9条神話に浸るリベラル派は安倍政権に勝てない! ~君島東彦氏、護憲「理論再構築」を促す 2014.3.15

記事公開日:2014.3.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年3月15日、京都市上京区の同志社大学鳥丸キャンパスで、京都96条の会主催「第2回憲法サロン 護憲論はガラパゴス化していないか」が行われ、立命館大学教授の君島東彦(きみじま・あきひこ)氏が登壇した。

 憲法学と平和学が専門の君島氏は、「戦後の日本では、常に憲法改正の議論が行われていたが、今みたいに盛り上がった時期は、過去には何度もない」とし、「現在、改憲を巡っては、いろいろな意見が出されているが、核心は9条2項(戦力の不保持)の改正だ。ちなみに、9条の1項(戦争の放棄)は常識であり、変えることはない」と語った。

 君島氏は、2012年に自民党が出した改憲草案は「真面目な文章ではない」と指摘する。つまり、自民党には、あのてんこ盛りの改正メニューから、「これもやらない、あれもやらない」といったノリで、いわば、値引き(=護憲派に譲歩する「優しい自民党」の世間へのアピール)を行うことで、本丸の「9条2項改正」を実施してしまおうという腹づもりがある、との見立てである。

 君島氏は「日本人の多くは『9条』を知っているようで、実は知らない」とし、6つの側面から「9条」について論じた。

■ハイライト

  • 岡野八代氏(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授、京都96条の会代表)「96条改悪の根幹 戦争のできる国へ」
  • 君島東彦氏(立命館大学国際関係学部教授)「六面体としての憲法9条──脱神話化と再構築──」
  • 君島ゼミ平和憲法プロジェクト2013「大学生の憲法9条意識調査」(録画には含まれません)

 「9条は、6つの側面からとらえることで、初めて、その本質がわかるもの」──。君島氏はこう切り出し、その6つの側面は、ワシントン、大日本帝国、日本の民衆、沖縄、東アジア、世界の民衆であるとした。そして、「私は、9条を変えるべきではないという立場だが、護憲派の9条観には弱点がある」と強調。「彼らは『9条神話』にすがっていると言っていい。その神話から脱した上で、9条を守る理論を再構築することが急務だ。それを怠ったら、保守派に破れてしまうだろう」と力を込め、「ワシントン(米国)」という側面からスピーチを始めた。

「戦後憲法は連合国による押し付けではない」とは言い切れない

 「今の憲法は連合国による押しつけだ、という説は、改憲をしたくてしょうがない保守派のレトリックだ。だが、一方の『押しつけでない』という議論も正確ではない」とした君島氏は、1945年当時の、世界平和実現に向けた最大の課題は、連合国による枢軸国(日本、ドイツ、イタリア)の「非軍事化」にあったと指摘。「連合国の立場に立てば、9条には、武装解除を通じて日本を弱体化させる狙いが込められていた。パワーポリティクス(国際政治力学)の存在を無視して、9条を説明することはできない」と力を込めた。

 しかしながら、米国は1950年前後に、今度は日本に軍事化と9条改正を要求するようになった。これについて、君島氏は「背景には米ソの冷戦があるが、日米の軍事一体化は、むしろ、1989年の冷戦終結のあとに強まった印象がある」とし、今や日米共同軍事演習は、かなり深化していることに言及。「毎年開かれている、『2プラス2』と呼ばれる日米安全保障協議委員会は、その象徴。米国からは国務長官と国防長官が、日本からは外務大臣と防衛大臣が、それぞれ出席する」とした。

 君島氏は、京都府最北端の丹後半島に「Xバンドレーダー(米軍の最新軍事装置)」を配備することが、昨年2月の米オバマ大統領と安倍首相の会談で約束されていることを紹介。集団的自衛権の行使容認については、「米国だけが求めている、という見方には違和感がある。原子力ムラならぬ『日米安保ムラ』とも言うべき集団が存在する」と訴えた。

安倍首相「戦後レジームからの脱却」の意味

 続いて、「大日本帝国時代のような価値観を持つ日本人は、今も存在する」と指摘した君島氏は、「安倍政権の基盤には、その価値観がある」とし、「大日本帝国的価値観を持つ人たちにとって、9条は国体を守るための『避雷針』だ」と強調した。「結果は、日本軍に雷が落ちて、天皇制が救われたのだ」。

 保守政治家は1950年代に9条の改正に挑んだが、市民の反対で失敗に終わっている。それ以来、彼らは、現行憲法の範囲内で、実質的な軍備強化を追求する「解釈改憲」を基本路線に据えている。君島氏は言う。「政府解釈の中身に関しては、『自民党が求めたから』という見方は不十分で、国会での討議の結果とするのが正しい」。

 憲法を擁護する野党などの追及があったからこその中身、というわけだが、近年の日本には、かつての日本社会党のような強い野党と、平和運動を担ってきた労働組合という存在がない。君島氏は「1990年代以降は、保守派の頑張りが、政府の憲法解釈を今のレベルまで持ってきた」とした。

 君島氏は「安倍政権の誕生は、保守派の頑張りの大きな成果である」とも述べ、「安倍首相は、敗戦の屈辱を象徴するものを、すべて消したいと考えているのだろう」との認識を示した。「安倍政権がやろうとしていることには、合理主義に根差した『国益追求』とは趣が異なる面があるように思える」。

護憲と平和を「=」で結ぶのは短絡的

 君島氏は「9条が、日本の軍国主義から民衆を解放した、という見方は正しいと思う」としつつも、日本人による「自力解放」ではなかった点を強調。「それは、日本の『民主主義』の弱さの表れと言えるかもしれない」と言葉を重ねた上で、「日本人が、軍国主義からの解放を自分のものにしたのは、その後の、米国による軍の再配備に抵抗した時だ」と解説した。

 君島氏は、市民が国家権力に縛りをかける、日本国憲法の「立憲主義」を評価しながらも、立憲主義をベースにした護憲の議論では、「平和と護憲が混同されがち」と懸念を表明する。「護憲派は、『軍事力に依存したくない』と主張するのなら、軍事力に依存しない安全保障体制を、どうやって築いていくかまで議論しなれば、『日本の平和』を考えることにはならない」。

 その後、「沖縄」という側面からの9条に話題が移ると、君島氏はまず、「マッカーサーにとって、9条は沖縄米軍基地とセットであった」と言及。沖縄に米軍基地があるからこそ、本土は9条の妙味を享受できる、との趣旨である。

沖縄基地問題では「縮小型撤去」の視点が大切

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“9条神話に浸るリベラル派は安倍政権に勝てない! ~君島東彦氏、護憲「理論再構築」を促す” への 1 件のフィードバック

  1. 9条とトモダチ作戦 より:

    現在の憲法改正運動に拍車をかけたのは3.11のトモダチ作戦であると思います。米国から空母が来て武器行使はしなかったが自衛隊と上陸活動しています。海軍兵が放射能被爆もしている。たしかに、あれは戦争ではない軍の平和活動だというのもご尤もですが、日米安全保障条約が戦後初めて実行されたとみる見方もあります。軍産複合体が勢いづくのもトモダチ作戦以降かもしれません。米軍は原発の事故や再稼動による危険に備えているでしょう。3.11以降、原子力の問題は平和利用だけでなく軍事目的であったことが明らかになっています。現行の憲法を守っていく立場は3.11のトモダチ作戦以降の日米関係に果たして何が言えるでしょうか。

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