「六ヶ所石油備蓄基地のタンク火災で、核燃サイクル施設にも危険が及ぶ」 〜小川進氏講演会 2014.6.6

記事公開日:2014.6.6取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「六ヶ所村にある石油備蓄基地と再処理工場を、別々の施設だと思ってはいけない。石油備蓄基地が火事になった場合の延焼、危険物の相互作用の可能性を考えることだ」──。

 2014年6月6日、青森市青森駅前のアウガにおいて、講演会「六ヶ所石油備蓄基地の危険性と核燃サイクル基地の災害?」が行われた。六ヶ所再処理工場に隣接する、むつ小川原国家石油備蓄基地が火災になった場合、再処理工場にどういう危険が及ぶのか、また、再処理工場内にはどのような危険物があるのか、小川進氏(長崎大学教授)が解説した。

■全編動画

  • 講演 小川進氏(長崎大学大学院工学研究科教授)「むつ小川原石油備蓄基地の危険性」

青森県が選んだ公共事業が石油備蓄基地

 冒頭で、小川氏は学生時代の思い出を語った。「大学の時、水俣病の写真を見てショックを受けた。それまで学んでいた学問が、現状に対していかに無力かを知り、原子力を含めて公害問題に目覚めた」。

 「公害問題の研究者に不足していたのは土木工学や気象学だ。環境問題をやるには、むしろ土木の領域に行ったほうが早いと思った。日本の基盤は土木で、そこを突かない限り、ものごとの本質は理解できない」。

 このように話す小川氏は、「ダム、原発、河川工事などの公共事業は土木の会計で、どれも一律2000億円の予算だ。諫早湾干拓、玄海原発、八ッ場ダム、長良川河口堰、みな同じ金額。ちなみに、河口堰などは100億円でできるのだが、値段はあってなきがごときもの。とにかく、各自治体は『2000億円の公共事業カタログ』から、やりたい事業を選ぶ。そして、青森県が選んだのが、むつ小川原国家石油備蓄基地だった」と述べて、日本の公共事業の実態を明かした。

石油タンクは51基。消火設備は1基分しかない

 小川氏は、まず、むつ小川原国家石油備蓄基地の危険性から語った。「石油備蓄基地と再処理工場を、独立した施設だと見ないほうがいい。再処理工場と石油備蓄基地は、ひとつのユニット。火事になった場合の延焼、危険物の相互作用の可能性がある」。

 「51基ある石油タンクは1基の高さが22メートル。7階建てビルに匹敵する。タンク自体は倉庫のようなものだが、消防法の観点から見れば、あの大きさいっぱいに石油が詰まっているタンクは、危険の本質だ。そこを突く視点が、核燃サイクル阻止1万人訴訟でも欠けているのではないか」と指摘した。

 小川氏は、消防法は、最初に引火点(火を近づけたら燃える最低温度)で危険物を分類し、次に発火点で決めると言い、「揮発油(ガソリン)の引火点はマイナス43度以下、発火点が390度。石油類のほとんどが、日常より200度上がると火がつくところが重要なポイントだ」と説明する。

 そして、備蓄基地が公表する消火設備を示して、「これはタンク1基が燃えた時の設備だ。ここにはタンクが51基もある。石油火災には泡消火剤を使うが、それは補充できず、なくなったら終わり。もし、火災になったら、全国から消防車を集める以外に方法はない」という。

 「石油備蓄基地の規模は、防油堤165メートル/1基、タンク直径81.5メートル、高さ24メートル、貯留量11万3000立方メートル。核燃サイクル施設までの距離は1.1キロメートル。欧米だったら、保安距離は最低でも3キロメートルは必要だ」と火災対策の甘さを指摘した。

3基のタンク火災で再処理工場に被害が及ぶ

 「250~260度になると燃え移るのが木造家屋延焼限界。100~110度の人体接近限界とは、消火できる限界だ。そして、1.1キロメートル離れて、原油タンク並みの危険物(使用済み核燃料)を持つ再処理工場の存在。そこには、引火点74度のドデカン(TBPの薄め液)、160度の有機溶媒TBP(ウランを抽出する溶剤)、240度の燃料被覆材ジルコニウムも大量に存在する」。

 小川氏は「タンク火災で250度に達する距離は80メートル。これは、同タンク間の距離にあたり、消防士は近寄れない。さらに、3基が火災になると人体接近限界が1014メートルになり、再処理工場まで届いてしまう。もし、タンク全基が火災を起こしたら、3キロメートル以上は人間が近寄ることができなくなる。再処理工場内も温度は100度を超え、はかり知れない事態を引き起こすだろう」と危惧する。

 さらに具体的な事例として、2003年の十勝沖地震(マグニチュード8.0、震度5強)で、長周期波のスロッシング(水面が大きく波うつ現象)により、苫小牧西港のタンク190基中91基が破損したタンク火災を挙げた。

 「結論として、六ヶ所石油備蓄基地では、3基のタンク火災で、隣接する核燃サイクル施設に被害が及び、核燃サイクル内の引火点の低い可燃性溶剤が発火する。今回の裁判(核燃サイクル阻止1万人訴訟)は、施設の耐震性と防火設備の面に注意が払われているが、震度5強でのスロッシングによる火災から全面火災になる可能性については留意していない。また、消火設備も旧態依然として高性能ではなく、大事故に発展する」と警鐘を鳴らした。

夏、核燃料サイクル施設で有事が起きれば青森市の危機

 続いて、小川氏は再処理工場の危険性について話した。「もし冬場に、石油備蓄基地が火災になると、西風で再処理工場が延焼しやすくなる。また、東風が吹く夏に再処理工場で有事が起こると、青森市が危ない状態になる」と述べ、再処理工場内にある消防法の規制対象になる危険物の種類と、その貯蔵量を明らかにした。

 そして、今までに原発で起こった火災事故50件を列挙した。「有機溶媒火災3件、ジルコニウム粉末火災2件、TBP爆発火災3件、金属ウラン・プルトニウム自然発火、化学薬品火災、イオン交換樹脂火災、電気設備ケーブル火災などがあった」。

 「しかし、同施設のパンフレットによると、消火施設は消防車1台、大容量ポンプ車3台、泡放水砲1基、二酸化炭素消火設備しかない。2時間以内の化学火災に対応できるのみ。延焼した場合などは制御不能だ」と話した。

 小川氏は、再処理工場に貯蔵される危険物の詳細について、「ウランを抽出するピューレックス(PUREX)法で使用する危険物質の量は、ジルコニウムは1日0.64トン、ウランは1日2.2トン」と述べ、その上で、有機溶媒爆発の規模や、青森放射能汚染予想図などを解説した。

 「福島第一原発事故では、福島市と会津は阿武隈山地などが放射能の拡散を防いだが、青森市には山がひとつしかない。風向きによっては、とても危険な状態になるだろう」。

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「「六ヶ所石油備蓄基地のタンク火災で、核燃サイクル施設にも危険が及ぶ」 〜小川進氏講演会」への1件のフィードバック

  1. @tujitatiggさん(ツイッターのご意見より) より:

    石油基地からの危険と同時に核処理施設自体にも出火・引火の危険があるという。
    【☆IWJ☆】2014/06/06 【青森】六ヶ所石油備蓄基地の危険性と核燃サイクル基地の災害?講師 小川進・長崎大教授 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/144912

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