「甲状腺がん、悪性ないし悪性疑い90人」 〜第15回 福島県「県民健康調査」検討委員会 2014.5.19

記事公開日:2014.5.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 検討委員会の星北斗座長は「この委員会のミッションは、いろいろな仮説から、放射線と甲状腺がんの因果関係を解明することではなく、県民の将来の健康への不安に、調査を通じて解決策を提供することだ」と話した。

 2014年5月19日、福島市内の杉妻会館にて、「第15回福島県『県民健康調査』検討委員会」が行われた。「100ミリシーベルト以下での、明らかな健康への影響は確認されていない」「チェルノブイリに比べ、福島のヨウ素は10分の1、セシウムは5分の1の拡散量」「平成23~25年度合計で、甲状腺がんの悪性ないし悪性疑い90人」など、さまざまな報告が続いた。

 また、これまで検討委員会がロシアの論文を引用して、福島の甲状腺検査でがんがみつかる割合が高いことを「スクリーニング効果」としてきたことについて、その根拠が疑われるような質疑応答の一幕があった。

記事目次

■ハイライト

  1. 基本調査について
  2. 詳細調査について
    1. 甲状腺検査
    2. 健康診査
    3. こころの健康度・生活習慣に関する調査
    4. 妊産婦に関する調査
  3. その他
  • 日時 2014年5月19日(月) 13:30~
  • 場所 杉妻会館(福島市)

100ミリシーベルト以下での明らかな健康への影響は確認されず

 はじめに、今年4月より、この調査の名称が「県民健康管理調査」から「県民健康調査」に変更したことが報告され、その後、事務局から基本調査の報告が行われた。

 「県は、甲状腺検査の対象者宛てに問診票を送ったが、返答率がよくないため、昨年末、簡易版問診票を約25万票、送付した。平成26年3月31日現在、簡易版により4万4191人から回答が寄せられ、回答率は2.1%増加した。全県ベースでは、対象者205万5585人のうち53万2046人から回答が寄せられ、回答率は25.9%となった」。

 また、実効線量推計結果の評価に関して、「これまでの疫学調査により、100ミリシーベルト以下での明らかな健康への影響は確認されていないことから、4ヵ月間の外部被曝線量推計値ではあるが、放射線による健康影響があるとは考えにくい」と述べた。

 清水修二座長代行は「以前から指摘しているが、『100ミリシーベルト以下での明らかな健康への影響はない』という部分には問題がある。4ヵ月間の外部被曝の最大値が、相双地区で25ミリシーベルトだ。外部被曝と内部被曝を合計しても、100ミリシーベルトを超える住民はいないだろう。そうなると、『100ミリシーベルト以下では影響ないのだから、健康調査はしなくてもいい』という結論になってしまう。この表現は不適切だ」とコメントした。星座長、津金昌一郎委員も、実効線量という言葉の使い方のあいまいさや『評価』という表現に疑問を呈した。 

チェルノブイリ比較、ヨウ素は10分の1、セシウムは5分の1

 次に、詳細調査についての報告に移った。清水一雄委員から、3月2日に行なった、第2回甲状腺検査評価部会の進捗状況、初期内部被曝推計、甲状腺がん罹患率について報告があった。

 「放射線医学総合研究所の栗原治リーダーより、『チェルノブイリ事故の放射性物質の拡散量を福島と比較すると、福島では、ヨウ素は10分の1、セシウムは5分の1の推計であった。チェルノブイリ事故での線量推計結果は、200~1000ミリシーベルト以上。福島では、30ミリシーベルト未満』との報告を受けた」。

 「津金委員から、甲状腺がんは韓国に非常に多いということで、男女別罹患率などの説明があった。質疑応答では、『二次検査後の手術が保険診療である。これをどうするか』が話題となった。また、福島県立医大からは『がんの診断については、細胞診の段階では確定ではなく悪性の疑いであり、手術をして病理診断を受けて、はじめて悪性の確定診断となる』という説明を受けた。また、『長きに渡って甲状腺検査をすることは、生存率を上げるためではなく、お子さんの将来への不安を解消するためだ』ということであった」。

甲状腺がん増加「悪性ないし悪性の疑い90人」

 その後、甲状腺検査について、県立医大の担当者より報告があった。

 「2014年3月末現在、36万8651人のうち29万9511人が受診し、80.2%の受診率。結果判定者は28万7056人(97.1%)、A1判定14万8182人(51.6%)、A2判定13万6804人(47.7%)、B判定 2069人、C判定は1人。二次検査では2070名、91.1%が終了した」。

 「穿刺吸引細胞診等の結果は、平成25年度は21人(手術2人:乳頭癌2人)、男性6人、女性15人。平均年齢16.0±3.1歳(11~20 歳)、震災当時の年齢は13.5±3.0 歳(8~18歳)。平成23~25年度の合計では、悪性ないし悪性疑い90人(手術51人:良性結節1人、乳頭癌49人、低分化癌疑い1人)、男性32人、女性58人、平均年齢16.9±2.7歳(震災当時14.7±2.7歳)である」。

 また、実効被曝線量の多寡による発症差はない、とし、現在、甲状腺がんの悪性ないし悪性の疑いは、全体で0.03%と説明した。

 環境省のオブザーバーが「甲状腺結節性疾患追跡調査事業結果(速報)として、環境省事業で、24年度に青森県弘前市、山梨県甲府市、長崎県長崎市の3地域の4365人に実施した超音波検査での、BもしくはC判定44名の追跡検査の結果、甲状腺がん1名と報告があった」と話した。

 清水座長代行は「チェルノブイリとの対比で、『今の発症者は、福島事故と関連性はない』と結論づけようとしているのではないか。チェルノブイリ事故のデータは、あくまで参考にとどめておくべきだ」とした。

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