ミツバチの大量死と日本人の未来 ネオニコチノイド系農薬に科学者たちが警鐘~IUCN/TFSF による「浸透性農薬世界総合評価書(WIA)」研究成果発表会 2014.6.26

記事公開日:2014.6.27取材地: テキスト動画
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 国際自然保護連合(IUCN)への助言団体として活動する浸透性農薬タスクフォース(TFSP:Task Force on Systemic Pesticides)は6月26日、ネオニコチノイド系殺虫剤などの浸透性農薬に関する研究を『世界総合評価書』としてまとめたことを報告する研究成果発表会を開催した。

 この発表会の実行委員会を代表して菅原文太氏は、「原子力ムラと並び、農薬ムラと呼ばれる世界的に巨大なグループがある。一般市民からは見えにくいが、人々の暮らしに密接に関わっている今日的で重い課題だ」と開催目的を説明した。

 ネオニコチノイド系農薬は、少量の散布で害虫駆除が可能である上に、霊長類に害を及ぼさないとされてきた結果、世界中で使用が広まり、2011年時点での売上げは26億ドル(2600億円)。現在、日本でも、水田での散布を中心に、ゴルフ場の芝の消毒、シロアリ駆除の他、ゴキブリ対策やペットのノミやダニ駆除にも利用されている。

 同タスクフォースによれば、約20年前からミツバチを含めた昆虫の「劇的減少」が顕著に認められるようになった。市場に出まわるようになっていたネオニコチノイドとの関連性が疑われていたが、農薬業界からの資金提供を受けて行われる研究では、両者の因果関係は否定されてきた。一方、業界から距離を取り、独立した研究活動を行う科学者らは、ネオニコチノイドの生態系・環境への影響は深刻であるとしてきた。

 およそ800の査読済み学術論文を精査し、5年の準備期間を経て発表された「世界総合評価書」では、土壌、水、空気に拡散するネオニコチノイドの影響は、ミミズなどの陸生無脊椎生物、蜂や蝶などの受粉昆虫、水生の無脊椎生物、鳥類、魚類、両生類、微生物など、さまざまな生物に及ぶものだと結論づけている。

■ハイライト

  1. 開会あいさつ 菅原文太氏(農業生産法人代表)
  2. 世界総合評価書(WIA)の説明(逐語通訳あり)
    マルテン・ベイレフェルト・ヴァン・レクスモンド博士(TFSP共同議長)、ロレンゾ・フルラン博士(TFSP代替農業WG座長)、エリザベス・ルマウィグ-ハイツマン氏(フィリピンTFSPメンバー)、平久美子氏(東京女子医科大学東医療センター、TFSP公衆衛生WG座長)、山田敏郎氏(金沢大学名誉教授、TFSPメンバー)
  3. 質疑応答
  4. 閉会あいさつ 安田喜憲氏(東北大学大学院特任教授)
  • 日時 2014年6月26日(木)
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

日本は「ネオニコチノイド先進国」

 金沢大学名誉教授で浸透性農薬タスクフォース・メンバーの山田敏郎氏は、「ネオニコチノイドは無味無臭で、残効性が長く、さらに殺虫能力が高いのが特徴」とし、ネオニコチノイド系の農薬を散布すると、それが水に溶けることで広く拡散し、しかも強い残効性のため、無害化に時間を要すると説明した。

 山田氏によれば、ミツバチは蜜と同じくらい水を飲み、水に溶け出した浸透性農薬の影響を受ける。水の摂取を通じて、ミツバチの体内にはネオニコチノイドが蓄積され、長期間持続する殺虫能力のため、低濃度であってもミツバチの群は弱体化していくのだという。「蜜や花粉の影響より、水の影響のほうが深刻なのではないか」。

 また山田氏は、「ネオニコチノイドは僅かな量になっても、代謝されないという実験データが出ている」と話し、「慢性毒性がほとんど研究されていないが、これから問題となってくる」と危惧を表明。「ネオニコチノイドの脅威が人類にも脅威となる前に、DDTと同じように、禁止する勇気が必要」と訴えた。

 浸透性農薬タスクフォース公衆衛生ワーキンググループ座長の平久美子氏(東京女子医科大学東医療センター)からは、「ネオニコチノイド先進国」である日本では、欧州および米国に比較して多種類・大量のネオニコチノイド系殺虫剤の使用が許容されている現状が報告された。

 平氏の報告によれば、リンゴの場合、日本では7種類の使用が認められているのに対し、米国では6種類、欧州では5種類である。残留基準値では、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、トマト、茶葉など、多くの品目で欧州の20倍から500倍の値となっている。

 さらに、食品や空気を通じて「環境ネオニコチノイド中毒」を発症する人が2000年代から出ている、と平氏は指摘。ネオニコチノイド残留食品を摂取した場合の症状には、頭痛、全身倦怠、手のふるえ、記憶障害に加え、不整脈などの心電図異常、腹痛、胸痛、動悸、咳、発熱、筋痛などがある。ネオニコチノイド残留食品の一日500グラム、10日以上連続の摂取は、身体への蓄積の原因となり、中毒発症につながるとの推測が成り立つという。

脱浸透性農薬:欧州とフィリピンでの取り組み

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「ミツバチの大量死と日本人の未来 ネオニコチノイド系農薬に科学者たちが警鐘~IUCN/TFSF による「浸透性農薬世界総合評価書(WIA)」研究成果発表会」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    日本は「ネオニコチノイド先進国」・・・

  2. 吉村明清 より:

    初めてコメントさせていただきます。私は平久美子先生の患者の一人です。先生の誠実な診療に尊敬と感謝を申し上げます。ブログにて平先生の社会活動を知ることとなりました。
    私は農業に40年ほど携わってきたものの一人ですが、農薬にも医薬品同様善悪があります。
    ニコチノイド系の農薬は最近の商品ですが、ケミカル農薬がない時代はタバコを水に溶かして利用していました。
    開発メーカーは発ガン性や薬害が少ないものとして商品化したものと推察されます。群馬での中毒患者が多発した
    ことは存じており残念な出来事です。お茶や果実は農薬の効き目が弱い作物です。ニコチノイドの薬害はハーバードの研究でも認知されておりますが国内での認知度はまだまだ低いようです。生産者が正しく使用し安全な食生活ができるように注意喚起と啓蒙していただければと感じています。

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