「7・1閣議決定は違憲 法的な効力はない」 〜岩上安身によるインタビュー 第435回 ゲスト 伊藤真弁護士 2014.7.5

記事公開日:2014.7.6取材地: テキスト動画独自
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 日本国憲法第96条で定められている通り、憲法改正には正式な手続きがある。7月1日の閣議決定は、「解釈改憲」という手法により、この手続きを避けて通った。

 7月5日、岩上安身は伊藤真弁護士にインタビュー。伊藤弁護士は、司法試験のための予備校「伊藤塾」の経営を通じ、志のある法律家・行政官の育成に励んでいるとともに、「憲法の伝導師」として日本国憲法の価値を説く講演活動も活発に行っている。インタビューでは、伊藤弁護士に、日本国憲法の理念と立憲主義、そして今回の閣議決定の「違憲性」について聞いた。

■ハイライト

  • 伊藤真氏(弁護士、法学館・伊藤塾塾長)
  • 日時 2014年7月5日(土)
  • 場所 法学館・伊藤塾 東京校(東京都渋谷区)

日本国憲法の三原則

 内閣が憲法の解釈を変更するという行為が違憲だという指摘は、多くの憲法学者から上がっている。伊藤氏は「違憲の閣議決定である以上、それに基づいて行われる法律制定を含むすべての行為は効力を有しない、ということになります」と語る。

 伊藤氏は、「憲法は普通の法律と役割が違う」と話し、法律が社会秩序をもたらすために国民の行為に対して制限を加えるのに対し、憲法は、国民により国家権力を縛るものだと説明した。つまり、憲法とは、国民から国家・政府へと向けられたものに他ならないのである。

 憲法前文には「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という日本国憲法の3原則が書き込まれている。伊藤氏は、この3原則はたんに並列しているのではなく、明確な論理展開により、国民が国家権力を監視する主体となる根拠となっていると解説した。

(注)日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(日本国憲法前文・第一段落)

 「日本国民が、政府に二度と戦争をさせないため(平和主義)、国民が自由に生活できるようにするために(基本的人権の尊重)、この憲法を確定しました。どうやってそれを実現するのか。そのために必要なのが、『国民主権』です」。

 伊藤氏は、「国民には政府に憲法を守らせる責任・義務がある」と述べ、「私たち国民が、主体的に生きることを憲法が求めています。私たちが、自分の頭で考え、行動し、責任を負う。その覚悟があるのか、憲法は我々に突きつけています」と語った。

「程度の問題」となる武力行使

 近代憲法は、個人の権利と自由の尊重という原則に基づく。そこからさらに一歩踏み込み、日本国憲法では、戦争の放棄が徹底されている。伊藤氏は、「警察力や軍事力は濫用されやすい歴史的経緯があります。戦前の日本は軍部の暴走を招きました」と語り、日本国憲法に固有の意義を次のように述べた。

 「濫用されやすい権力をどのようにコントロールするか。日本国憲法では、正規の軍隊を持たず、海外で武力行使をしないと明確に定め、曖昧な解釈の余地を残さず、軍事力の暴走に歯止めをかけました」。

 これまでの政府見解では、日本が自衛権を発動し武力を行使することが許されているのは、自らが攻撃を受けた場合に限る。ところが、集団的自衛権の行使は、自らが攻撃を受けなくとも武力行使を行うことを意味する。

 このことに関して伊藤氏は、「自国が攻撃を受けた場合」という明確な線引きがなくなることで、武力行使の問題が「程度の問題」となってしまうと指摘。「明白な危険」であるかどうかが、時の政府の判断に委ねられることは、明らかに立憲主義に反すると強調した。

 「他国が攻撃を受けた場合に、それが日本にどう影響を与えるのかの判断をしなければなりませんが、それを誰が行うのか。時々の政府が、勝手に解釈し、判断することになります。これは憲法による縛りがなくなったのと同じことです」。

“集団的自衛権を行使する国”の姿 英国はアフガン戦争で450人の犠牲者

 日本政府は、国内に対して「集団的自衛権を行使して海外で戦争に参加することはない」という説明を繰り返している。しかし、すでに国外では、日本はこれまでとは別の国になってしまったと見られ始めている、と伊藤氏は話す。

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「「7・1閣議決定は違憲 法的な効力はない」 〜岩上安身によるインタビュー 第435回 ゲスト 伊藤真弁護士」への7件のフィードバック

  1. @lipton345さん(ツイッターのご意見より) より:

    「自国が攻撃を受けた場合」という明確な線引きがなくなることで、武力行使の問題が「程度の問題」に

  2. @miisuke380さん(ツイッターのご意見より) より:

    ★集団的自衛権-二重の憲法違反
    伊藤真弁護士:
    現在の衆参両院とも裁判所は「選挙は違憲状態」と。その議員が指名した首相の内閣が憲法解釈変更で集団的自衛権閣議決定。憲法98条一項に違憲での決定は全て無効と。

  3. @miisuke380さん(ツイッターのご意見より) より:

    ★徴兵制「閣議決定」現実味
    伊藤真弁護士:
    イラクに自衛隊派遣の時、防衛大卒業生は大量に民間に。現在の若い自衛隊員は災害復旧などで国民の為と入隊多いが退職者増える懸念。人口も減少…今回の解釈改憲認めたら…

  4. @wakuwakuchizuruさん(ツイッターのご意見より) より:

    とっても分かりやすい!「憲法の伝導師」伊藤塾・塾長のお話。

  5. @kase_jinさん(ツイッターのご意見より) より:

    とても説明が分かりやすく、日本国憲法をこれまでより深く理解できました。より多くの人に視聴してもらいたいです。

  6. @yoshtanakaさん(ツイッターのご意見より) より:

    安倍晋三は国民が目覚める前に次の選挙までに秘密保護法も決め、国民主権の破壊も行う。

  7. 佐藤袿子 より:

    憲法9条は、第一項と第二項で①戦争しない②戦力不保持③交戦権否認の三つを守ってこなければならなかったのですが、日本は、自衛権はあるというあいまいな言葉のまま,自衛のための戦力を認めてきてしまいました。つまり②は守ってこなかった。そのことが(吉田茂首相のときにすでに解釈改憲)、現在の安倍首相の『積極的平和主義』に行きついたことになります。自衛のためであっても武力を使えば戦争になります。戦力不保持は、平和憲法を守り抜くための大事なキーポイントだったのですね。日本経済が、アメリカのような軍事産業で占められる国にならないよう、憲法9条の本当の内容を自分たちの血肉にする必要を感じています。
    集団的自衛権行使容認の閣議決定は、憲法9条、98条、99条に違反しています。私たちは集団的自衛権の行使に反対の意思表示をしていきます。

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