を防ぎます。国民の財産である郵貯、かんぽの郵政事業を堅持します」と、TPPには参加せずに農業を安定化させる方針を示しています。TPPが公的医療保険制度の崩壊や、郵貯、かんぽの郵政事業への外資参入につながるということを前提とし、それらを阻止するとしています。
生活の党はこれまで、TPPについては賛成とも反対とも明言は避け、党としては慎重な姿勢を示していました。しかし今回の参院選では、明確に反対の姿勢を打ち出しています。この変遷の理由について、小沢一郎・生活の党代表は7月12日に行われた岩上安身による単独インタビューで、「本当は、安倍政権の政権運営を批判したかったのです。その具体例として、TPPをあげたのです」と語り、「安倍首相の政権運営は、小泉元総理以上に、強者の論理に立っていると思います。雇用の流動化、国民皆保険の崩壊など、TPPは強者の論理に立ったものです。その例としてTPPをあげました」と、安倍政権の方針を批判しました。
日米並行協議にも反対の姿勢を打ち出す社民党
社民党は、「TPPは、日本への輸出拡大を実現できる米国にとってこそメリットが大きく、日米同盟を深化させるために米国主導のTPPに入る必要は全くありません」と、かなり直接的に米国を批判しています。公約全文をみると、「参加各国との事前協議でも、農産物の重要品目の関税例外確保は何ら担保されていない」「政府のTPP試算はまやかしにすぎない」「日本の輸出相手国はTPP不参加の中国・韓国・台湾・香港・インドなどが主力」など2ページ、12項目に亘って、TPPの問題点の指摘と、その見直し策をあげています。
福島みずほ・社民党党首も、7月2日に行われた岩上安身による単独インタビューで、「TPPも結局1%のためであって、99%の人を切り捨てるんじゃないか」と語り、「政府ですら、TPPに参加したら、農産物の収穫高が減ることも、食料の自給率が減るということも発表してるんですよね。それは間違いなくそうなります」と、政府の方針の矛盾点を指摘しています。
社民党はまた、TPP交渉と並行して進められる日米並行協議にも反対の姿勢を示すなど、生活の党や共産党、みどりの風など他のTPP反対の党との違いを打ち出しています。
安倍政権を徹底批判する共産党
日本共産党も、「関税をすべて撤廃し、国民の暮らしに関わるルールを『非関税障壁』として撤廃・削減するTPPそのものの危険性だけでなく、アメリカのいうままに譲歩を重ね、日本を丸ごと売り渡しかねない安倍内閣の『亡国』的な姿勢です。『国のかたちを変えてしまう』と言われるTPPへの参加を、TPPの交渉内容を秘密にするというルールにそって、国民への情報開示も抜きに、強引にすすめようとしています」と、安倍政権を批判しています。
そして「アメリカと財界の要求のままにTPPに突き進むなら、国民の生活と日本経済は重大な打撃を受けます」など、2ページに亘ってTPPの問題点を指摘し、「TPP 交渉参加をただちに撤回することを求めます」との方針を打ち出しています。
TPPと真逆の日本型共生社会を目指すみどりの風
みどりの風は、「TPPはグローバル企業の利益を国民生活より優先させる制度です。国内法に優先する協定(TPP)は、農業に限らず国民生活のあらゆる場面に影響を与えます。日本らしさを壊すTPPには断固反対、撤退を求めます」としたうえで、「TPPに代わる対等公平な貿易枠組みの構築(ASEAN+6等)し、アジアの成長を取り込む」という政策を打ち出しています。
谷岡郁子・みどりの風代表は、7月2日に行われた岩上安身による単独インタビューの中で、「『みどりの風』が目指している格差の小さい日本型の共生社会と、TPPというのは真逆の関係にある」と、その反対理由を述べています。また、米国がTPPで日本に求めている「農産品の原産地表記撤廃」「遺伝子組み換え表示の撤廃」などをあげ、警鐘を鳴らしました。
有権者がメリット・デメリットを追及すべき
政府は3月15日、日本はTPP加入によってGDPが3.2兆円増加し、農林水産物生産額が3兆円減少する、という政府統一試算を発表しました。しかし、この3兆円の農業生産減少額の都道府県別の影響、実際に自分たちの生活や所得にどのような影響があるのかについては、試算を出していません。安倍総理は5月8日の国会質疑で「都道府県別の試算は技術的に難しい」と答弁し、甘利明TPP担当大臣も「不安をあおるような試算の出し方は疑問」と、都道府県別の試算を行わず、公表もしない考えを示しています。
これに対し、全国約900名の大学教員が賛同人に名を連ねる、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」は、都道府県別の影響を独自に試算し、7月5日に発表記者会見を行いました。それによると、農産品19品目について生産額が2兆5142億円(総生産額の26.1%)、全国の農家の所得が4081億円(総所得の13.9%)も減少するという、驚きの試算結果となりました。
試算によると、米どころである富山県や福井県、秋田県などは農家の所得が2~3割も減少し、沖縄県のサトウキビ産業は100%壊滅します。さらに、この農業生産額の減少は、農産品を運ぶ運搬産業や加工産業など第二次・第三次産業へも影響し、減少した農業生産額の2~4倍がそのまま地域産業全体に影響します、
こうしたTPPのデメリットを、大手メディアはほとんど報じていません。TPP推進の積極的な旗振りをするのに、一部のデマゴーグに過ぎず、多くはその危険性やマイナスに気づき、であるからこそ、だんまりを決め込んでいます。その結果、TPPの危険性は、国民の大半の目と耳に触れることなく、「無関心」の彼方へ追いやられようとしています。大手メディアや政府の情報公開に期待できない以上、どの政党が「メリット・デメリットをきちんと認識しているか」を我々がはっきり見極め、否が応にも争点化させていく必要があるのではないでしょうか。
声に出して読み聞かせたい内容。知るということは世界を広げ、自己を確立することに繋がります。